第24話

どうする

「あ」

どうする

「あぁ」

どうしたらいい


「あなたは今、どうしたらいいか迷ってるでしょう」


こまった表情を浮かべる貴族に魔王は言った。


「うるさいな。黙れ。誰だよお前は」


この貴族は魔王の顔など知らない。

当然だ。王の顔すらしっかりと覚えてなかったんだから。

そして、決めた。

とりあえずこいつを人質にする。


「ニセの勅令で人魚たちから自治領を奪う。王族に敬意はあるが人間社会のことをよくわかってない人魚なら勅令で騙せる。あとは適当な書類なり口実なりでっちあげてこの界隈の貴族を騙して管理を請負えばこの土地は実質あなたのものでやりたい放題。住人である人魚は疑問があろうが勅令という王の権威で納得するし、なんの価値があるかもわからない自治領だから、あなたが管理すると言っても周りの貴族から不満なんかでない。城の役人は僻地を誰が管理するかなんて興味ないから問題が起こらなければそれでいい。そんなところですか」


魔王は言った。

適当に言いくるめてで土地や建物の権利を奪う、というのは古典的な詐欺。

ニセの勅令が詐欺の道具に使われるのもまぁよくあることだ。

だから法律が作られている。


魔王の言葉に従者三人と使者二人は腰の剣をぬいた。

ここまでわかってるならもうどうしようもない。とりあえず切り抜けて、そのまま外国にでも逃げるか。

貴族にしたって似たような発想。とりあえずここは逃げて、館の金をひっつかんでどこかに雲隠れする。この田舎から城や周りの貴族まで話が伝わるには時間がかかる。どうせ追いつけやしない。


「やめといた方がいいぞ」


王は警告。

魔法使いは逃げるように人魚に指示を出そうと思うが数が多い。

巻き込まれるようなら私が出るしかない。この国の民だ。


「やれ!!」


貴族の号令。

あわせて動く兵隊たち。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る