第7話

俺は飯塚さんがクラスのみんなから無視され始めた日以来、飯塚さんとは全く関わっていない。


あの日から飯塚さんはクラスではずっと1人で過ごしている。


机に落書きをされたり下駄箱になんかされたりはされていないがクラスメイトからはずっと無視されている。


けれども、いじめといういじめ(机に落書きされたりなど)をされるより、ただ単に無視し続けられる方が辛いかもしれない。


だが、これは完全に飯塚さんの自業自得だ。俺に嘘告なんかするからこうなった。


そう、自業自得··········なんだが俺は人を不幸にしたい訳ではない。


俺にとってあれは世界で1番嫌なものだった。飯塚さんは許されてはいけない。


しかし、これで1人の人生が壊れるのはなにか違うと思う。


最初は「いい気味だ」そう思った。


しかし、だんだんと飯塚さんの活力が無くなっていく。


そんな姿を見て俺は重なってしまった。



あの姿と。




────────



あれから4日後の日曜日。


俺は、1人電車に揺られ人里離れた田んぼや畑がたくさんある場所へと向かっていた。


手には、白や黄色それにピンクなど様々な色のカーネーション。


電車を降り目的地へと歩く。目的地には歩きでだいたい1時間ぐらいかかる。


駅の看板は錆びて、どこか寂しいような雰囲気を醸し出している。


ここは最近過疎化が進んでおり、この駅ももうすぐ無くなってしまうかもしれないと駅の前の掲示板に書いてあった。


ここでの思い出はとても楽しいものしかなかったので、この場所から人がいなくなっていくのは少し物寂しい。


歩いていくと、昔定食屋があった場所が空き地になっていたり、なかったはずのコンビニがポツンとあったり。


10年程しか経っていないのにここまで変わるかと驚いた。


そして日光が全身に降り注ぐ中、目的地へと到着した。


「はぁはぁ·····やっと着いたぁ」


とても晴れていて暑く尚且つ1時間も歩いたので着いた頃には全身から汗がだらだらと流れていた。


顔の汗を手で拭いながら周囲を見渡す。


前回来た時よりも草が生い茂っている。


そして、たくさんの墓石。



そう、今日は3ヵ月に1回行く俺の母の墓参りだ。


墓地の中にある桶に水を入れひしゃくを持ち、母の墓に被っている砂を綺麗に洗い流す。


3ヵ月、墓の手入れをしていないので当然花も枯れている。枯れた花を取り出し手に持っている様々な色のカーネーションを花立に入れていく。


入れ終わった後、線香皿に火をつけた線香を置き手を合わせる。


そして手を合わせ終わると、


「母さん、俺どうすればいいんだ?人が精神的に参ってる。けどその人は、俺に酷いことしたんだ。俺はその人を助けなきゃいけないのか?なぁ·····教えてくれ·····母さん」


当然、返事などするわけがないが今は亡き母に語りかけていた。


俺は、どうすればいいか分からなかったんだと思う。


俺を傷つけた人を助けた方がいいのか、それとも見捨てるのか。


飯塚さんの今の状態。それはあの時の母に似ていた。


このままいくと飯塚さんは··········。



だが俺はそいつに傷つけられた。


「どうすればいいんだ…」


頭の中に様々な思いが駆け巡り俺は苦悩していた。

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