第19話

「君、それはつづりが違うよ」


集会場からふらふらっと出ていき川沿いを歩く魔王の目の前に、変わった集団が現れた。

川の中の浅瀬にいる人魚の子供たちと水着を着た若い男の先生。当然先生は二本足で子供たちに足はない。

子供たちは浅瀬の川に並べた簡素な机の上に紙を置き、ペンで文字を書いている。

先生は子供たちのあいだを歩き、つづりの間違いを正す。


「でも先生、話すときはこう話すのが正しいんですよね」

「そうだけね。その、えっとだな」

「発音しない文字なんだよ。もともとは外国の言葉だからつづりと発音が違うんだ」


なにをするわけでもなく川岸から眺めていた魔王はそう声をかける。


「そうなんですか」

「そうなんだよ」

「こういうことを習うのは難しいかもしれないが、覚えるしかないよ」


そう言って魔王もズボンのすそを上げて川の中に。


「暇つぶしだ。お手伝いしましょう」

「これはどうも。じゃぁ次の文章はこうだ」


そう言って先生は子供たちに一般的な会話文をいい、子供たちはその会話文を書く。

それを魔王と先生の二人で採点。

彼も闇の国で外国語としてこの国の言葉を習った口だ。子供たちがどこで躓くかはわかるというもの。

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