第4話 始まりの町と助言

「………………お、……おぉ!」


 真っ白な風景が切り替わり、それほど眩しくなくなると僕は目を開けた。


 すると、そこに広がっていたのはまるでリアルかと言っても過言ではない……そんな世界だ。


 中世ヨーロッパのように、洋風建築な家。ファンタジーな日本では見たことのない服、そして、猫耳の生えた獣人など、驚きの要素はたくさんあった。


「すげー……!!」


 すべてが現実のように見える。嘘だという方がおかしい。違うということがおかしい。


 ちゃんとここにいると、僕は脳で認識してしまっているし、ここで生活すると脳で認識してしまっている。


 それだけ……、脳を誤解させてしまうほどの………リアルな町。


「確か、ここは始まりの町だったよね。」


 ビギンズタウン……通称始まりの町。ビギンズタウンとか言う人はほとんど聞かない。たいていの人は始まりの町って言っているんじゃないだろうか?


 始まりの町は、文字通りここに初めて来たときにここに飛ぶからだ。また、初心者ようの武器やら道具が集まっていることからそう呼ばれている。


「…………ここに浸っていたい……けど、みんなから見られるのは恥ずかしいから、あそこのベンチに移動するか。」


 僕は、この世界にひたっているみんなに見られていることに気づいた。初めたばかりなんだなーって思っている人が大半だろう。


 なんでわかるかって?いや、みんなの温かい目を見てれば分かるもん!


 そして、そそくさと近くにあるベンチに座った。


 それにしても、すごいよね。まだ1ヶ月くらいしか経っていないはずなのに、もう2層に行っている人とかいるもんな。


 この世界は、世界が層になっている。第一層は初心者用に作られた世界。第二層では初心者脱を表す。


 でも、この世界はすごい奥が深くてダンジョンとかのように一層がすぐに終わるとかそんなものではない。一層ごとが世界なのだ。


 だから、いろんな世界を楽しむことができる。僕は、ワクワクしていた。


「おっ、お前さんは盗賊かい?」


「……ん?」


 なにかに浸っていると、誰かが声をかけてきた。誰かと関わったのはこのゲーム始めてから初めてだ。………といっても始めてから5分くらいだけど。


 声のする方を見てみると、そこには三十代くらいの男の人がいた。ザ、冒険者って感じの人。


 ………って、なんで盗賊って分かったんだろう?まだ初めたばかりで最初の頃から服装も変えてないからみんなと変わらないはずなのに。


「あの、なんで盗賊と?」


「ん?あぁ、知らないのか?選ぶ職業によって初期装備が変わるんだよ。」


「え?そうなんですか?」


 全然知らなかったー……。


「あぁ、そうさ。たとえば剣士だったら初心者用の剣、防御士だったら初心者用の盾とかね?盗賊だったら初心者用のナイフをもらえるんだよ。」


「え?ナイフ………あっ、本当だ。」


 気付かなかったけど、ナイフが僕の服とズボンの間に刺さっていた、いや、刺されているわけじゃないよ。引っかかっているという方が正しいのかな?


「気付かなかったのか?」


「あはは……すみません。」


「いやいや、別に謝ることなんてないだろ。お前さんはなにも悪いことなんてしてないのに。そうだ、アドバイスをしてやろう。」


「え!本当ですか!お願いします!」


「まずは戦うところなら初心者の森に行ったらいい。かっこつけてダンジョンとか行ってはだめだ。前に俺の忠告聞かずにダンジョン行ってせっかく買っていた装備をロストするやつとかいたからな。」


「はい、わかりました!」


「お、おう……。」


「どうしたんですか?」


「い、いや、おっさんなんかの言うことを聞くやつなんて今まで一人も居なくてさ……驚いて。ありがとな。」


「いえいえ、こちらこそありがとうございます!」


「おぅ、頑張れよ!」


「はいっ!」


 いい人だったなー。ネットは悪い人ばかりとかお母さんは前に言っていたけど、案外そうじゃないのかも。


 そして、かっこいい………いや、なんかかっこつけてる?そんなおじさんをみて、僕はきちんと初心者の森に行こうと決めた。


 ………あっ、やめた。後でカッコつけるのあんまり決まんなくて恥ずかしかったのかなる。


「ふふっ、面白い人だったな。」

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