第59話 邁進「マイシン」


 春の桜が咲き始め、心地よい風が流れる。唯斗と莉奈はついに高校の卒業を迎えていた。


 その日は2人の高校の卒業式だった。この2年で2人は、いや快斗と美奈も含め兄弟、姉妹の4人とも大きく変わった。


 お互いを知り、お互いを信じ、お互いのことを想ってきたからこそこのような関係になれたのだろう。唯斗と莉奈、そして快斗と美奈、共に少しずつ変わっていく毎日に合わなかった歩幅もあっていった。



 卒業式が終わり、唯斗や莉奈は桃香たちやクラスメイトと話していた。



「唯斗ー、少しだけ2人きりで話したい 」


「おー桃香、いいけど場所変えるか 」


「うんありがとう! 」



 2人は屋上へと向かった。屋上に出るドアを開けると校庭に咲く綺麗な桜が一面に見える。



「うわぁ綺麗だねー 」


「うん、本当に綺麗だな 」


「私も唯斗もついに卒業だねー 」


「早かったなぁー 」


「うん本当にねー 」


「本当にいろいろなことがあり過ぎて、逆に思い出せないよー 」


「本当にそうだな 」


「唯斗は私とこれからもずっと友達でいてね 」


「うん、もちろんだよ 」


「ありがとうねー 」


「大学も目指していたところにしっかりと合格できてよかったな 」


「うんありがとうね、本当に最後まで頑張ってよかったよー 」


「本当にずっと頑張ってたもんな 」


「ううん、唯斗たちが応援してくれたからだよ! それに唯斗もモデルやるんだよね? 」


「うんそうだよ、おれも頑張るよ 」


「うんうん、唯斗なら絶対すごいモデルになれるよ 」


「兄さんを超えれるように頑張るよ 」


「うん、頑張ってね!! 」


「ありがとう 」


「って、莉奈と付き合えて良かったね! 」


「うん、よかったよ 」



 この時、桃香は笑顔なのに涙が目から流れずにはいられなかった。こぼれ落ちそうになる涙を堪えて桃香は必死に笑顔をつくる。



「莉奈のこと幸せにしてあげてね 」


「当たり前だよ! 」


「うん! 唯斗と莉奈ならきっと大丈夫だね! 」



 桃香は緩む涙腺をきつく、きつく締める。


 それでも、それでも……



「あっ!! やっぱりこんなところにいたー! 」


「ん……?? 」


「唯斗せんぱいー、写真撮るって約束したじゃないですかーー! 」


「あ、ごめんごめん忘れてた 」


「んもーー! って桃香さんと同じだったんですねー 」


「うん、唯斗行ってあげてー、私は大丈夫だから 」


「そうか、桃香いろいろありがとうな! 」


「いえいえこちらこそです! 」



 唯斗は桃香を1人屋上に残して、結衣と共に下に降りていった。



 唯斗がいなくなった途端、1人涙を溢す。気持ちの良い春風と共に涙が流れる。


 それでも桃香は笑顔だった。



「ここにいたんだ 」


「あっ陸だ 」


「唯斗といたんだね 」


「うんそうだよー 」


「莉奈と唯斗幸せになれるといいね 」


「うん、もちろん私もそう願ってるよ! 」


「恋ってうまくいかないんだな 」


「うん? 急にどうしたの? 」


「僕も痛いほど、桃香の気持ちわかるよ 」


「え、うん? 」


「桜綺麗だね 」


「うんそうだね! 」



 2人は笑顔で校庭に散る生徒たちを見ながら、桜を目にした。


 


 その頃、唯斗は結衣の無茶ぶりに答えながらも、写真やいろいろと頼みを聞いてあげていた。


 それでも唯斗は嫌な顔せず、結衣と最後の時間を過ごしていた。


 そして、だんだんと生徒たちも帰り始めた。唯斗も莉奈と最後の下校をし始めた。



「この学校から帰るのも今日で最後だね 」


「うん、ついに最後だな 」


「長かったようで、本当に短かったなー 」


「うん、そうだな 」


「桃香たちに出会えてよかった。そして本当に唯斗に出会えてよかった 」


「おれはこれからもずっと莉奈のことが好きだよ、これからもずっとおれと一緒にいてくれ 」


「うん!! こちらこそ!! 」



 こうして2人は高校を卒業し、唯斗は兄を超えるモデルに。莉奈は大学進学へ。快斗と美奈は父親の仕事を継ぐために勉強をして会社に。それぞれの進路に向かって再び歩き出したのだった。


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