桃太郎の冒険

桃太郎が都へ向かうこと

第6話 遭難

 船はいよいよ島見えずげに島が見えなくなるほど遠くまで来たり来ました

 おきなおうなの声も届かずなる届かなくなると、犬吉と猿彦はやうやうようやく人心地ひとここち着くべかりきつくことができました

 桃太郎かぐやひめは犬吉と猿彦を可哀さうに思ひかわいそうにおもい労ひて言ひきねぎらって言いました


「犬吉さん猿彦さん、ご苦労様でした」


 さ言はれてそう言われて犬吉と猿彦は怯えて震へあがりきふるえあがりました


「ま、まさかもう用なしですか!?」

「働きます!役に立ちますから! どうか殺さんでください!!」


 桃太郎かぐやひめ惑ひて言ひけるあわてて言いました


「違います! 殺しません!」


「本当に? 本当に?」

「御慈悲を、御慈悲を」


「大丈夫です! 安心してください!」


 桃太郎かぐやひめは重ねて二人を宥むなだめると、二人はやうやうようやく安心し再び船を漕ぎそめきこぎはじめました


 いかがしけむどうしたことでしょう

 疾き風吹きて強い風が吹き世界暗がりてあたりが暗くなり船を吹きもて歩く船が漂流しはじめました

 いづれの方とも知らず方角もわからなくなり船を海中にまかり入りぬべく吹き回して船を海底へ沈みこませようとするように吹き回されなみは船に打ちかけつつ巻き入れ当たっては巻き込み雷は落ちかかるやうにひらめきかかるに雷も今にも落ちてきそうなほど閃光を放つので桃太郎かぐやひめ惑いて困惑して


「こんな酷い嵐が起こるなんて!

 いったいどうしなってしまうの!?」


 と、のたまふ言いました

 犬吉、答へて申す答えて言いました


「私らも船に乗って長ぇがこんな嵐は初めてです。

 船が水底みなそこへ沈まなければ、今度は雷が落ちるでしょう。

 天佑神助てんゆうしんじょがあれば南海へ吹かれて流されるかもしれません。

 どうやら私らはろくでもない死に方をしちまいそうだ」


 と、犬吉泣く泣きました

 桃太郎かぐやひめ、これを聞きてのたまはく聞いて言いました


「船の上ではあなた方こそが頼りなんですよ!?

 そんな頼りない事言わないで!!」


 と、青反吐をつきてのたまふ嘔吐しながら言いました

 犬吉、答へて申す答えて言いました


「神ならぬこの身に何が出来ましょう!

 風が吹き、波が荒れ、雷が鳴るのは竜神が怒っているのです」


 猿彦も共にのたまふ一緒になって言いました


「そうだ!

 竜神様が怒ってこんな風を吹かせてるんだ!

 にえを!

 竜神様ににえを捧げて怒りを鎮めてもらうしかねぇ!!」


 二人は船を漕ぐを止めこぐのをやめ桃太郎かぐやひめ見き見ました

 桃太郎かぐやひめあやしがりて訊きたり不審に思って訊きました


「な、何を考えているんですか!?」


 猿彦、答えて申す答えて言いました


「竜神様への贄は、昔から女子おなごと決まってまして」


「お嬢様、申し訳ないが生き残るためには仕方がねぇ。

 どうか大人しくしてください」


 と、犬吉のたまふ犬吉も言いました

 桃太郎かぐやひめ鉈を抜きてナタを抜いて構えてのたまふ身構えて言いました


「二人とも、落ち着いて。馬鹿なことは止めなさい」 


 露の間次の一瞬で、船は大いなる 巨大な力に打ち壊され、三人は海へ投げいだされき投げ込まれました

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る