第26話
「それで」
人魚たちと手分けして5人を縛りあげた魔王は王様に問う。
最後の一人だ。何もせず、ただ座り込んだ貴族の男。
「どうします。彼?」
「ニセの勅令、しかも土地の簒奪を企んだとなれば極刑も視野に入る重罪だ。しかし王の一存で処刑というほど野蛮な国でもない」
「とりあえず近隣の貴族に任せましょう。事情を離せばわかるでしょうし、私たちが帰る手立ても見繕えるでしょう」
貴族はどうしたらいいかわからない。
王様に慈悲をこう。目の前で王の権威を悪用したのだ。無理だろう。
「あなたがこの先どうなるかは知りませんが、一つ伺いたい。手口はわかりますよ。でも目的がわからない。この土地にそこまでする物があるんですか?」
魔王は聞いた。
「それは、その」
「話しなさい」
魔法使いの一言。
もうどうしょうもない。
「西の山、の山頂に、キノコが」
「キノコ?お前はそんなもののために勅令の偽造までして簒奪をたくらんだのか」
王様の声には呆れがでている。
貴族は名誉職だ。領地もある。食うに困る密猟者ではない。
「はい。※※※が、一面に沢山」
「なんと。本当か」
貴族はもう畏まってしまい返事もできない。
魔王は呆れて他の5人の場所に引っ張っていく。
「※※※があるとは、あなた方は知らなかったのかね」
魔法使いは次の指示を聞こうと待っていた人魚の長にいった。
「はぁ、そもそもそれはなんですか?」
長は困惑顔。周りにいた人魚も同様。
王様も似たような物だ。
「俺も知らないんだが、なんなんだ。それは」
「薬の材料です。銀と同じ価値がある恐ろしく高価な物ですよ」
魔法使いくらいしか知らないマイナーな薬。というわけではなく、多少なりとも薬について勉強したならみんな知ってるレベルのもの。
ただ
「知らんなぁ」
薬学など知らない人間の代表例である王様の反応はこうだし
「私共は人間の薬は使いませんし、山の方には行きませんので」
人魚は人魚で興味がない。というかそういうキノコがあるというのもイマイチわかってない。
この反応を見て魔法使いは
これなら他の方法もあっただろうに、皆が価値を知っていると勘違いしたか。あの男も愚かなものだ
と逆に同情してしまった。
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