第5話

「で!じゃんけんに負けた夜空ー!嘘告ねー!」


教室の中に入ると佳奈が罰ゲームの話をし始めた。


しかし、何を言っているのだろう。私達がやったのはあ・み・だ・く・じ・だったはず。なぜじゃんけんなどと嘘をついているのか。


しかし私は何も指摘をせず会話は続けられた。


「じゃー夜空ちゃん、誰に嘘告する?」


海斗くんが言う。


彼は、いつもとても私に話しかけてくる。楽しそうに。けれども今は家庭科室の時と同じで後ろめたいことがあるような、焦っているような·····そんな声な気がする。


しかし、そんなことよりもさっきも思ったが私は嘘告なんかやってはいけないと思う。


「え、いやけど嘘告なんて相手が可哀想だよ」


「いやいや、罰ゲームだから。やるよ!」


私が反対すると美香が睨みながら言ってきた。私はそれに怯んだ。


私、美香になんかしたかな。


美香が睨んだ後すぐ表情が明るくなったのでますます分からない。


「うーん?誰にする?」


「やっぱここはおとなしいヤツらっしょ!反応も楽しめるし!」


私が考えている間に次々と話は進んでいく。


「じゃあ、滝原とかは?あいつずっとぼ〜っとしてるし、反応もあたふたしていいんじゃない?意外とイケメンだし」



『滝原』



私はこの言葉に少し戸惑う。


滝原くんに嘘告?これは関われるチャンスかも·····


けど嘘告なんて最低な事。しかも、それを滝原くんに?そんなのしたらダメ、したらダメだよ私·····


そう踏みとどまっていたが


「うん!そうしよう!」


気がつけば口走っていた。


その時の私は浮かれていたのだろう。これで滝原くんと近づける、そしてあわよくば恋人に·····と。


滝原くんの気持ちなど微塵も考えずに。


「じゃあ、それで決定な、明日嘘告しろよ?」


「うん!」




佳奈たちの様子も見ずに··········。


今は思う。そんな嘘告なんてせずに普通に関われば良かったのにと。



─────────



「疲れた!」


俺は、そう言いベッドに飛び込んだ。


なんてベッドはいいのだろう。いくら飛び込んでも俺を優しく包み込んでくれる。疲れが一気に吹き飛んでいく。


そして、俺はうつ伏せの状態から仰向けになり手と足を大の字にして、


「はぁ〜」


そっとため息をついた。俺は、今日の帰りの時からずっと思うことがあった。


それは、



これ、明日やばいんじゃね?



と。


そう。俺は飯塚さんを泣かしてしまった。それに関しては俺は悪いとは思わない。だって、あんな最低な行為をしたのだから。


しかし、他者からみればどうだろう?



『昨日、滝原って飯塚さんを泣かしたらしいよ〜』


『え、まじ?最低〜』


『それな、消えた方がいいよね』



こうなるに決まっている。


「あー!!俺の平和な学校生活がー!やっぱあそこはキレずに穏便に済ませとけばよかったのか?」


俺は、枕に顔を突っ込みながら叫ぶ。こういう時枕は便利だ。部屋に響かないし隣の人に文句も言われない。


そして、叫んで少しスッキリしたところで俺は明日どうなるか、そんなことを考えながらベッドから降り晩ご飯の支度を始めた。


今日も、寝不足になりそうだ。

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