第2話 当たるのか?

1.当たるのか?


 鎌倉時代の一般的な軍用船は刳り舟(くりぶね)といって、丸太を二つに割って中身をくりぬいた構造の舟だったときく(一部大型船もありますが)。

 刳り舟は、船上に渡した梁状の板の上に水夫が座って漕ぐ。この水夫を狙うわけだが。

 揺れる海の上である。自分の舟も相手の舟も揺れに揺れている。海風もビュウビュウ吹いているだろう。

 そこから、小さな刳り舟の上にいる武士をよけて、わざわざ水夫を狙うことは可能なのか。

 狙って水夫を撃てるほど近付いたら、敵の武士から自分が撃たれてしまう。

 かといって離れてしまえば(普通舟戦ならそうするだろうけど)、滅多矢鱈に撃つしかなく、水夫など狙えない。

 和弓はスナイパーライフルではないし、海の上は静かな射撃場ではない。

 矢は山なりにしか飛ばないし、相手も射てくるからじっくり狙いを定める余裕はないし、風が吹けば矢は流されるままに飛んでいく。

 これで「水夫を狙え」と言われて、実行できるものだろうかというとはなはだ疑問である。

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