第14話

「あら、泳げませんか」

娘は笑い、ザブザブと音を立てながらニ週ほど湖の中を泳いだあと陸に上がってきた。

先程まで魚だった下半身は二本の細い足と非常に露出が目立つ水着に変わっている。


「こちらへ」


いい歳したおじいちゃんとこう見えても耐性があるおじさんは特に気にしないが、魔王は目線をそらす。


「君のそれは変身の魔法かな。人魚も使えるんだね」

「これはおばあちゃんから教えてもらったんです。領の人魚は子供の頃に教え込まれるんですよ」


若い娘と話す事がない魔法使いは、娘の隣を歩きながら魔法使いはあれやこれやと人魚の魔法の話をきく。

娘も高名な魔法使いが魔法について興味があるのは当然だろうとわかる範囲で答えていく。

王様はその後ろで相槌をうち、その後ろで一人若い娘の水着姿をなるべく見ないようにして魔王。


「王は本来ここから逃げるのだと聞いています。その道しるべになるこの石を置き換えたりするのが私の仕事で。王様に無断で案内をするのはまずいのでしょうが」

「まぁ気にしないと思うよ」

娘の話に魔王は答えた。

「ですよね」

「機嫌が良ければ怒らないさ」

皮肉まじりに話を振られた自称王様はそう自嘲気味に言った。


4人が進んだ先にあるのは扉。


「ここです。開け方はわかりませんが、魔法使い様ならわかるんじゃありませんか」


扉には大きく王冠と剣と杖の模様が彫られる。

王家の物、というこれ以上ないアピール。


「とりあえず調べてみようか」

「そうしましょう」


王様と魔法使いはそう言って扉を調べ始める。


「お兄さん。あなたも魔法使いの従者さんですか」


それを遠巻きに見ていた魔王。

魔王に人魚は話しかける。


「そうじゃないよ。まぁ、あの二人にとって思わぬ客人、厄介な客ってやつさ。巻き込まれて一緒に落ちてきたんだ」

連れ去られて、みたいな話をここでしても仕方ない。

「へぇ、なんだか不思議な気配がするんですよね。人間じゃないみたい」


そう言って顔を近づけてジロジロとみる。

歳は魔王と同じくらいか。上も下も水着。しかも露出は多めなので、魔王としては目線に困るというやつ。


「そんなに見ても何も変わらないよ」


そう言って顔をそむける。


「なんだか、近所のゴブリンみたいな感じがする。なぜかしらね」

「正直に言うから離れてくれ」


そう言って人魚の娘を押し戻す。


「僕は魔王なんだ。だから人間よりオークの方が近いんだよ。あの二人より下半身が魚の君に近い。僕は翼があるが隠してるんだ」

「王様の次は魔王様?お二人ともジョークのセンスはいまいちね」


そう言って娘はけらけらと笑い、合わせて魔王も笑った。

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