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第11話『愛と呼べない夜』5/5

 0時を過ぎた頃合。


 人ひとりの中に含まれる血液の半分はたれ流されただろうか。血の海の中に彼女は息絶えていた。


『溺愛』は死んだ。自らの愛を誓うために。

 彼の命を救うために、舌を噛み切ったのだ。




 一方『怠惰』は『溺愛』の名を呼べぬまま、冷たくぶら下がる。

『溺愛』からの贈り物であるネクタイを絞めたまま。


 彼女の死を見届けるまでの時間に事切れてしまった。

 一度吊ってしまえば手が届かずに、ネクタイを解くことができないことを伝えるのを忘れてしまったが、まぁいいだろう。

 いずれにしろ、結果は同じ。

 彼らがどう動き、どう足掻き、何を選び、何を考えたところで、『肉薄』の思い描いた筋道からは逃れることは出来なかったのだから。


 これを読んだ諸君。

 ゆめゆめ、自らの名に気をつけることだ。

『字重なり』は殺処分となる。

 弱い方は殺され、蹂躙される。それは致し方のないこと。

 TRICK ROOMの掟。それが『十字』様の意志である。



 留置所の中の灯りは絶えずともり、彼らを照らし続けた。朝の光の代わりとはなるまいか。

 夜を越えられず、無念に散った。



『D』の字重なり、『溺愛』。

『S』の字重なり、『怠惰』。

 我は『十字』の忠実なる臣下。『肉薄』。



 弱者は震えて眠れ。

 私が罰を与える。名を恥じて、命を恥じろ。』









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