長い放課後
15
「やったっすー!」
パソコン部部室に佐藤トトロの歓喜の大音声がこだました。
「やりましたね! トトロちゃん!」
いえーい! とハイタッチするパソコン研究部部長と佐藤トトロ。
エンディング画面は制作中です、と画面に表示されている。
「長い戦いだったっすね……これでイージーモードって」
「いくらなんでも無理過ぎよね」
「いやホント、まさか倒せるようになってるとは思わなかったっす」
「え? どういうこと?」
「いや、エイコ先輩のことだから、絶対倒せないようにしてあるんじゃないかってちょっと思ってたんっすよ」
「なんで?」
「いや、ちょっとサイコ入ってるからあの人」
「エイコだけに?」
「そうそう……じゃなくて! 読んでる本が全部ホラーばっかなんっすよ。それもグロいやつばっか薦めてきて……あの眼球に寄生する蟲みたいなのは気持ち悪すぎて本閉じてひどい夢にうなされるハメになって――」
「ふーん……」
部長はなにか言いたげにニヤニヤしだした。
「な、なんっすか?」
「本の貸し借りなんかしてるんだー。それも律儀に読んじゃって……かーわいー」
「だからそういうのじゃないっすよ! 制作者たるもの、あらゆるインプットを……こう……多角的に見ていかないと!」
「またまた、テンプレ的に照れてる」
「うー……そういえば、部長はどうやってエイコ先輩があのスタバの斜向かいにあって、もうスタバに潰されそうなあの喫茶店にいるとか特定したんっすか?」
「禁則事項です。でも、教えてほしい?」
「……なんか怖いっすね」
「実をいうと……」
「……」
「エイコ先輩のブログからツイッタへのリンクがおいてあって、『窓のそと』って画像があったのよ。店内からの撮影物じゃなくてストリートヴューのスクショでしたけどね。そこにスタバが写りこんでて」
「怖っ! ストーカーの才能っすか? 色々ダメだと思うっす!」
「で、多分それでエイコ先輩が携帯端末の電源切っちゃったみたいなの」
「腐れ外道ー! って言いたい気分っす」
「でも、エイコ先輩と美味しい喫茶店でデートできたんだからよかったじゃない」
「だから、そんなのじゃあないっすよ!」
外はとっくに暗くて、校則の下校時刻はとっくに過ぎてるけど、野球部がグラウンドでトンボがけしてるし、多分大丈夫だよね……
そんなことを言い合いながら、二人は自転車置き場へ行き、
「西校!」
「ファイッオー!」
「じゃあねー」
「シーヤーっす」
球児たちを応援しながらそれぞれ帰宅した。
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