第29話
「何、クアーエが戻らないだと?」
軍議が終わった後、従者のディーナーさんからの報告を聞いてリーネオさんが声を上げた。それを聞いて私もドキリとした。まさか、あのクアーエさんが・・・?
「へい、ペルクーリが何か奥の手を準備しているらしいと、探りを入れていたのですが連絡が途絶えまして。」
「ふむ。ペルクーリの配下にはクアーエの実力を上回るような密偵は居なかった筈。やはり何者かがペルクーリに
二人の会話を聞いていて私は、どんどん不安になっていく。
「
「へい、そこは抜かりなく・・・。」
「そうか。ならば任せるしかないか。リン、
リーネオさんが私の肩に手を乗せて語りかけて来た。じっと目を見つめてくる。
「そ、そうですよね、あのクアーエさんが簡単に死ぬなんてこと無いです。それより私達がペルクーリの軍勢を打ち破るために全力を尽くさなきゃ!」
私は自分を勇気付けるように答えた。そうだよ、今は彼女を信じるしか無い。ディーナーさんだって、自分の妹だもん、絶対に心配な筈なのに気丈に振る舞ってる。私は自分に出来ることを精一杯やらなきゃ!
「リン、そうだ。その意気だ。ここで我らが弱気になって肝心の
「はい、今夜は明日に備えて休みます。」
私はリーネオさんにお辞儀して寝室に向かった。膝が震えているのが自分でも判る。中々寝付けなかったけど、無理やり目を
――…
「まだ見つからんのか? あれを探っていたとするとイコォーマの密偵に間違いない。絶対に
ええい、
「あの者を呼べ! こうなったら手段を選んでは
「しかしペルクーリ殿下、彼らを公然と使うのは
「
「ははっ! それでは直ちに!」
ようやっと動きよったか。全く、能無しばかりで困ったものだ。
「ペルクーリ殿下、お呼び頂き光栄でございます。この度は
予が呼びつけて程無く「その者」は現れた。くすんだ茶色いローブに身を包み、
「おお、デーモケッタ導師殿。一つ、
「ほう。宜しいでしょう、何でもやって御覧に入れましょうぞ。」
「ふむふむ、中々頼もしいではないか。イコォーマの密偵が一匹紛れ込んでおる。
「なる程、
そういうとデーモケッタはその場で姿を消しおった。
「ペルクーリ殿下、大丈夫なのですか? あのような者を自由にさせて。私は何か不安です。」
「なあに、心配は要らぬわ。予が
ラスカーシャが頼りなげにしな
――…
「イコォーマ連合軍、プロージア軍、そしてブリストル軍の皆さん! 今日こそ、ゴルジョケア軍、いえペルクーリ王太子との決着の時です!」
そして夜が明けて、いよいよ決戦の日が来た。朝起きたら女神ユマさんから
「皆さんには、この私【
私が言った途端、ヴァイムちゃんが真っ赤になって
「そして私達は信じています。ここに集まってくれた皆さんの勇気と力を!」
私は出来るだけゆっくりと兵隊さんたちを見廻しながら言った。気持ちが伝わるように丁寧に心を込めて・・・。
「ちょっとアンタ、ウチにも
ブリストルの【聖女】お蝶さんが
「アンタらなあ、これまでペルクーリのボケェにやられた仕打ち、忘れてへんやろなあ? やられた分はやり返す、倍返し、いいや三倍返しじゃけえ! 今日はあのカスに地獄見せたる日や、しっかりウチについて
ひ、ひいぃ・・・。まるでヤクザの殴り込みだよ。今、判った。ハッキリと判った。お蝶さんが性格的に一番【
「ちょっと、オチョウさんって言ったっけ? 抜け駆けしないでよ。こうなったら私も言うわよ!」
今度は【霊獣使い】のシューナちゃんまで壇上に上がって来た。お蝶さんにライバル意識が芽生えたのか、やっぱり瞳に闘志が
「みんな~、今度の戦い敵は多いけど厳しくなった持ち場には、このシューナ様が駆けつけてあげるから安心してね~! 私と霊獣たちが居れば、軽く兵隊1万人分の働きしちゃうんだから。ど~んと任せて!」
シューナちゃんも、小っちゃいのに本当に頼もしいな。私も見習わなきゃね。
「よし、全軍出撃だ! 軍議での取り決め通りの場所に陣を
リーネオさんの号令で全ての味方の兵隊が動き出した。私は出来るだけ多くの兵隊たちに声を掛けた。どうか無事に帰ってこれますようにと心を込めて・・・。
上位互換を手に入れたから私はお払い箱?《お金持ちの国の【戦巫女】をクビになったけど直ぐに再就職出来ました》 ぶっちゃけマシン @nabe4645
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。上位互換を手に入れたから私はお払い箱?《お金持ちの国の【戦巫女】をクビになったけど直ぐに再就職出来ました》の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます