第12話

「でもそっちのおじいちゃんには見覚えがあるわ。どこで見たかしら?」


おじいちゃん、つまり魔法使いの方である。


「あぁ私は」


そう言って自己紹介。天下の有名人。なのでこちらについても疑わしい目を向けられたが。


「これが身の証だ。わかるかな」


そう言って胸から金メッキのバッジを取り出して渡す。


表には王冠の下に杖と剣。それとユニコーンが図案化された紋章が掘られ、裏には名前、城での役職、身分などが書かれたカードが挟まっている。城で働く魔法使いが持つ身分証だ。

同様の身分証は皆に支給されるが、軍人畑の人間であればユニコーンの代わりにドラゴン、文民であればペンと役職によって紋章は違う。


職は違えど王の下で働く。というのがこの図案の意味。


城から円満退社し在野に出ていった者達も王からの感謝との気持ちとしてこのバッジを持っている。なのでこの図案は王国全土で通じる。


「あら、失礼しました。あの有名な魔法使い様だったんですね」


その身分証を見て態度を変えた小娘。


「しかしなぜこのような場所に来たのですか」

「それはだな。なんと説明しましょうか?」

「なんとって、事故としか言いようが無くないか」

「そうですね。城にいたら床に穴が空いて落ちてきたんです」


本人が納得したならもういいや、という事で王様は魔法使いに任せることにする。

魔王は詳しく説明しながら天井の穴を指差す。


一番偉いのはこの国の王であるおじさんで、その次に偉いのは外国の元首である隣の青年、その次が魔法使いなのだが、小娘にしたらよくわからないおじさんとかっこいいがまだ歳が若い青年とこの国で一番有名で人魚のようなモンスターにも名前が知られている魔法使いの組み合わせである。


そりゃ一番偉いのは魔法使いだ。


誰が一番偉いかなど見方変わるものでしかない。

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