第3話 三

「お疲れさまでした!」

「お疲れ!」

 そんな集中力があるのかないのか分からない俺がそいつと出会ったのは、俺が入社して3年目の頃。

 それはちょうど葉桜がきれいな頃だが、俺はそういった風流な気持ちは持ち合わせていない。

 ただ、

『今年は仕事が忙しくて、花見にも行けなかったな』

 そんなことをぼんやり考えていた頃だ。

 その女は新入社員だったのだろう。みんなに笑顔を振りまき、夕暮れのオフィスを家路へと急ぐ。

 ……その時、その女を見た直後は、俺があんな感情になるなんて、思いもしなかった。

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