海底大決戦!
「竜也……。海底基地に吹く風は…換気に過ぎない機械的で乾いたもんだ。」
チャック・ノリスが咥える煙草の煙は、まばらに灯る室内灯に照らされ頼りなく流されていく。
「もう喋るなノリズ!血がでぢまうよぉ!」
藤原竜也とチャック・ノリス
二人が海底に建設された軍事基地に招待されたのには訳がある。
軍事基地。慣性で軍事アレルギーを植え付けられた日本人にとって耐えがたい苦痛。
神聖で不可侵な深い深い海底での建設に誰も賛成はしなかった。
大帝日本国は苦悩した。
軍事アレルギーを和らげる道を探った。
たどり着いた結論。
日米を代表する俳優を出演させプロパガンダ映画を作成する。
根本的に日本の軍事アレルギーは先の大戦の敗北にある。
日米平和と文化交流。
頭が空でも理解可能な聞こえが良いだけの理由。
映画の中で二人が必要とされるのは、海底基地が役目を果たす宇宙からの侵略を監視。
基地が宇宙人に乗っ取られた場面である。
「緊張するな……。僕の両肩には日本国の未来がのしかかっているんだ……。」
「リラックスだ竜也……。パフォーマンスを阻害するのはいつだって緊張だ。」
藤原竜也は身を硬くした。
隣に座っているチャックノリスは、何をしていなくても有無を言わさない圧がある。
「ありがとうノリス……。」
見た目と英雄の名に恥じない経歴を持つチャックノリスの優しさは、竜也の緊張を温かく溶かしていった。
「じゃあ本番はじまりまーす!」
音が響く海底基地の中。撮影の開始を知らせるスタッフの言葉は断末魔に変わった。
闇の向こうから鋭利な触手が無慈悲にもスタッフの胸を貫いた。
「俺は無敗の男だ。相手が宇宙人だろうが負けはしない」
映画の設定が現実になってもノリスは落ち着いていた。
撮影に用意された実弾入りのライフル。
予備を含めて何丁もあった。
「だげどよぉ!ノリスゥ!宇宙人に弱点なんてあるのがよぉ!(鼻ヒクヒク)」
「竜也……。俺は確かに見た。スタッフの断末魔を聞いて宇宙人の触手は確かに震えていた。何でだと思う?奴らは派手な音が苦手なようだ。だから竜也!お前の培ってきた叫びの演技で奴らを抑えろ!神に祈るな!海底には今や俺たちしかいない!」
「わがっだよノリズゥ!」
竜也は立ち上がった。
奇々怪々な銀色の肌を持ち触手を無尽蔵に広げる宇宙人の前に。
「どおじて俺がごんな目にあうんだょお!(鼻ヒクヒク)」
宇宙人は耐えがたい絶叫に聴覚を司る触手を引っ込めた。
「見えたぜ……。お前の弱点……」
チャック・ノリスは見抜いていた。
触手の元を。太く脈立つ核を撃ち抜いた。
チャック・ノリスは見落としていた。
宇宙人が触手の先を振り投げた事を。
「ノリズ!しっがりしろよぉ!非常電話がいぎでいだ!もうすぐ助けがぐるがらよぉ!」
「俺はもう駄目だ竜也…。海底に吹く風は………俺の魂を天国に運んでくれるさ……」
「ノリズゥ!」
竜也が目を覚ますと、病院のベッドに寝かされ何本もの点滴が刺され、見慣れない機械が規則正しく音を発していた。
「あっ?目を覚ましたか竜也」
「いぎでだのがょノリズゥ!(鼻ヒクヒク)」
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