第5話
明け方の夢に伯母が現れた。顔に艶があり体のむくみも取れて20歳以上若返っていた。
「お葬式だと思っていたら元気になったんだね」伯母はちらりと視線を向けたが、すぐに
隣に座る長男との会話に戻った。
その日は伯母の葬儀の日だった。前夜に伯母の家の宗教に則って、肉体から魂を移す儀式が終わっていた。通夜代わりの儀式が済むと、死者はどんどん若返り、赤ん坊になり、卵子と精子に戻り、分子や原子、素粒子まで還元されて次の転生に備えるのだろうと、Liberioは目覚めて思った。死別の悲しみから救われる気がした。伯母は喪主の長男に葬儀の段取りを指示していたのだろう。
3か月前に会った時、伯母はそれ以前と変わらず元気でよくしゃべった。89歳で数年前から脚がむくんで歩行が億劫になっていたのと、白内障で見えにくくなり、補聴器を使用していたことくらいだった。翌週に1回目と言っていたから、コロナワクチンの2回接種は済んでいた。ひと月前に脚や臀部にピリピリする痛みを訴え、検査すると悪性リンパ腫が膀胱や肺に転移していた。ピリピリした痛みは腰椎近くの大きな腫瘍のせいだった。脚のむくみの原因は不明のままだった。以前から存在していたとしても、おとなしくしていたリンパ腫がワクチンの副反応で急に暴れ出したとしか思えなかった。そういえば普通に健康で暮らしていた高齢者が接種後に急に具合が悪くなり亡くなったケースがネット上などでちらほら出ている。命を縮めるワクチンなのだ。
まさしくワクチンは国防の一環。国と国民を護るための道具だから兵器と同じで国産化が望ましい。なのに外国から一方的に供給されるワクチンを嬉々として打っていて大丈夫だろうか。自衛隊のアメリカ製戦闘機はMonkey model(猿仕様)といってわざと性能を落としてあるし、アメリカに刃向かう目的で使おうとしたら遠隔操作で無力化されることは周知の事実だそうだ。ワクチンも本国で使用しているものとは仕様が違うかもしれない。効能を弱めてあるだけならいいが、逆にmRNAの量や活性を増やして副反応の人(猿)体実験に供されたら侵略戦争だ。インカ帝国の住民にわざと天然痘の膿が付いた毛布を渡すような連中だからやりかねない。日本人らしいお人好しさ丸出しだが、あれもこれも戦争に敗けたせいだとLiberioは諦めた。
職場の上司のお母さんもワクチン接種後1か月ほどで亡くなった。腹部大動脈瘤で手術を受けられステントが入っていたが、別の場所に大動脈瘤ができて、それが後腹膜を破りi胃出血を起こしたそうだ。
知り合いにコロナで亡くなった人はおろか感染したとも聞かないのに、ワクチン接種後に3人亡くなっている。接種直後、2~3か月以内、数年後と副反応は3段階くらい見ないと分からない。COMMIRNATYというワクチンの名称も不気味だ。COMは『ともに』を意味する接頭語、m-RNAを挟んで、TYは20から90の数詞を作る接尾語、何を暗示しているのだろう。みんな一緒に注射したら、20~90%何がどうなるのか。怖いのでもうワクチンの話を人とするのは止めようとLiberioは思った。それよりも、九州の部隊が来たら・・で思い出した今東光のことが気になりだした。
今東光(1898年-1977年)小説家、天台宗大僧正、週刊誌やテレビでも活躍し、毒舌和尚としても知られた。
最初に読んだ今東光の小説は『悪太郎』で12~13歳のころだった。父親の本棚で見つけた文庫本だった。半ば自叙伝的な小説で、素行不良で関西学院中等部を退学になった主人公が豊岡中学に転入させられるが、ここでも女性交際で目をつけられ退校処分になるという話だった。次から次へと様々な女性との性的交流描写があり、接吻、抱擁、愛撫という単語だけで下半身が熱くなり勃起する感覚に、自慰を知らなかったLiberioでも未知の快楽の予感があり何度も読み返した。挿入などポルノ小説的な描写はなく、今から思えば極めて上品な表現であった。
中学生になり塾通いのバス停前に書店があり、週刊プレイボーイを立ち読みしていると、極道辻説法というタイトルで今東光の人生相談の頁があり、理解不能でも意味深いニュアンスを感じ、読み返すために買って読むようになった。
今東光のような波乱に富んだ人生で地獄の淵を歩いたわけではないが、それなりに人生経験を積み、Covid-19で奈落を身近に感じたLiberioは、今読めばそのニュアンスを多少理解できるのではと思った。
