第15話

「ここがこう動くんだと思うんですが」

「そうなるとこの石じゃないか。城の扉にもあるだろう。魔法をかけると動くってやつ」

「そうですね。あとは魔法の種類ですが」

「王がここに来るときは一人か、まぁ従者の人間がついてくる程度って前提だろう。なら人を選ぶそこ複雑な魔法は使わないんじゃないか」

「となると定番の魔法、作られた時代を考えると古い的な奴。少し試してみます。見ててください」

「光った」

「正解ですね」


冒頭、あれだけ偉そうにしてた王様とあれだけペコペコしてた魔法使いは仲良く扉の仕掛けを調べていた。


無駄に長いこと城で務めている魔法使いにとって、この王様は若いころからよく知っている。

魔法が得意だった先代に頼まれて魔法を教えたこともある。

王様本人にもやる気がないわけじゃなかった。熱心というほどではないが親に言われてピアノを習うのと同じくらいには真面目に習っていた。


それでもだめ。


これはどうしたものかと悩んでいたら先代の王に逆に謝られてって困ったとか。


王は王でそのころからのお付き合いで今でも王宮に招く仲。

王となったあとも魔法使い部門の幹部職として、予算くれと言ってきたり部下が不祥事を起こしたと謝りに来たりで顔を合わせる。

魔法使い本人にどうも熱心さが足りない気はするが、この歳になってまで中間管理職などやりたくないだろうと納得してる。

やる気がなくてもほかの連中より有能、というか社会性があるので魔法使いの統括職についているわけだが。


なので以前から

「歳だからやめたいのは言わなくてもわかってる。やめるなら後継者を見つけてからにしてくれ。ほかの部署の役人や俺と金と人材の話ができる奴だ」

といってある。

しかしいまだに見つけてこない。魔法使いという生き物には難題なのだろう。


「開けれそうだ。来てくれ」

「はーい」

「私もついて行った方がいいですか」

「そうしてくれたらうれしいな。無理強いはしないけど、何があるかわからないから人では多い方がいい」


そういったわけで、魔法使いと王様と魔王と人魚の4人は扉の前へ。


「※※※※※」


魔法使いは魔法を唱える。

そうすると扉の仕掛けが動き扉が開いた。

そして真っ黒な光なのか靄なのかわからないものが4人を包み、扉の中に引っ張っていく。


「蓋を開けたらびっくり仰天。ワンパだよね」


呆れたように魔王はつぶやき両隣の人魚と王の腕をつかんで引き寄せた。

王はなんだと思ったがこれは引き離されないようにするためだと気づく。

なのでそれをまねて魔法使いの服をつかむ。


「流されるまま進むしかない。王様なんてそんなもんさ」


黒い光は四人をつつみ、そのまま扉の中に引きずりこむ。

そして扉は締まり、鐘の音と女の声。


扉の点検時期が過ぎています。城のメンテナンス係に連絡し安全チェックマニュアルに従い安定した作動をするか確認してください。終了したら内蔵のチェックシートにチェックを入れてください。繰り返します


三回ほど、当初想定されていた点検期間中に点検されていないことを知らせるお知らせが鳴り響き沈黙。

まだ隠し通路が隠し通路として認知され、この魔法の扉の維持も定期的に行われていたころに作られた自動アラーム。

マニュアルは多分城のどっかに眠ってるだろう。公文書の管理がしっかりしてればの話だが。


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