風運ぶ秋空の下

第10話


 吹きすさぶ風が平原に生い茂る草々を悠揚と揺らしていた。

 時期からしてみれば、草々はこれより訪れる長い沈黙の季節を前に、最後となるかもしれない日の光を目一杯に浴びたいといった心境だろうか。


 尤も、草々にそんな感慨は無いだろうし、ここ中部地方の冬はそれ程厳しくもない。

 大陸北部育ちのカイルにとっては、懸念するような事柄ですらなかった。


「そういや、無理やりさせられた山岳演習で凍え死にかけたっけ」


 ぽつりと、誰ともなくカイルが呟きを漏らした。


 そしてふと自身の無意識の呟きに触発されたかのように、昔の他愛もない記憶が甦る。

 そのカイルの内にあった、忘れる事のできない――そして忘れたくはないそれらが、鮮明に胸のうちに舞い戻った。


 それと同時に、鋭く傷んだ。


 胸の内側から鋭い刃物で切り裂かれるような強い痛みを覚える。

 だが、そんな感覚にもう取り乱すことはしない。

 この痛みを覚えるのも、もう何度目になるか。そう冷めた心境で受け持ち、感傷を抱きつつ、この青年は見渡す限りに広がる草原のその一箇所に存在していた。


 今の彼には、無意識のその呟きに返事をくれる誰かの存在が居ないだけでなく、もはやその色褪せない思い出を共有する人間の存在すら居なかった。


 忘れる事の出来ぬあの光景――あの一夜の出来事。


 決してカイルは、それを乗り越えた訳ではない。

 未だに悪夢にさいなまれ、覚醒している意識の裏側でさえ、それらの映像が無分別に明滅する。


 一時期、カイルはそんな衝動に突き動かされ“復讐者”としての道を辿たどっていた。

 たゆまぬ修練により剣の腕を磨き、魔物という存在をほうむるためだけに奴等の知識を蓄えた。どんな強力な個体でも、その生態を調べ上げる事で有効な討伐手段が見えてくるからだ。


 けれどもそれは、長く続かなかった。


 劇的な何かがあったという訳でもないだろう。

 しかし、振り降ろす刃のその回数が増える度に、まるでおりのように違和感がカイルの心の中枢に溜まっていったのだ。

 それが限界に達した時――

 手負いの魔物を仕留める為のその一刀が振り下ろせなくなってしまった。


 結局、カイルという人間は、無慈悲な“殺戮者”にはなり切れなかった。

 無論、命を奪うというその行為全てを否定は出来まい。誰だって生きる為に他の生物を殺し、その命を頂いている。食すという必要不可欠な生理がある以上は、そんな事は道理であった。


