杖を作って、と彼女は言った
白猫亭なぽり
序章
0.1 親愛なるあなたへ
バーニィ・ボンネビル様
木の葉もすっかり色づき、実りの秋を迎えつつありますが、いかがお過ごしでしょうか?
修行を終え、導師任命の儀が無事に済んだことは以前にもお伝えしましたが、この度、正式に故郷へ戻る運びとなりました。早々に赴任先が言い渡され、荷物をまとめて旅立っていく同期の方々の背中を見送る日々もこれでおしまい。私にもようやく辞令が下り、少しほっとしています。
漏れ聞こえてきた限りでは、審査委員会の中でもいろいろ議論があったようです。その内容までは知らされておりませんが、かねてより故郷で導師としてのお務めを果たしたいと希望していた私にしてみれば、赴任先が決まる過程がどうであったかなどささいな話です。そちらに帰れるという結果さえあれば、それで十分だと思っています。
いずれにしても、来週の今頃にはそちらに戻って、新しい仕事が始まります。だから、これが最後の手紙です。これからは直接会って、面と向かってお話ができるのですから。
子供の頃の約束を、あなたは覚えていますか?
私はもちろん、覚えています。
導師になりたいという私の夢を聞いたあなたは、それなら自分が杖を作ってやる、と申し出てくれましたね。あの夜のことは、今でも鮮明に思い出せます。
あなたの杖職人としてのご活躍は、こちらの導師の間でも噂になっております。帰ったら一度、おじさまも交えて、杖の相談をさせてください。
いつもよりかなり短いですが、今週の集配締切時間が迫っていますので、今回はこれくらいで。昨今の郵便配送状況は乱れがちなので、もしかしたら、私がそちらにつくほうが早いかもしれませんね?
来週、お会いできるのを楽しみにしています。
親愛なるあなたへ
キャロライン・ユノディエール
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