帰り道
16
ヨモギ色の魔法使いは、妹ジェノシィに向かって色々と訊ねた。こんがり肉もしくはこんがりオモチを食べながら。
「なんでこんなところで何週間もすごしてたのよ? さっさとそこらへんの宝石いくらでも持って帰ってくればよかったのに」
「だって、オモチとキノコとタケノコがおいしくておいしくて。それにスゴイ本まであったし」
「オモチはこの今食べてるオモチビーストの肉よね? で、キノコ? タケノコ? あと本?」
「やっぱ意味不明に聞こえるか」
「うん」
「キノコとタケノコはそこらへんにいっぱいあるのよ、理由はわからないけどね」
はいこれ、とジェノシィはヨモギにキノコとタケノコらしきものを渡した。
「このまま食べれるの?」
「もちろん」
「じゃあいただきます」
もぐもぐキノコを食べるヨモギ。
「どう?」
「そこそこ美味しいわね。で、スゴイ本てのは何よ?」
「一〇三〇〇〇個のショートショートが入ってる本があったの。退屈知らずだった」
「危険そうね……でもさっさとキノコタケノコ収穫して出たほうが良かったじゃない。あんな危険な怪物がいるし」
「ウルティメット・オモチビーストはとくに美味しいから」
「それも、たしかに。そういえば、『糸』が途切れてたのは?」
「オモチビーストの体に触れると吸い取られるように消えちゃうみたいだった。あとね、キノコとかすごく美味しいけど日持ちがしなかったの。一日で溶けて消えちゃうの」
「ふーん……」
「アイスボックスでもあれば持ち出せそうなんだけどね」
「それならあるわよ、五〇リットル入るやつが」
「ええっ? なんでそんなに用意がいいの?」
「宝石とか伝説のオモチとか言われたら、マイバッグ持って来るにきまってるじゃない。キノコもたっぷり持ち帰れるわよ」
「じゃあ詰め込めるだけ詰め込んで帰ろう!」
「あ、でも、この河原の砂利みたいに大量にあるダイヤはあんまり多くしないほうがいいと思うわ」
「なんで?」
「この宝物殿のことが広まらないようにね。でもその他の宝石類はこの『シュガー・アンド・トロ印のアイスボックス』でバンバン持ち帰りましょう」
そして二人は『糸』をたどって帰り道を歩いていった。
「あ、そういえば、ドラゴンっぽい相棒がいたわよ」
「何それ?」
「やっぱジェノシィが通ったときには居なかったのね。ほら、そこで眠ってる。ベリルって名前なの」
「ドラゴンっぽいね」
ジェノシィの感想もなぜか「ドラゴンっぽい」だった。
「さて、ここは例の呪文の出番だわ」
ヨモギは怪物を無害にする呪文を知っていた。
緑竜ベリルの寝ているところに魔法陣を描き、
「ポホリイ=ミモーン=フ!」
魔法の煙が巻き起こり、ベリルの体を包んだ。
煙が消えると、そこには――
身長一〇〇センチくらいの人間の幼女がすやすやと眠っていた。
「人間にしちゃったの!?」
「うん。ていうかメスだったとは……」
そして三人は自宅「ヨモギモチダンゴ本舗」に帰った。
その後、ヨモギモチダンゴ本舗は不自然なほど商品の値段が安くなり、二人の女店主と、あと一人の緑色の髪をもつ小さな看板娘が評判になり、大繁盛することになった。
めでたし・めでたし
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