 だがそれでも、殺さなくても済む命を――奪わなくても良い命を敢えて仕留めるという行為に、どうしても腕が動かなくなってしまったのだ。


 憎しみも嘆きも、決して消えてしまった訳ではない。

 けれど、只生きようとしている相手――眼前のその生命を自らの裁量で殺すという事の嫌悪が勝ってしまった。


 甘いと言われればそうだろう。

 それまで数多の命を復讐と称して奪ってきた以上、欺瞞ぎまんとそう言われても否定できない。

 だがそれでも、カイルという人間はそれに耐え切れなかったのだ。


 それ故、彼は剣を収めた。


 普通の人間ならばそこまでの話だったのだろう。だが、カイルの非凡さはそこからさらなる跳躍を見せた。

 奪われ、そして奪ってきた自身だからこそ、見える境地があるのではないか――そんな事を胸に秘めるようになったのだ。


 絵空事、綺麗事、果ては、怪奇、変人、なんとそしられても構わない。

 憎み合う事、滅ぼし合う事だけが、きっと全てではない。

 剣を収めたあの日から、そういう思いがじっくりとにじみだすようにして、彼の意識を揺り動かしてきた。


 結局の所、カイルという人間は真性なのであった。

 真性のお人好しなのだ。


 元来の、お調子者で能天気で人好きな――そういう朗らかな性質たちは、あの凄惨な事件の直後こそ鳴りを潜めていた。

 だがその塗りたくった怨嗟えんさという泥の層は、次第と乾いて剥がれていき、本質の部分が顕となった。


 そういう話なのかもしれない。



 ただ勿論、吹っ切れたという事でもない。

 これまでもずっと、思い出にある大切な仲間達の笑顔が凄絶な死に顔に取って変わるような瞬間が幾つだってある。

 今さっきも、そんな光景が瞬きの合間に目蓋の裏をかすめていった。


 そういう時はどうしようもなく、そしてまた、心臓の奥底からくらく餓えたような血生臭い感情がよみがえりそうになる。



 だが――


 カイルはそんな沈んだ様な表情から一転、無理矢理にでも顔色を変え、面を上げた。


 嘘でもいい、それで覆い隠してしまうだけでもいい。

 埒もなく憎しみを刃に乗せて振るう日々よりも、強がって自分自身さえも騙して見せて――それでもそうやって笑顔を取り戻す方を選んだ。

 自分のこれからの為に。


 そう、芝居がかったその癖はあの日から付与されたもの。


 だから彼は、この陽気な空に顔色を合わせるよう、その明るい日差しで自らを洗い流すように顔を上げる。



 そのような憂愁に感じ入ってしまう自分自身も結局、一人身であるという事に由縁している。そうカイルはまるで大したことでもないように明るく思う事にする。

 元々、この男にはそういった前向きさが備わっていた。


 明確でなくとも歩み続けよう――そう誓った筈だから。



 これまで当てもなくさすらってきたカイルの旅路。


 だが、先刻の街で出会ったあの女との奇妙な体験がどうしても頭から離れずにいた。

 それ故、まるで誘われるがままといった体で、ただ真西の方向へと足を進めていた。


 よくよく考えればなんとも締まりのない理由だ。

 しかしそれでも、カイルはそんな理由で満足していた。というより、単純にあの美人とまたどこかで会えるという理由だけでもよかったりする。

 まあ、元々が明確な目的地もない旅なのだから、寄り道回り道は大いに結構というもの。


 世界をその足で横断するというあまりにも合理的で無さ過ぎる方法で旅に出たカイルは、しかし、その両の足だけで各地をしっかりと渡り歩いてきていた。

 旅に出始めた当初は、自身のあまりに計画性のない考えに後悔したことも多々あったが、3年も過ぎた今となっては寧ろそれが自然で仕方なくなっている。

 馬をこしらえるというような考えも、その血豆にまみれた足の裏をしげしげと眺めながら思い至った。だが結局、何を急ぐ旅でもないと開き直り、これまでずっとその足だけで旅を続けてきた。


 言うまでもなくそんな地味で非効率な方法では、渡り歩いて来たと言っても大した事はない。

 出発したルバルディア南部の都市レバーイトンから、国境を越えてきた国で言えば7つ程、立ち寄った街で換算しても50を下らないという、まさに亀の足並みだ。

 それでも、徒歩という点を考えればよくもやって来れたと褒めることができよう。



 まだ正午にも達していない内の緩い日差し、その中でカイルはゆっくりと平原の景色を楽しむかのように歩を進めていく。


 風は冷たいが空は晴れ渡っている。

 そんな和やかな旅空だった。


 ここはまだ、ハーレィ領内の名前もない広大な平野だ。

 ハーレィにしてもイザンカにしても――いや、まだ世界のほとんどの国は、その国という体面を保てている訳ではなかった。

 ルバルディアを筆頭に、フューレン、ロマリシア、フレイドラのような大国、もしくはこのまま西へと歩を進めればたどり着くであろうクツァルトのような発展国以外は、自分達が治めると取り決めた領地に対しての人口数が絶対的に不足している為、このような広い範囲に及ぶ野原や森が手も付けられずに放置されている。


