第4話

 4998年3月9日、ヘリヤ・マクナは北極海に位置している島国ミストランド王国で生まれた。彼女は生まれながらにして身体的特徴があった。つまり赤眼と青眼のオッドアイ、白系エルフの特徴である銀髪。これらは彼女を不幸にも幸にもした。

 ヘリヤは3歳の時両親が離婚し母親に引き取られ母親の生まれ故郷であるエストリア王国に移住した。

 エストリア王国ではエルフは差別されていた。小学校に入るといじめが待っていた。いつも上履きを隠されたりランドセルにゴミを入れられたりしていた。そして泣きながら家に帰っていた。そんな彼女を元気づけていたのはライトニングの飛行だった。ヘリヤの家は空軍基地の近くにあり、何かあるとライトニングの訓練飛行を基地のフェンス越しに見ていた。

 あんな人型の機械が自由に空を飛んでいる、いつか自分もあんな風に空を飛びたい、そう思っていた。そして小学校卒業という時、進路は?と聞かれると空軍幼年学校に行きたいと言った。そして望みどおり空軍幼年学校に入学した。

 それからの毎日は楽しくもあり嫌でもあった。まず差別これは小学校よりはマシだがやはりあった。しかしそれを上回る楽しさがあった。ライトニングの操縦訓練これは、何物にも代え難い貴重な体験でヘリヤに生きる活力を与えた。

 ヘリヤは学業でも操縦訓練でもトップだった。

 幼年学校卒業後そのまま士官学校へ特待生として入学した。

 入学してからというものやはり、その才能で学業も操縦訓練もトップだった。それを妬んで嫌がらせしてくる連中など眼中になかった。

 そんな時だった隣国ガルディア帝国サーベシア自治共和国で大規模なデモが起こった。きっかけはガルディア帝国がサーベシア自治共和国の議員を罷免したことだった。ガルディア帝国としては仮想敵国エストリア王国と内通している議員を辞めさせるのは当然のことだったが、独立派は民主主義の破壊としてデモを行った。デモはすぐ沈静化すると思われたがエストリア王国はこの機を逃さなかった。すぐさま独立派に資金援助しさらに極秘の内に武器弾薬を与えた。独立派は武装して帝国軍との間で戦闘になった。エストリア王国は独立派支援名目で武力介入を試みたがガルディア帝国はこの事態を直ちに国際連盟に提訴した。エストリア王国がこの事態を泥沼化させているとした。がエストリア王国は反ガルディアの国を買収し逆に民主主義の破壊者として非難した。このお互い一歩も譲らない泥沼の非難合戦はヘリヤ・マクナにとってはさして興味がある話ではなかった。問題は自分が実戦投入される可能性があることだった。士官学校の教官たちもそれを仄めかしていたし何より自分の能力がどの程度あるか気になっていた。しかし卒業までその機会は無かった。ヘリヤは残念がったが仮にも敵国とは言え主権国家に武力介入は国際社会の批判を浴びると教官は言った。こうして数年が過ぎ5220年11月7日になりガルディアに侵攻するという日にヘリヤ・マクナ中尉は栄えある第一艦隊旗艦宇宙空母キング・ガーナードに転属になった。ヘリヤはようやく自分の腕を試せる機会が巡ってきたと喜んだ。行く先は敵国ガルディア帝国、サーベシア自治共和国独立の為という名目だが実際は現地にある資源だった。ここにガルディア帝国対エストリア王国の戦争が始まろうとしていた。

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