職業勇者はボランティアではありません!

メバル

【1】最低勇者

< 勇者 >

 それは慈悲深く悪を許さぬ存在。

 魔王討伐に全力を注ぐ正義の塊のような存在。

 武勇に優れ頭も回り、進んで棘の道に進んでいく存在。


 しかし、この勇者は違った……


 勇者の名は《 ケッツァー 》

 最強と謳われるも最低と罵られる男。

 彼は助けた相手から平気で金を取る勇者の風上にも置けぬ異端児である。


<ケッツァー曰く>

『俺はボランティアで勇者やってねぇから。

 助けたら貰う。助けられたら払う。

 これ、世の習わしっしょ!魔王討伐?

 討伐したら食いぶちに困るからなぁ……迷う!!』


 この日もモンスターに襲われている村を救助してほしいと依頼が入る。

 ケッツァーは快く引き受け、モンスターを何時ものように秒殺で倒す。

 村の村長からお礼を言われ、村民達にも流石は名高きケッツァー様だと謳われるが……


『は?いやいや、礼はいいから依頼料を支払ってもらえますかね?

 自分、これを生業にしてるもんで。』


『え?依頼料?

 今までの勇者様は皆様、お金など要求されませんでしたけど。』


『あーそうなの?へー。

 じゃあ、そいつらは趣味とかでやってるんじゃね?

 俺はさっきも言ったけど生業にしてるの。

 これで、おまんま食べてるの!わかる?』


『そんな……この村には差し出せる物なんて何も……』


『はぁ?じゃあ、何で頼んだの?無一文で頼んだの?

 お前ら舐めてんの?払えないなら対価を払いなさい。』


 そんなゲスい会話が続いている時にケッツァーは1人の女性から声をかけられる。


『貴方は勇者の風上にも置けない人ですね!』


『あのさぁ、君たちもご飯食べるときにお金払うよね?

 それと同じ事を求めて何が悪いのよ。

 しかも、こちとら命懸けでモンスター退治してるんだよ?』


『では、私の体で払いますよ!』


『いらねーよ!ブス!受け付けるのは金か食料のみだ!』


『ブス!?紳士の欠片も無いなんて最低の勇者ですね!!』


 村長はしぶしぶ食料と300ラルを支払うと村民一同から最低コールが巻き起こる。


『最低勇者!最低ケッツァー!最低勇者!最低ケッツァー!!』


『大歓声ありがとうございます。では、またの依頼をお待ちしておりまーす。』


 ちなみに雑魚モンスターの核でも売ると1,000ラルになるので、この世界での300ラルという金額は子供のお小遣い以下の金額である。

 ケッツァーは確かに依頼料を巻き上げるが、村が崩壊しない程度に留めている所もあり、僅かながら良心的な面もあったのである。


『食料も一食分、金は300ラル……最低なのは、この状況ですやん……

 今日も狩をして野宿確定だー!

 もう3日も風呂入ってないんですけどー!!

 本当に本当にくそファッキン!!』


 今日も勇者ケッツァーは汚名を注ぎ、野宿をし、体も汚れていくのであった。

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