第2話

「いやすまない。まずは君の処遇だな。うん」


王様は気を取り直して考える。


「君はどこから来たんだ」

「あの、まぁその、闇の国の方です。はい。こどもたちと遊んでいたら光に包まれてあれよあれよとここにって感じで」


よりによって外国人。

誘拐。ばれたら確実に国際問題。


「今までの話を聞いていたらわかると思うが、こちらの手違いで呼んでしまったんだ。いくら謝ってもあやまり切れる話ではないが」


そういった王様は頭を下げる。

ここはひとつ「ミス」というのを前面に押し出し納得させるしかない。


「いえいえ、頭を上げてください。その、お役所のことは僕もわかってますから。はい」


お役所のこと、という言い方に魔法使いは何か違和感を覚える。

もしかして役所勤めの役人か?だとしたら困る。

外国の役人にこんなスキャンダル知られたくはない。


「では、僕はこのまま帰っていいでしょうか」

「それはさすがに困るんだが、その」


スキャンダルの口止めだ。何かいい条件はないかと王様。

魔法使いは下手な腹芸より正直に言った方がいいだろう、部下のミスは俺のミス、これで首になってもしょうがねぇともう割り切った。


「今回の召喚については黙っていてもらえないだろうか。見ての通り私の監督不行きが原因で起きてしまったミスなんだ。君の国の王様を倒そう、という気はもうないんだが、わかるかな」

「手違いが原因とはいえ問題を起こしてしまったが、終戦の機運に水を差したくない。ということですよね。もちろんわかります」


好青年はそう言った。


「そうだ。もちろん闇の国の行政の方には私から説明するし、当然君のご家族やご両親にも謝罪と迷惑をかけた分相応の弁償をさせてもらう。だからどうかこの件についてはだまっていてもらえないか」

「まぁ、はい、わかりました。私としても、両国の終戦が取りやめになっては欲しくないですし」


と好青年は承諾。

ありがたい。とりあえず大問題にはならないだろう。


「なら、こちらとしても相応の礼を尽くさないと。帰りの手配をしよう」

「私が直接送り届けさせていただきます」

「いえいえ、結構です。はい。自分で帰れますので」

「こればかりはそういうわけにはいかない。僕らとしても呼んでしまった側の責任がある。君に迷惑をかけるかもしれないが、安全に送り届けるからこちらの好意を受け取ってくれないか」


王様の意見も至極もっとも。勝手に呼び出して「間違いだったから自分で帰れ」などというのは無責任。

今回は特にそうだ。帰る途中で夜盗にでもあって死んでもらったらこまる。


「我が家のじゅうたんであれば1日で帰れますので。でも国境沿いで手続きを行う必要があるから少々時間が」

「事務方の手続きがいるから普通に馬車か何かで言ってくれ。国境の方は僕が手を回そう。道中はしっかりとした宿をとってそこで休んでもらってくれ。資金は」

「ならば警護に魔法使いを数名連れて行かせてもらいます」

「騎士の方も連れて行きなさい。あと現地で説明する責任者を」


何一つ不自由なく、安全に国まで送り返す。ついでに現地で関係各所に謝罪する。

この目的に基づいて王様と魔法使いはあれやこれやと計画を始める。

すぐさまこういうことができるからこの王様はすごいのだ。

しかし困ったのは青年。


「いやその、そんな大ごとにされたくないんですよ。僕一人で帰れますから」

「とは言ってもなぁ」

「すでに大ごとなのだよ。こちらとしては。事実上の誘拐だからなぁ」


一人で帰れるといってもこの回答。

二人にしてみれば、もう大ごとなのだ。だから失礼がないように警護を付け、現地のお役人たちに話を通すために関係者を連れていく。それに関する経費、予算、人員。

礼を尽くして闇の国の国民を帰すことがこのトラブルを解決する第一歩。


「頼むよ。不自由させるようなことはないから、迷惑だろうが納得してくれないか」

「お願いします。私としても部下の不届きの始末をしないと国に面目が立たないのです」


二人はそう言って青年に頼み込む。

こまった青年はも腹をくくる。


「その、その、あの、もうここまで来たら僕も正直に話しますがね。僕は魔王なんです」

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