第58話 幸福「コウフク」
カーテンの隙間からふいに当たる日差し。もうお昼過ぎの時刻。冬休み最後の日も唯斗はいつも通り遅めの起床だ。
「おはよう唯斗 」
「……おはようって、お前何してんだよ! 」
唯斗は何かがふと頭によぎって、思い出す。今年の初夢に今のようなこんな夢を見た。それが現実になった。あの時では考えられなかっただろう。変わっていった結果がこうしてしっかりと現実になって現れている。これも一つ幸せな証拠であるが。
「夜中に起きちゃって寝れなかったから、ベット入っちゃったー 」
「いや、お前なぁー 」
「いいじゃーん付き合ってあるんだからぁ 」
「まあそうだけどさー 」
「ねー唯斗ぎゅーしてー 」
「なんだよ朝からー 」
「いいじゃーんしてよーー 」
「どうしたんだよ 」
「もーう、なんでしてくれないのー 」
「眠いもんー 」
「ほんと冷めてるよねー、唯斗はー 」
「おい!! なんだよいきなりー 」
「唯斗がしてくれないから、私からいくもんね! 」
莉奈はベットの上で唯斗の懐に飛び込んだ。唯斗は朝から照れを隠せないでいた。莉奈も幸せそうな顔を溢していた。
「唯斗はほんとツンデレだよねー 」
「それはお前もだろ莉奈 」
「私は違うもーんねー 」
「ああ、そうですかー 」
2人はそんな感じはあるが、イチャイチャをやめなかった。数十分間2人の世界で幸せな時を過ごすと、2人で1階に降りていった。
「あら、2人ともやっと起きてきたの〜 」
「お姉ちゃんおはようー 」
「美奈さんおはよう 」
「2人とも遅いよ〜 」
「私は起きてたけど、唯斗が全然起きないのー 」
「なんだよそれ、まあそうだけどー 」
「あら一緒に寝てたの〜? 」
「…… 」
「…… 」
「2人はラブラブだね〜〜 」
「もうお姉ちゃんからかうのはやめてってばーー 」
「あははは 」
莉奈はさっきのベットの上のイチャイチャしていた時のことを思い出して、顔が真っ赤に照れ上がってしまっていた。
「美奈さん、兄さんはー? 」
「多分自分の部屋にいると思うよ〜 」
「なにかやってるんですかね? 」
「お勉強って言ってから行かない方がいいかもね〜 」
「兄さんが勉強か 」
「うん〜 」
「そーっとしていた方がいいかもですね 」
まだこの時、唯斗と莉奈は快斗が姉妹の父親の会社を継ぐことは知らない。美奈は全てを聞いていたがまだ話すことはなかった。
しっかりと快斗自身本人が勉強をして、それなりにその立場に相応しくなるまで言わないと決めていた。それが快斗なりの本気の姿勢なのだろう。
そんな4人は今までよりも素の姿を見せるようになり、より良い関係を築いていっていた。
そしてそんな4人の幸せな日々も過ぎていき、唯斗と莉奈は高校卒業を近くに迎えていた。
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