第15話
「…た、た、滝原?!」
「す、鈴木?!」
店内には、鈴木の甲高い声と俺の素っ頓狂な声が響き渡る。それと同時に、周りの視線が一斉にこちらに向いた。
鈴木は、やってしまったと思ったのか、
「す、すみませんっ!」
と、周りのお客さんに謝る。
そんな姿を横目に俺と光は、目で会話をしていた。
『おい、こんなところに、なんで鈴木がいるんだよっ』
『俺も知らねぇよ!めちゃくちゃ俺もびっくりしてるんだから!』
『てか、確かにうちの高校ってバイト禁止じゃなかったけ?』
『ああ、そーだよ。つまり、鈴木がしてることはやべぇってことだ』
『うおおおお、まじかよっ!!!ま、まさか、俺たちクラスの陽キャの重大な秘密にぎっちゃたって感じか?!』
目を光らせながら目でそう俺に伝える光。
光は、そういう秘密とかいうことに関して大好きである。今回ゲットしたのが、クラスメイトの秘密、しかも陽キャというカーストトップに君臨する人の秘密となれば、歓喜の舞だろう。
そんな光に軽くうなづく。
それがわかるとニヤニヤしだす。何を考えているのだろうか。気持ち悪い。
ぼーっと気色の悪い光を見ていると、次第に先ほどまで感じていた周りの視線が消えていき、いきなり紙が目の前に、ドンっと置かれる。
「…また後でね」
彼女は、俺に、にこっと笑いかけそう言い残すと厨房へと向かっていった。
取り残された俺達。
「ふええええ、なんか俺たち凄いこと知っちゃったな!」
「そーだなっ、でも、まだ喜ぶのは早いぜ」
そういいながら目の前の紙を見る。その紙は、客の注文などをメモするオーダー表であり、裏には文字が乱雑に書かれていた。
「おう、そうだな」
光も神の存在に気付いたのか、息を吞む。
そして、俺は紙を取り、光と一緒に読んだ。
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それ食べ終わったら、店の裏にきて
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「ひええええ、なんだこれ?! 何されるんだ?!」
「さっきからうるせえよ、落ち着け光」
「わ、悪い取り乱した」
「まあ、いい、さっさとこのフワフワかサクサクなのかよくわかんねぇパンケーキ食べて行くぞ」
「おう、俺的にいうとこれはフワフワだな」
「そう?俺としてはサクサクに近い感じなんだけど」
ごちゃごちゃ言いながら、俺たちは爆速でパンケーキを食べていった。たまに、周りを見たがこんな速さで食べている人は誰一人おらず、少し恥ずかしかった。
―――――
「あー、腹痛い」
「同じく」
あれは、絶対あんな早さで食べるものではない。もっと味わって食べるものだ。
「でも、何言われるんだろうな」
途端に、光が急におびえた声になる。
「どうだろうな」
そして、緊迫した状況の中、鈴木さんが現れた。
服は、あの店の制服を着ており、金色の長い髪をゴムでくくっている。目の色が茶色なのは、カラコンだろうか。
しかし、可愛い…。もう顔が全体的に整っている。
だが、可愛さで忘れてはいけない。こいつは、加藤さんを脅したやつだ。噓告の内容を決めるときにもいた。
さらに、こいつは、バイトをしていたのだ。
人にバイトのことでゆすりながら自分は、バイトをしている。こんな綺麗事が許されるだろうか。
いや、許されない。
そして、このネタをもった事で、こいつを脅し加藤さんが気兼ねなくバイトができるようになるかもしれないのだ。
慎重にいこう。
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