第6話

 ガルディア帝国は新世界暦739年に建国された。

 最初は小さな共同体、都市国家だった。やがて隣国との併合を繰り返し、中央大陸北部中央部を支配するまでに至った。最初の頃は内紛が絶えなかったが786年に時の皇帝が「我が国家は国民国家共同体であり万民協和だ」と声明を出してからは見違えるように道徳心が高まりさらに国民として団結力が高まった。やがてそれは国是になった。そして2989年遂に仇敵との出会いがある。エストリア王国である。エストリア王国の成り立ちはまず中央大陸から西へ行きアルヴィス大陸を西へ行ったアトランティス大陸のアトランティス王国からの移民だった。

 まず、移民団はアルヴィス大陸に着いたそこで専制君主制のアルヴィス王国を建国する。しかし2470年アルヴィス王国で革命が起こる、そこで王族とそれに従う一部は大陸から追い出された。そして東へ行き中央大陸西部へとたどり着いた。そこで彼らは決意する、二度と倒されない体制を作ろうとそして立憲君主制のエストリア王国が建国された。エストリア王国はその経済力を背景にした軍事力で次々と隣国を併合した。そして2989年ガルディア帝国と国境を接するようになってからは、対立の日々だった。戦争も何度かした。他の国は中央大陸は戦争大陸だと揶揄した。こうして今に至る。


 ガルディア帝国参謀本部。

 「現在までの戦況は、エストリア王国軍によりサーベシア自治共和国内に配備されていたライトニング無人機多数破壊さらに同国上空にて哨戒配備中であった飛行巡洋艦アガアムが撃沈さらにエストリア王国軍地上部隊がブリーング州に侵入、我が陸上部隊と戦闘が続いております、さらにサーベシア人のダークエルフ解放戦線などの武装組織も参戦しております」ひとしきり参謀が話すとカーネル参謀総長が「よし、第1艦隊と第2艦隊を救援に向かわせよう、まだこの参謀本部も混乱した状況にある。より精度の高い情報と情報収集を怠るな」

「はっ!」とショーズ情報参謀が敬礼して別の部屋に行く。


 ガルディア帝国ブライト州上空。

 ガルディア帝国航空宇宙軍第1飛行艦隊艦隊司令官フェデラー中将はこう訓示した。

 「諸君、我々は重大な危機に直面したそれは民主主義の危機であり我々の共同体の危機でもある、諸君らはその持てる能力をもってして敵の撃滅にあたる、諸君らは我々の共同体、故郷を守るのだ、諸君らの奮戦を期待する」

「さて…早速だが現在の状況は?ああ…住民の避難はすんでいるのか?」フェデラー中将が言う。

 参謀は「はっ、今後戦闘地域になりうる場所も含めて避難命令が発令されております」

 「よろしい、では我々は敵の排除にあたる航海長針路をエリドゥ州へ向けろ」

航海長は「了解しました。針路240、両舷前進全速」こうしてガルディア帝国航空宇宙軍第1、第2艦隊がブリーング州へ向かう。


 その頃エストリア王国軍第38任務部隊司令官カザン元帥がサーベシア自治共和国首都サーベシアに入っていた。そこでダークエルフ解放戦線の面々と面会が持たれた。

 「貴方方が軍事行動を起こしてくれて感謝しております」ダークエルフ解放戦線リーダー、スキュアが言う。しかしカザン元帥は彼等を踏みにじる言葉で答えた。

 「ふん、我々が欲しいのは地下資源だ、ダークエルフなど亜人などたとえ労働力が安くても欲しくもない」

スキュアは「何故です?貴方達は民主主義に基づいて行動しているのでは無いですか?」

 「民主主義など建前に過ぎない我々はグローバリストだ安く労働力を搾取し我々が富を得る、今回の紛争も地下資源の利権のためだ」

「そんな…それじゃあ我々の独立はどうなるんですか?!」

「無論、独立させる、しかし地下資源の利権は我々がもらうそれだけの事だ」

スキュアは殺意にも似た感情を持ったが此処で癇癪を起こせばどんな反応に返ってくるか分からないぐっと怒りを堪え「どんな理由があろうとも独立だけは約束してもらいますよ」

カザン元帥は「無論、独立だけはくれてやる、独立だけはな」そう言い残し去っていった。

 ダークエルフ解放戦線のメンバーは「これじゃ帝国領だった時より悪いかもしれない」

「ああ、帝国はまだ万民協和を唱えていたからな」

スキュアは「だが、もう後戻りはできないなんとしても独立だけでも達成する、その他諸問題は後回しだ」苦虫を噛み潰したように吐き捨てた。

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