 その理由というのは、やはり魔物という存在による。


 今の時代――無論、昔からにしてもそうだが――人間と魔物という両者の存在を省いては、お互いの栄枯衰勢の歴史は語ることができない。

 10年近く前の大戦終結と共に始まった、この大地に蔓延はびこる魔物という存在を根本から抹消しようとするかに思える連合協和条約。


 そして魔術――新たに魔科学と定義され始めたそれらの技術の発展とその成果により、人間が住む領域外の魔物達ですら駆逐され、その数を減少させていく一方にある。


 だが魔物達を払い滅ぼし、取り返したはずの土地に移り住んで生活圏を拡げて行くには、人間の数はあまりに不足していた。

 その理由は無論、魔物という共通の敵が居ながら狭い土地を巡って絶えず争いを繰り返していた愚かな人間達自体によるものだ。


 だがそれも過去の話。


 今は言うなれば開拓時代の後半。

 これから多数の人間が切り拓いた土地に根付いていき、子孫を繁栄させていく始まりの地点なのだ。


 ――と、まるでその事を示すかのよう、こんもりとした森に遮られ死角となって見えなかった民家の存在に気付いた。

 近くに集落もないのに、まばらに建つ家々を目にした。


 こんな何もない平原の最中に立てられた民家をその目に捉えた時、カイルは思わず立ち止まるほどに驚いていた。「こんな場所に……」――カイルの驚きは、その一言に集約できた。


 カイルの感覚では、本当にまだこの間といった心境だろう。

 この間まで、人が住む場所というのは決まっていた。人が安心して生活を営むことの出来る場所というのは、城壁や防壁に囲まれた、多くの人間が寄り集まり肩を狭くしている箱庭のような都。もしくは頑強な囲いこそ無いが、同じように多くの人間が寄り添って出来た密集する街や村。――それだけだった。


 広い大地の上でそれ等だけが自分達に与えられた領土であるかのように。そして魔物という名の横暴な隣人達がいつ襲ってきても撃退できるように。

 日々を細々と繰り返していただけと言ってよい程の暮らしだ。

 それが当たり前だった。

 安全を確保した生活圏の外で暮らすどころか、不用意にそこから出ることすら躊躇われた時代。


 しかし、今目の前のその家々からは人が営みを続けていることを表す、炊事の煙が立ち込めている。

 そして何よりカイルが目を疑ったのは、そのぽつぽつと建つ民家から離れた広間に群がって遊ぶ子供たちの姿だ。


 それはカイルだけの特別な感慨ではなかっただろう。


 むしろカイルを含む上の世代の人間達にとって、その光景は信じ難いと目を丸くするものだ。

 子供たちは何も恐れるものが無いように、奔放に走り回っている。


 その光景に、カイルは自身の幼少時代を思い返していた。

 もうそれなりに昔の話なので、細かくはっきりとは思い描けない場面がほとんどだったが、その切れ切れの記憶の中でも印象深い一連の出来事を思い返していた。

 子供というのは、いつの時代のどんな土地柄であっても、無茶や無理が通るものだと信じて疑わない。それはカイルとて例外ではなく、もしかしたら人一倍自身の蛮勇を誇ろうとする性格だったかもしれない。

 さておき、カイルは幼い頃、数人の馴染達と一緒に禁止されている外壁の向こうに出ることを試みたことがある。

 元来子供の感傷と言うのは、大人から押し付けられる無条件の規則や制限に反抗してできるのが常だ。それだけが理由ではなかったが、しかしカイル達は巡回の衛兵の目を欺いて外に出ることに成功した。

