第8話 魅力8必要
腹打ちもせずきれいに海に沈んでいくがスキュラだから大丈夫だ。
取れかけたマントを頭陀袋に詰め込み、ハープを抱え直す。水流操作で移動を補助する。
スキュラに水流操作の特殊技能があるように、セイレーンには風操作のような特殊技能があったのだろう。たしかに巨大な翼だとはいえ、あの体とデザインで自由に飛ぶには、そういう補助あって然りだ。それがあんな技を使えるとは。思えば不自然に双頭犬たちが傷ついていた。気づかないうちに、かまいたち的なもので攻撃されていたのだろう。
浮上し、注意しながら様子を見る。
上空をセイレーンが飛んでいる。
調子に乗ってまた急降下しかけてきたら引きずり込んで溺死させてやる。
まてよ、セイレーン人魚説あるけど水中大丈夫とかあるのか?あいつもスキュラも元はニュムペー(河の精)なのだ。本来なら、仲良くできないものか。
などと思っても、ドサクサ紛れにやつのリラ型ハープも拝借してきてやったし、玉も何だか知らないが作動させてしまった。
出会いから全てすでに最悪の関係だ。
さすがに迂闊に降りてくることはなさそうだ。
あの玉は何だったのか。魔力の回復とかスキルの獲得とかできないかと思ったときに作動したがと、ステータス表示を確認した。
付与技能1
【従属判定・魅了】魅了された対象に従属判定が行われる。判定が成功すると主に協力的になる。成功は極稀。主従間は意思疎通が可能になる。技能取得には魅力8以上必要。
付与技能という項目が増えていた。
凄いと思う反面。どれほど成功するのか気になる。そして、魅了していたらそれだけですでに協力的な行動をしてくれるのでは?と突っ込みたいが、主従という重みと意思疎通が可能になるというのはやはり凄いのかもしれない。セイレーンが残していた理由が気になる。
その時、海中の異変に気付く。
突如、渦潮が巨大化し、周囲を飲み込む物凄い潮流を生み出す。双頭犬たちが流れに巻き込まれた。俺は蛸手で水を蹴り後を追う。
渦巻く流れに巻き込まれ続け、やがて反転し吐き出される。その流れは思いのほか遠くに俺たちを運んだ。思えば初めて海中に入り、せっかく「水中呼吸」や「耐圧」を持っているのだからと安易に身を任せた。
随分と流されたが、浜辺から陸に上がる。すでに夜になり月が上っている。
違和感を感じたが、岩陰に身を寄せ、ハープと頭陀袋をおろし手斧を取り出す。乾燥した草木を集めてきて火をおこし、マント、衣類を乾かすと、双頭犬に順番に見張りを指示して、眠ることにした。
今日は、疲れた。
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