第13話

そして壁が白い明るい部屋に来た。隣にはティタルちゃんも居る。よし成功だよ。


「ああ、やっぱり来たわね。いきなり権利を一回使っちゃったわね。御免なさい。」


声がする方を見ると大きなテーブルの横、椅子に座る女神ユマさんが居る。こちらに手招きするので近寄ってそばの椅子に座る。ティタルちゃんは私のひざの上だよ。


「あらあら、すっかり仲良しね。ティタルちゃん、こんにちわ。」


「うん! こんにちわ。」


女神ユマさんにも物怖ものおじせずにご挨拶あいさつするティタルちゃん。偉いね♪ 私は「お姉ちゃんバカ」になって喜んだ。さて、本題にはいりますか。


「ここに来たのは、この子のことで伺いたいことが沢山あるからなんです。単刀直入に言いますけど、ティタルちゃんを転生させた神様を知ってらっしゃいますか?」


「・・・。ええ、とても良く知ってるわ。 はい、貴方あなた出てらっしゃい!」


女神ユマさんが手をパンとたたく。すると、彼女の横にポンと言う音と共に大きな男の人が出現した。床に正座してるね。


「え~、私、惑星『ヨーネキン』の神『エイフバ』です。女神『ユマラタル』の夫でもありますです。」


「あー! かみさまのおじちゃんだ。」


・・・。この人が「ダメンズ」旦那だんな神だな。30歳くらいだ。端正たんせいな顔立ちで教科書で見たギリシャ彫刻ちょうこくみたいな立派な体つき。見た目は結構良いけど、なんか態度が変だ。挙動不審ですよ。


「まずティタルちゃんはどうして死んじゃったのですか? まさかエイフバさんのミスですか?」


「いやいや、滅相めっそうもない。病死ですよ。ル、いやティタルちゃんは心臓が悪かったのです。」


なるほど。チャラ神「コッタ」君ほど悪質ではないのかな。でも油断は出来ないな。


「この子の転生先はどうして、この世界になったのですか? 転生先を選択出来ることは説明されて無かったみたいですけど?」


「ああ、『転生申請書』は何枚も書いたんだけど、何故かここのしか通らなかったんだ。」


ん? チャラ神「コッタ」みたいな言い訳を始めたぞ。やっぱりおかしいな。と私が思った瞬間、ユマさんがパチンと指を鳴らした。するとポンッと若くてカッコいい男性が出現する。ビシッとスーツを着こなして、手に何枚か書類を持っているよ。


「ここで証人を喚問かんもんします。神『アリステイネン』証言をどうぞ。」


「あ、部下『アリステ』じゃないか! お前、まさか密告したのか!」


「被告は静粛せいしゅくに!」


「ゴホン! では、問題の『転生申請書』ですが、女神ユマ様に提出されたものは完璧に作成されていましたが、他のものは全く通す気の無い出鱈目でたらめでした。提出先の神々から苦情が来ております。」


なんか裁判みたいになって来たぞ? 何か、ここの書類だけを通したかったみたいだね。ん? そう言えば!


「あのスイマセン。ティタルちゃんは『【戦巫女いくさみこ】は絶対にやらなくちゃいけない』と言われたそうです。ね? ティタルちゃん。」


「うん! そうだよ!」


「そうですよね。なにせ【戦巫女いくさみこ】のスキルを選べるのは、貴方あなたの提携している世界の中では、私の世界『タッサ』だけですものね。 でも不思議ね? どうして、そんなに【戦巫女いくさみこ】にこだわるのかしら?」


「いや、そりゃ王様のお嫁さんになれるし国民にも愛されるし、幸せになれるからに決まってるじゃないか?」


なんか、旦那だんな神エイフバさんの供述きょうじゅつがあやふやになって来たよ。女神ユマさんがまた指をパチンと鳴らした。すると旦那神の部下アリステさんがスマホのようなものを提出する。


「私の世界にも女性が幸せになれるスキルは他に一杯あります。【聖女】とか【霊獣使い】とか、色々・・・。でも貴方が【戦巫女いくさみこ】にこだわる理由はこれじゃないかしら?」


そのスマホの画面にはガチャゲーのキャラクターが写ってる。可愛らしい女の子のイラスト、長い薄茶っぽい金髪にぱっちりと大きい紫の瞳、10代の少女をデフォルメしてえがかれているからティタルちゃんにそっくりだ。そして名前が「USSR」【戦巫女いくさみこ】「ルル」だってえっ!