 結果から言えば、それら無謀な挑戦は外壁の上から監視していた他の衛兵に見つかり、すぐさま連れ戻される事になった。

 そしておっかない大人達による拳骨と怒号が待っていた。

 その際の大人達の尋常ではない剣幕――それらに晒されてようやく、自分達が如何に浅はかで愚かな行為をしたのかを悟った。


 だがカイルのそんな戒めの記憶もいまや無用の長物。彼らは、自分達の自由を阻む鬱屈とした外壁を睨んで過ごすことは無いらしい。

 心の思うまま、この広大な平原をどこまでもいけるのだろう。


 時代が変わったのだ。

 年寄りでもないだろうカイルは、そんな枯れた感慨を抱いた。 



 カイルはふと止めていた両足を動かし、その数軒の集まり――本当に点々とした集落とも呼べない箇所の方へと歩を向けた。


 先程まで楽しげな、きゃっきゃっという嬌声を上げて走り回っていた子供らは、今は何かを取り囲むべく、身を重ねて織り成すかのようにして草むらの一点を覗き込んでいる。

 そのすぐ傍まで足を運んだカイル。


 子供らはそれだけ近づいてもカイルの存在に気付きもせず、ただひたすら草むらの前に屈んでいる。

 微笑ましく映るその熱中を邪魔するのもどうかと思ったが、自身の好奇心も曳かれてしまい思わず声を掛ける。


「やあ、何かおもしろいものでもあるの?」


 声を掛けられてようやくその存在に気づいたらしい。織り重なる自分達の、そのさらに上から覗き込んできたカイルの顔を見つめ返す子供たち。


「おにーちゃんだれ? ドコからきたの?」


 カイルの存在に気がついた事で、熱中していた注意が散漫になる子供たち。

 新しく現れたその興味の対象と、今まで注視していたそれとのどちらを見遣るかを迷っている、そんな分かりやすい躊躇ちゅうちょを示す。

 頭がきょろきょろと動いているのだ。


「なに、旅の途中でさ。そいで一体なにを見てるんだい?」


 そんな子供らに、カイルがその青い瞳を穏やかに映えさせて尋ねる。

 まるで警戒心を感じさせないカイルの人柄だったが、そんなものとは関係なく子供たちは実に素直で純朴そうだ。

 興味の対象を同じにするその人物を迎え入れてくれた。


「あのね、そこにね、おっきいトカゲさんがいるの!」

「おっきいトカゲさん……?」


 子供らの内の一人の女の子が、そう言葉にして草むらの中を指差す。他の子も概ね同じようなことを言い、その茂みを指し示した。

 子供達の視線に合わせるよう中腰になって顔を近づけるカイルだが、それでもその位置からでは生い茂った草々に阻まれて中身までは覗けないでいる。


 カイルは「どれどれ」などと口にし、その草むらを掻き分けるようにして思い切り顔を突っ込んだ。


 『おっきいトカゲ』――

 その言葉になんの危機感も感じなかったカイルだが、その事がカイルの身に悲劇を生んだ。


「ぎゃぉぁぁぁーーーっ?!」


 突如響き渡った絶叫。

 それは誰あろうカイルのもの。


 茂みの中に顔から突っ込んだカイルは次の瞬間に、物凄い速度で仰け反るようにその頭を上げた。

 それは何かから身を守ろうとした本能的な動作だったのだろう。


 一体何から? 


