⑤再会
コンビニで買い物を済ませた私は、帰路についていた。
「あ~、暑い!!」
コンビニの店内はエアコンがかかって寒いくらいだったにも関わらず、ひとたび外に出るとむわっと全身に熱がまとわりついてくる。
私は不快な気持ちを晴らすように、わざと大きな声で文句を言った。
遠くのほうに目を遣ると、アスファルトを反射する熱が陽炎を作っている。
早く帰ろう。
そう思って、少し歩調を速めたその時だった。
「……奈緒?」
後ろから聞き覚えのある声がした。
私はゆっくりと振り向き、その声の主を確認する。
そこには今日の空のような青い色のワンピースを着た、一人の女性が立っていた。
「……香織!?」
その女性は汗で額に張り付いた前髪に手を遣り、そっと整える仕草をした。
そして、
「久しぶりだね」
はにかむような笑顔で、そう言った。
あぁ、香織だ。
私はその仕草を見て、改めてそう思った。
と同時に、高校生だった頃の彼女の姿が脳裏に浮かぶ。
短めのボブヘアに可愛らしい童顔。
体も小柄で化粧っけもなかったため、高校3年生になってもよく中学生と間違われていた。
今、私の目の前にいる香織は、長い髪を後ろでまとめている。
淡いピンクの口紅が、彼女の白い肌を引き立たせていた。
「うん、久しぶり……。雰囲気変わったね」
「そうかな……? 奈緒も、大人っぽくなったね。
……元気だった?」
香織のその何気ない質問に、うまく言葉がでなかった。
もっとちゃんとした格好で出てくるべきだった、ふとそう思った。
「……うーん、まぁぼちぼちかな。香織は?」
「元気だよ。奈緒、こっち帰ってきてたんだ。私、家帰るとこなんだけど。よかったら一緒に帰らない? 久しぶりだし、話したいな」
「……あぁ、うん。いいよ。私もお遣いの帰りだし。母さんがトイレットペーパーと……プリンをご所望なので」
「あはは、奈緒のお母さん、相変わらずだね」
断る理由も特に思いつかず、私は香織と並んで歩きだした。
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