※ 読者からの相談
◆ 今東光の答え
☆ Liberioの感想
※ 女も口説けない
◆ バカなことを考えるひまに、何か本、一ページでも二ページでも読んだ方が得だ。無駄なことは一切考えるな!とにかく本を読め!しようがなかったら漫画でも劇画でもいいから、なにかしらモノを読むという習慣を体につけることだ。
☆ 本を読むなら出来るだけ紙で読むべきだ。内容を忘れたとき、すぐに前のページを開いて今読んでいるページと同時に見返せる利点がある。それ以上にデジタル画面で読むのとは働いている脳の領域が違う気がする。デジタルは表面的にしか読めないのだ。
※ 効果的な試験勉強は
◆ 食を細くしといて新聞、雑誌類は一切読まないようにする。食を細くすると眠くならないし、胃に負担をかけないので血液が頭に十分回るからだ。また新聞というものは、人間に物を忘れさせる作用をするんだ。
☆ スマートフォンはもっと見てはいけない。記憶力に加えて集中力と理解力までも阻害するから。
※ 和尚の政治活動に期待したのに
◆ 民主主義が多数決で成り立っているんだから、いいも悪いもないんだ、多い奴が勝つんだ。とにかく、金、金、金。大体だな、民主主義だの、多数決だっていうのはユダヤ思想だよな。
☆ 今東光は参議院議員をしていた時期があった。
※ 日本は滅亡するか
◆ 日本の工業力というものを、ロシアもアメリカも中国もみんな欲しがっているんだから、そいつを滅ぼすわけがない。なんてたって、日本の知能と技術というものは、アジアばかりでなく世界中で役に立ってるんだから、滅ぼすどころか、逆にもっと大切にしてくれらあね。
☆ 学費や生活費を補助するような形でもっと理工系学生を優遇する政策が必要だ。そうすれば優秀な人材が集まってくる。それにしても、ソ連の時代だったのにロシアと書いたり、まだ後進国だった中国を含めている先見性に驚く。
※ オナニーで近眼がひどくなった
◆ いまの医者が、マスターベーションは害がないっていうのは、ただ昔からある罪悪感を少なくしてやろうっていうだけのことだと思うよ。ありゃあ、とにかく体に悪いよ。
☆ 中高生をオナニーを好きに任せるグループと、禁欲して夢精のみにとどめるグループに分けて近視の進行を調べれば判明するはずだけど。
※ 動物と人間の違いは
◆ 人間というものは、意識をもって自分でものを判断するというところが動物と大違いで、自意識なり、自覚なりそういうものがあるから人間なんだ。動物とか鳥類なんてものは、グループ・ソウルドというか、群集心理で、大群というひとつの心理で支配されているが、人間はそうじゃない。自意識というものが高まってきて、自覚をして、いかに行動するかを自分で考えるというところが動物とはえらい違いなんだ。
☆ 先日、心理学の先生が、人間は集団生活の中で他人を観察するから自身という意識が芽生える、客観視が自意識を産み出すみたいなことを言っていた。それなら狼に育てられたタマラという少女が存在したが、自意識とか自我はあったのだろうか?そういうことを報告した論文があれば読んでみたい。自意識、自我の誕生を狼少女タマラの例から考察するで検索したが、ヒットしない。自意識が成長の過程で生じるものならば、魂とか生まれ変わりはないのだろう。でも肉親との縁、避けられない人生の出来事、生まれながらに背負わされる業みたいなものを見てくると過去因縁みたいなものの存在も否定できない。
※ 人生ちっとも面白くない
◆ 全部の人間に聞いてみな、「おまえの人生、つまってるか?」って。みんな「つまらねえよ」っていうよ。そのつまらない中で、どうしたらつまるか、つまり、つまるものを見出していく発見だ、この能力を養わなかったらどうにもならねえんだよ、人生は。どこへ行っててもつまるものを発見するという能力をまず養う。能力というより、そういう努力をするということだ。
☆ 今東光は世間通だ。言論規制が厳しくなった昨今、このような深い真理を教えてくれる人はもういない。引き込まれるけれど、少し疲れた。Liberioは書庫の照明を落として扉を閉めた。
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