 その答えは周りにしゃがんでいた子供達が目にしていた。――いや、目にしていたというか、今なお目にしている。


「イダイダイダイッ!! ――ちょっと、痛いってっ?!」


 草むらから顔を上げたカイルはまだしきりに何かを叫んでいる。ただ、その顔には草むらに入る前までは付いていなかったあるモノがぷらーんと垂れ下がっていた。

 その黄緑色した子犬ほどの大きさのモノ、それこそが子供達の言っていた「おっきいトカゲさん」の正体である。

 それはガッチリとカイルの鼻に噛み付いて離れず、カイルの絶叫の意味はそこからくる痛みに耐えかねてのものだ。


 カイルは仰け反り、よろけながら堪らずに尻餅をついた。

 鼻先――いや、鼻そのものに食い付くそれを両手で引っ掴んで引き剥がそうと試みるカイル。

 しかし、まるで離れようとしない。

 試みを変えて、今度はその両顎に指を滑り込ませ左右に開ける。それでようやく、自身の鼻から「おっきいトカゲさん」と呼ばれたモノを引き剥がす。


「いっでぇー……驚かしやがって、こんのっ――」


 引き剥がしたそれは確かに『おっきいトカゲ』に見えた。


 だがそれはトカゲなどではなく、言うなればトカゲの様に見える低級の魔物の類。ハウリザードと呼ばれる小型の眷属だった。

 黄緑色したデコボコの皮膚に、トカゲのような頭部――確かに大きなトカゲと称して間違いはないだろう。


 体長は大きくても20~30cmほど。猫や小型犬と同等くらいで、ブランスタ大陸のどこにでも生息してる大して珍しくもない存在だ。

 成体ならば鶏程度の家畜を襲うこともあるが、特に人的被害が出なかったため積極的には狩られず生き残っている数少ない魔物であった。


 だが、実は狩られなかった理由はもう一つある。

 そのくりっとした円らな瞳に、頭皮に二つ出来上がった鶏冠とさかのような垂れ下がった皮膚が髪型のように見え、その姿が何とも愛らしいと評判になったためだ。

 可愛いからという人間側の都合で駆逐を免れた魔物というのも何かとてつもないごうのようなものを感じるが、しかし、今そうやって目の前にしたカイルには結構グロテスクな外形に思えてそんなに愛くるしいとは取れないでいた。


「あー、カワイイー!!」


 だが、カイルのその美的感覚は純朴な子供たちと同然ではなかったらしく、カイルの手に引っ掴まれてキィキィ高い声で鳴きながら身を捩じるそれを子供らは輝いた目で取り囲んだ。


「カワイイ……のかね?」


 騒ぎだした子供たちに置いてかれているカイルが、心底不思議といった表情で首を傾げる。

 形の良いその太眉を曲げて、何やら思案しているのだった。


 カイルのその鼻に噛み付いたハウリザードはまだ幼体――子供のようだった。

 どうやら歯も充分に生え揃ってはいないようで、その事がカイルにとっては幸いしていた。

 一応、人に危害を加えないとは言え、鶏を噛み殺すぐらいはできる魔物だ。もしも成体であればカイルの鼻は穴が空いていただけでなく、噛み千切られていてもおかしくは無かった。

 それは自身を『美形』と称するカイルにとっては、畏れ多いことこの上ない狼藉だ。


 そんな点も考慮しつつ、それでも特に危険はないと踏み切ったカイル。

 期待に満ち溢れた目で自分らを取り囲むその幼い視線に応えてやるべく掴んでいたそのカワイイ“らしい”魔物をそっと地面に放してやった。


 ピョンっと飛び跳ねて地面を移動するそれを追い掛ける様に、楽しげな声を上げて一斉に走り出した子供たち。

 トカゲみたいな顔の癖に、後ろ足の方が強く発達している態系らしい。まるでウサギのように飛び跳ねて地面を駆けていく。

 そのハウリザードを追い回す子供の群れは心底無邪気で嬉しそうだった。

 追いかけられるハウリザードの子供はどうやらまたしても茂みの中に逃げ込んだらしく、集まっていた子供達が各々分かれて草むらの中に入っていく。


「どっち行った!?」

「あっちで動いた!」

「そこも動いたわ!」

「あっ! あそこにいた!」


 身の丈の半分は覆ってしまう草原のなかで、子供たちのそんな声だけが快く響いていた。



 ――魔物の子供と人間の子供が同じ場所で生き、一緒になって遊んでいる。



 絵空事だと自覚し、思い悩んでいたその理想の端くれをこうまであっさりと見せ付けられた。お陰で、存外に自分の馬鹿な空想も的外れではないのではと思えてくる。


 カイルは足を投げ出し、力を抜かれたような姿勢になる。――それでもどこか嬉しそうな緩んだ顔だった。

 その光景をとくと眺め続けていた。


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