第6話
「扉はあかないのか」
王様がいる部屋。書いてなかったが執務室というやつ。の前で警護の者たちが集まって騒いでいる。
中から閂がかかているのだ。カギと違って外からはあかない。
本来であれば王を倒すためにやってくる外敵から守るための頑丈な扉も、こうなると厄介な敵。
「破城槌を持ってこい。扉ごと壊すぞ」
リーダー格の男がそう叫ぶと、部下の人間が走る。
それと入れ違いで騒ぎを聞きつけた魔法使いたちもやってくる。
「何事ですか」
「お前たちが召喚した男が王の前で狼藉を働いたんだ」
「なんですと」
後ろの方で魔法使いが一人倒れる。
手違いで魔王を召喚してしまった張本人だ。
走馬灯のように自分の首に縄がかけられるイメージが走る。
いや、首に斧かもしれない。
「扉を破るから下がってろ」
「私たちが魔法で破りましょう。危険ですから下がってください」
「じゃぁ頼んだ。破り次第突撃をかける。構えろ」
何かの手違いで凍結した計画を実行し、挙句敵国のトップを召喚してしまうというミスを起こしてしまった集団だが、基本的には優秀。
魔法使いたちはすぐさま相談し魔法を選び、そして呪文を唱えはじめる。
それに合わせて警護の者や応援の者たちは各々抜刀し構える。
「※※※※※」
王の城で働く優秀な魔法使いたちの合体魔法。
それは大砲を打ち鳴らしたような爆音と同時に爆発を起こす。
魔法についてはよくわからない警護の者たちですら彼らが手を抜いていないことは一目でわかった。我々が食らえばひとたまりもないだろう。
しかしだ。
それでも扉はあかない。ヒビが入った程度。
「どうしたんだ」
「わかりません。何か魔法がかかっている。闇の国の物でしょうが、複雑すぎてわかりません」
「あの狼藉者は本物の魔王なのか」
魔王の魔法だ。
この国の魔法使いがすぐに分析できるものではない。
「※※※が」
つい汚い言葉を吐いてしまったリーダー格の男。
「何事ですか」
そこに現れたのは一人の男。
昔なら両手に花だっただろう古臭いタイプのカッコよさがある。
服装はシャツにズボンとシンプルなもの。
「王の前で狼藉を働くものが」
「何」
すぐさま扉の前に立つ彼。
「あけないのか」
つい口調が変わる。
「殿下。魔法では無理でした。波状槌で試してみます」
リーダー格の男は畏まっていった。
この青年はこの国の王子様だ。
よくできた王子である彼は剣の師匠である警護の者たちに礼を尽くすことを忘れないが、それでも偉さでは王子様の方が偉い。
「そうか。皆、後ろを向いていてくれるか」
「何か策が」
「王家に伝わる隠しからくりがある。緊急の時以外は使ってはならぬときつく教えられてきたが、今がそのときだろう」
それを聞いた周りの物は王子の指示通り後ろを向く。王家への敬意だ。
「こことこうで、こっちを向いてもいい」
王子がそういって、皆が王子を見たとき、彼の手元にはひとつのひもがぶら下がっていた。
「あけるぞ。いいか」
「よろしくお願いいたします」
リーダー格の男の言葉、それと同時にひもを引く王子。
爆発に近い音だが、そうじゃない。壁が崩れる音だ。
そして支えを失った扉は倒れる。
開城。
「相手は魔王だ。心してかかれ。前進」
リーダー格の男はそう指示して、いつの間にか集まっていた大量の応援や魔法使いとともに執務室になだれ込んだ。
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