【2】悪臭勇者!

 本日ケッツァーは猛獣に襲われて目覚める事になる。

 最強すぎるケッツァーは寝る場所を選ばないので、猛獣地帯で寝てしまったのである。


『くそっ!寝起き最悪だ!

 俺を襲った罪は俺に食われる事で許してやろう。』


 3mはある猛獣が僅か2秒で肉になる。


『味は、まぁまぁ。

 んな事より、いい加減頭が痒い!そして臭い!!』


 ぶつぶつと独り言を言っていたとき、依頼書更新の知らせがデータで届く。


 《依頼書》

 ここより2㎞の地点の村にブラックコートが出現。

 早急に排除されたし。


『ふっざけんなよ!!

 ブラックコートとか絶対嫌なんですけど!!

 だってこれ、ただのうんこですもん!

 黒いうんこの排除とか自分たちで、やりなさいよ!!

 今でも十分臭いですよ俺!

 何で村のど真ん中で糞垂れてるんですか!?

 あの鳥、本当に腹立つわー!

 ってかさぁ、そもそも勇者の仕事と違いませんかね?』


 ケッツァーが荒れるのも無理はない。

 このデータ送信システムは、データを受けた者は完遂しないと次のデータが送られない。

 簡単に言えば、強制的に糞浚いを強いられているのである。

 勇者が糞浚いに当たるのは、極めて稀であるが……ケッツァーは奇跡的に2回引いている。

 流石ケッツァー。


『あーもう、行くよ!!行けばいいんでしょ!?

 この報酬は高額に吊り上げよう。

 じゃねーと割に合わねーだろうがよ!!』


 村に到着したケッツァーの目の前には5mの巨大うんこ。

 村人は全員で家を密閉しガスマスクを装着し閉じ籠っている。

 このブラックコートの臭いは凄まじい。

 草木が枯れる程の悪臭である。

 そんな中ケッツァーはガスマスクなしのノーマル状態で登場していることに、村人は目ん玉飛び出るレベルで驚いている。


『消せばいいだけだし、さっさと終わらせよう。

 シュネー・アイスからのローエン・フランメ!』


 ケッツァーは何をしたかというと、氷漬けにした後、燃え盛る炎で完全に消滅させたのである。

 勿論、臭いが充満することなく。


『はい終了。データ送信っと。

 あーあ、それにしても俺の臭いが、もう汚物の臭いだ……

 つーか、何であいつら出てこねーんだよ!

 おい!!村長!出てこい!!』


 ガスマスクを装着した村長がケッツァーの目の前には現れる。ガスマスクを外さない理由は、どうやら俺らしい。


『あのさぁ消してあげたんだから礼を尽くせよ!

 んで、それ!

 外せないなら、もう報酬とか要らねーから風呂入らせろや!!』


『シュコー。

 その前に外で水浴びして頂けるのであれば、どうぞ。

 シュコー。』


『シュコシュコうるせーよ!

 因みに、うんこから出た黄金はお前らで好きに使え。

 俺は糞にまで助けられたくない。水浴びもしたし、風呂を借りるぞ!

 今回の任務は最悪だが、まぁ許そう。

 だって4日ぶりの風呂だし汚物臭からも解放されたし……

 ああ、幸せのお湯だぁー。』


 任務完了

 本日のケッツァー⇒糞浚いと体の清め。

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