第4話 お供

「ほれ、この者たちがそなたの旅の供をするのじゃ。」


 おきなぐされて来られし連れて行かれたのは、竹林を抜けし山の奥の洞穴の、その最奥さいおう深くの土牢つちろうなりきでした

 土牢の奥を見たりければ覗いてみたら、内に捕らわれたりし人が二人、翁の松明のあかり受けて見えりき見えました

 いづれもやつれ細りて痩せ細って骨と皮ばかりになりし姿は亡者のごとしようでした


 桃太郎かぐやひめいと憐れに思ひてとても可哀そうに思って言ふやう言いました


「お爺さん、この人たちは一体どうしてこのような?」


「くっくっく、身の程知らずにもこの島を襲った海賊よ。

 他は皆死んだが、こいつら二人だけ生き残ったのじゃ。」


「まだ生きてるのですか!?」


「おうとも!

 戦働いくさばたらきは大したことなかったが、これほどしぶとい奴は久しぶりじゃ。

 こやつらならば、そなたの供も務まろう。」


「お爺さん、まさかこの二人を鬼ヶ島へ!?」


 翁は水瓶みずがめよりみたる水をば、土牢の内の二人にかけりぶっかけました


「ほれ、起きろぉ犬吉いぬきち!!

 猿彦さるひこ!起きんかぁ!!」


 二人は気を失いたれど気を失ってましたが、水かけられおどろけり起きました

 のそのそと身を小さく丸め、額を地にこすりつけて命乞ひいのちごい始めきはじめました


「た、助けて・・・お助けください・・・」

「あああ、もうしません、もうしません」


おのれらごとき役立たず、生かしておいて何になる?」


「あああ、働きます、働きます。」

「お役にたちます、お役に立ちます」


「ホントかのぉ?

 役に立たなんだら、己らも己らの仲間も皆食うてしまうぞ!」


「ホントです、ホントです」

「どうか助けて下さい、何でもします」


「お爺さん、可哀そうよ。

 こんな二人を連れてなんて行けないわ。」


「ああん?

 そなたの供が務まらんのなら、この二人はもう用なしじゃ。」


「ひいいい、お助け!お助けを!!」

「何でもします!どこへでも行きます!!」


 必死に土牢の竹格子こうしすがり寄り、涙流して情けを乞ひける乞いました

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