第3話 防がないのか? と やり返さないのか?

2.防がないのか?


 平安末期には、海賊が出現し、楯板で武装した舟を持っている。

 武家も当然、同程度以上の武装を船に施すだろう。

 舟戦は、矢の戦になる。遠間から雨のように矢が降ってくるのに、武士は鎧で武装しつつも、水夫は丸腰の生身同然で舟を漕いでいるのか?

 これじゃ、義経に狙われなくても流れ矢で死んでしまう。

 当然、楯板で身を守るだろう。

 これでは水夫を狙っても、楯板に当たるだけである。




3.やり返さないのか?


 もし源氏が、船上の水夫だけを狙い、楯板をかわして射貫くという超常的なスナイプ能力を持っていたとして。

 やられた平家側はやり返さないのだろうか。

 この疑問に対して、「平家はあくまで戦のルールを守った」という論旨の人が時折出てくる。

 だが、そんな記録はない(そもそも壇ノ浦の戦いはまともな記録が残っていない)し、平安末期の戦のルールなど確認されていない。


 日本の戦で有名な、戦闘の最初に「やあやあ我こそは」と名乗り上げて一騎打ちするという習慣なども、この時代の史料上は確認されていない。

 というか軍記物語にすらそんなシーンは出てこない。ただのイメージである。

 そも、平家は南都の大規模焼き討ちなど、非戦闘員を巻き込んだ戦闘行為を行っている。

 平家はイメージでルールを守った戦闘を行ったことにされ、義経はイメージで卑怯な戦闘を行ったことにされている。


 イメージ怖い。


「平安末期の戦は、非戦闘員を狙わないというルールがありました。義経がそれを破ったのです」とか、見てきたように断言する人がたくさんいるけれど、そんな史料はなく夢想である。

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