第3話

僕が魔王なんです


人生でこのフレーズを聞くことはなかなかない。

この国の住人だったら多分10人しか聞いたことがない。

具体的に言えば王様と魔法使い、あとここに控えて職務に忠実に二人のやり取りを聞きながら聞いていなかった警護や従者の者たちだ。


「はぁ」


王様はなんのことか理解できないままそんな返しをした。

それより早く動いたのが警護係。


魔王。彼らにとっては敵の親玉。


そう訓練されてきた警護係にとってはそのフレーズだけで戦闘体制をとるのに十分。

そこで全員腰に差している剣に手をかけたが


「※※※」


好青年の口から放たれた呪文で動きを封じられた。

好青年、魔王にしてもこれはもう無意識の産物。自己防衛の護身術に近い。

つまり癖。やっちまったというやつ。


「あの、やっちゃったかなこれ」

「敵襲‼‼‼」


そう言って魔法を解こうとしたら警護係が叫んだ。

殺されてもいいから敵襲を外に伝える。訓練通りだ。優秀。ただこういう場合では約に立たないマニュアル脳。


「やめなさい」


魔法使いはとっさに静止しようとしたが、遅い。警護係と従者は腰の剣を抜く。


「※※※※※」


もうこうなれば魔王も自棄だ。

口から魔法を唱え動きを止め、そのまま男たちを宙に浮かせる。


「※※※※※※※※」


そして部屋の外にポイだ。全員。8人くらいか。

なんという魔力。なんという技能。こんな部下ほしい。というかそろそろ引退したいからおれの仕事やってほしい

これが魔法使いの評価。

そのあと本来数人で開ける扉が勝手に閉じて、閂がひとりでにかかる。

そして静かになった。


「どうしましょう」


「どうもこうも、どうするんだよ」

「これは君、君がやったんだぞ。君の責任だぞ」


これだけ派手にやってしまった魔王の一言に二人はつい怒ってしまった。

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