「このキャラを引き当てた日のエイフバ様は浮かれ過ぎで全く仕事が手に付かずゲームばかりしておりました。元々、仕事を良くサボ、休憩きゅうけいが多い方なので最近は全く業務が進みませんでした。」


「そんな中、『転生案件』が一つ来たそうね? このゲームキャラに生き写しのティタルちゃんがやって来た時の貴方の喜びようはもう凄かったと・・・。 ねえ、アリステ君。」


「はい。全ての業務を後回しにして、ティタル嬢の転生書類の作成だけに没頭しておりました。それはもうあんなに熱心に仕事をするエイフバ様は初めて拝見致しました。」


「いや、だって幼くして病に倒れたルル、いやティタルちゃんには幸せな『転生人生』を送って貰いたいじゃないか? 私だってひとの親だ。それはもう必死だったさ!」


あ、ちゃんと小さい子の幸せは願ってたのか。やっぱり一応は父親らしいとこもあるんだね。と、私が思ったら部下アリステさんがまた何か書類を提出した。


「ふうん、『優遇スキル増加特別申請書』ねえ。こんな難しい書類、良く作成したものね。私でも数回しか通したことないわ。で、こうまで頑張ってティタルちゃんに付けてあげた『優遇スキル』がこれですか? りんさん、見てコレ!」


女神ユマさんが私に書類を渡す。それに目を通した私はビックリした。【戦巫女いくさみこ】と【翻訳:通常】、これは良いよ。けど、【阿修羅あしゅらの舞】とか【紅蓮の舞】って、ナニこれ! ゴリッゴリの戦闘系スキルばっかじゃん!


「あの・・・。こんなつるぎ扇子せんすを持って踊らなきゃならないスキルを小さなティタルちゃんが出来ると思いますか?」


「次のいくさまであと一月ひとつきあるんだよね? 今からお稽古けいこしたら大丈夫だよ。イケる、イケる!」


「とうとう本音が出たわね!」「ズッパーン!」


女神ユマさんの【神を叩けるハリセン】が炸裂さくれつしたよ。ま、当然だね。旦那だんな神エイフバは後頭部から煙を上げてる。けど、私の怒りはこんなくらいじゃ収まらないからね。


「他にも証拠はがってるのよ。ティタルちゃんの一生分を録画出来る神機しんきドローン。あと勝手に私の世界で召喚の儀式を発動した記録も残ってたしね。ねえ貴方あなた、一体何がしたかったのかしら?」


「・・・。だって、現実リアルの「USSR」【戦巫女いくさみこ】「ルル」たんだよ?戦闘スキルをバンバン使っていくさで無双してるとこ見たくない? いや見たいでしょ。しかも神機ドローンで動画撮ってさ、神界しんかいネットの動画サイトにアップしたら絶対、バズるって!」


これはダメな大人だ。こんなこと許せない。計算高いだけにチャラ神「コッタ」より悪質だよ。こんな小さな女の子を異世界に転生させて戦争三昧ざんまいの人生を送らせようとするなんて! 絶対に許せない!


「有罪ですね、この人。」


「そうね、こんな主人で本当に御免なさい。と言う訳でこれを。」


女神ユマさんが【神を叩けるハリセン】を私に手渡す。判決も有罪。奥さんも公認。お覚悟です、ダメンズ旦那だんな神『エイフバ』めぇ!


「いや、ちょっと待ってくれ。それならティタルちゃんがやるのが筋だろう?」


「ダメです。それではただの『ご褒美ほうび』になる危険性もあります。りんさんの保護者としての代行を認めます。」


ダメ旦那神エイフバの抗弁こうべんはユマさんに一蹴いっしゅうされちゃった。では!


「これはティタルちゃんを利用した罰! 小さな子供をだますな!」「ズッパーン!」


「これはティタルちゃんを勝手に【戦巫女いくさみこ】にした罰! 小さな子供を戦争に巻き込むな!」「ズッバーン!」


「これは自分の欲望のために沢山の人に迷惑を掛けた罰! 仕事中はスマホゲーム止めろ!」「ズッバアァーン!」


ダメ旦那神は頭から盛大に白煙を上げてるよ。体が半分くらい床にんじゃった。まあ、こんなくらいじゃあ済まないと思うけど・・・。


「あの後のことは任せてね。あとティタルちゃんの心臓は完璧よ。この人、よっぽどこの子の容姿を変えたくなかったみたい。その分のポイントを全部、健康面に振ってたから今度は100歳まで生きられると思うわ。」


「そうですか。それを聞いて安心しました。」


女神ユマさんの話に私は安心した。そこは気になってたんだよね。


「今回使ってしまった権限は戻せないの。御免なさい。だから私に直接会えるのは後、二回ね。その代わり、これを特別にあげるわ。私と交信出来るアイテムよ。それじゃあ、またね。」


女神ユマさんがはそう言って水晶クリスタルで出来た薄い板みたいなのをくれた。三人の神様たちがけてゆく。


「はい、貴方あなた。立って下さい。これからは1時間に一回サボってないか職場に電話しますからね。」


「よろしくお願い致します。女神ユマ様。」


「あ! 部下アリステ、勝手に決めるな! 上司は僕なんだか・・・。」


三人の会話がそこまで聞こえて来たところで姿が完全に消えちゃった。

もう厄介やっかいごとは無いだろうね。本当、りだよ。


次の瞬間、私とティタルちゃんは目覚めた。目の前にクアーエさんが居た。

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