第41話 実感「ジッカン」
7月に入って暑さは日に日に増すばかりである。日は経ちそんな7月も終わりに差し掛かり、唯斗たちは夏休みに入った。
快斗の休みが取れた8月の初めの土日に一年前と同じように別荘に4人で行くことになっていた。
その日こと……
4人とって、昨年のこの場所での懐かしい夏の思い出。一年越しにこの別荘にまたやってきた。
「やっぱりすごいな 」
「1年ぶりだな 」
快斗と唯斗は2回目でありながらも、やはり驚く。こんなにも広くて青く、綺麗な海を前に建つ別荘。別荘からのオーシャンビューの眺めは最高という言葉そのものだろう。
莉奈はすぐに着替えて海に飛び出そうとする。
「海入りにいこうー!」
「そうだね、せっかくだもんね〜 」
莉奈と美奈も、夏らしいテンションの上がる楽しい時間そのものだ。
「唯斗ーはやく行くよー 」
「おーい、まてってー 」
「莉奈、日焼けしないように、ちゃんと日焼け止め塗ったの〜? 」
「あー、さっき塗ったけどまた塗ったほうがいいかもしれない 」
「じゃ塗ってあげるから、私のも塗って欲しいからこっち来て〜 」
「わかったー!唯斗待っててー 」
「はいよ 」
美奈のビキニは、やはり水着映えする。世の中の男はこれが好きなのだろう。
莉奈も昨年より少し成長しているようだ。まあそんなこと誰もいじりはしない。なぜなら彼女は怒るだろう…… 昨年のことのように。
「あれ、快斗くんは海入らないのー? 」
莉奈が着替えない快斗に聞いた。
「ちょっとね、撮影の関係で日焼けするのは影響が出るから困るんだよ 」
「えーなにそれ、せっかくなのにねー 」
「じゃ快斗くん、たくさん日焼け止め塗ってもだめなのかな〜? 」
「うん、流石に仕事に支障が出るのはまずいんだよ 」
「そっか〜 」
「じゃ兄さん別荘にずっといるの? 」
「そうだな、別荘にいるかな 」
「そっか、じゃ俺たち行ってくる 」
「おう 」
快斗を1人残して、唯斗たちは海に向かった。
砂浜の砂は少しでも足の裏がつくだけで熱い。
太陽の光を反射する青くて綺麗な海からの潮の香りがむせるくらい濃厚だ。
そんな海に向かって3人は駆け出した。
「きゃっっ、冷たぁいー 」
「冷たいけど気持ちいいね〜 」
「おおー気持ちいいーー 」
3人のテンションは上がりに上がっていた。
快斗は別荘の大きな窓から海を眺める。何か快斗の表情は浮かなかった。
本当に日焼けがいけないのか。本当に撮影のためなのか……?
このことを深く理解するのはもうすぐのことだ。
海での時間が過ぎて、日が沈み始めた。綺麗な夕焼けが海に映る。赤くなった海がまた一段と雰囲気を良くする。
そして、お腹の減った4人は別荘で昨年と同じようにBBQの準備が始まった。
関係がよくなったからなのか、手際も良くなったような気がした。快斗は特に積極的に動いていた。海のことを少し気にしているのだろうか……
BBQが始まって、楽しい夜の時間が過ぎていった。
快斗の誕生日もちょうど近くて、昨年と同じように祝うことができた。今年で21歳になる。この年が快斗にとって、唯斗にとって、姉妹にとって、家族にとって本当に変わる年になることをまだ知らない。もうすぐのことだが。
快斗だけはそれを気づいているのかもしれない。それでも言うことはなかった。
BBQが終わって、唯斗と莉奈は花火をやり出した。
「ねー唯斗みてこれ! 」
「おー綺麗だな 」
「でしょー! 」
「おれのも綺麗だけどな 」
「そうだねー! 」
快斗と美奈は片付けを終えて、2人海の方に歩き出していた。
「懐かしいな〜 」
「昨年も歩いたような気がするな 」
「うんそうだよね〜 」
「あの時とは、本当に変わったよな色々なことが 」
「うん本当にそうだね、私たちの関係もそうだし莉奈たちもそうだしね 」
「うん、本当に変わったよな 」
快斗にとっても美奈にとってもこの1年は大きく変化したものだった。もっと変化するのだが……
「なあ美奈、俺…… 」
綺麗な月明かりが2人を照らす。海からの波風が気持ち良い。夜の涼しい気候の中で快斗は美奈に何かを打ち明けようとしていた……
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