第12話
「つ、疲れた·····」
「ご、ごめんなさい。お、お母さん調子に乗るといつもああなっちゃうんです」
加藤さんの家から自分の家に帰る道中。俺は加藤さんと一緒にいた。加藤さんのお母さんの差し金である。
俺はあの後、加藤さんのお母さんに加藤さんの小学校時代の話を延々と聞かされた。恐らく二時間ぐらいたったと思う。
なぜ卒業アルバムを見たいなどと言ってしまったのだろうか。あの時の俺をぶっ飛ばしたい。
でも、まあ、加藤さんのことをよく知れたという点に関しては、良かった。
加藤さんのお母さんの話によると加藤さんは小学校時代はとてもわがままで騒がしく明るい子だったらしい。
なぜそんな子が今のように静かになってしまったのか。
それは、加藤さんのお父さんにあるという。
加藤さんのお父さん。それは最悪であった。
ある日、加藤さんのお父さんはいきなり加藤さんのお母さんに離婚を申し出てきた。それに酷く落ち込んだ加藤さんのお母さんだったが「将来の夢のため」そう言われてしょうがなく離婚。
しかし、一年後たまたま加藤さんのお父さんが知らない女の人と自分の家?らしき場所に入っていくのを加藤さんが見てしまったらしく、その時以来加藤さんはおとなしくなってしまった。
これが加藤さんのお母さんがこっそりと話してくれたざっとの内容だ。
加藤さんのお母さんは自分に関わりもする話だったが「娘の将来のためよ」と言いながら俺に語ってくれた。別に、加藤さんとは何もないため加藤さんのお母さんには申し訳ない。
俺も一応お父さんに裏切られた身としては加藤さんと同じだ。加藤さんの気持ちに共感できる部分も多く、救ってあげたい気持ちもある。
でも、今俺には「飯塚さんを救出大作戦」というものがある。
それに関して最初にやる事。それは加藤さんが「なぜあの嘘告の動画をクラスグルに流したのか」を知ることがである。当然忘れてはならない。
そこで、俺は途中の公園によることにした。
「加藤さん、ここで少し話をしたいんだけど」
「話ですか?」
加藤さんは俺の様子を見て察したのだろう。
「いいですよ」
俺たちは錆びれ年季の入っている滑り台や鉄棒などの端っこにあるベンチに座った。
そこから一分間の沈黙。近くの外灯に集まる小さな虫も次第に増えてくる。
この沈黙を最初に破ったのは加藤さんだった。
「あ、あの昼休みと同じことを聞こうとしてるんですよね?」
「ああ」
加藤さんは俺の返答を聞くと考えるように黙り込む。
加藤さんの家での行動などを見ているととてもあんな事するようには見えない。しかし、やっていることは事実だ。
そこから考えられるのは加藤さんの意思でやったということではないということ。
加藤さんにもやむを得ない事情があったのかもしれない。
「今教えてくれるとありがたいが今じゃなくてもいい。明後日でも明々後日でもいいから教えてくれ」
「え、い、いや滝原くんにはい、言います」
俺は自分の考えを述べると加藤さんは顔を上げ俺に向かいながら言う。
俺にだけ?
なぜか分からないけど、結果オーライだ。日々の行いがよかったおかげだな。
ん?ゲームしてるだけだろって?うるせぇぇ!
「まじか、ありがとう。教えてくれるとは思わなかったよ」
「だ、だって滝原くんだもん…」
加藤さんはなにかボソッとつぶやいたように思えたが俺には聞こえなかった。
「た、滝原くんなら信用できるので」
「ほんとに?めちゃくちゃ嬉しいわ」
「い、いえ事実なので。それであのメールのことなんですけど」
「ああ」
俺は、加藤さんの方を向き、前のめりになる。
俺が体勢を変えるのを確認すると加藤さんは何とも言えない表情で話し始めた。
「私、す、鈴木さんたちに脅されたんです」
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