第24話 相愛「ソウアイ」
唯斗はなんとか無事に期末テストを乗り越えて、冬休みを迎えようとしていた。
12月23日、二学期最後の学校の日のことだ。
その日、最後の学校となり明日からの冬休み、そしてクリスマスを迎えようとする高校生はやけにみんなテンションが高いように見えた。
4人はいつもと変わらずに、喋っていた。
「クリスマスだねー 」
「桃香は、誰と過ごすの? 」
桃香の発言に陸が返す。
「うーん誰かいないかな〜 」
「いなんだなー 」
「はぁー、悲しいねー 」
「唯斗たちはー? 」
「全然決まってねーなー 」
「うん、確かにそうだね 」
「じゃ、25日4人でイルミネーション行こう 」
陸の提案に3人は驚く。
「えー!? 」
「まぁ確かに俺は暇だから大丈夫だな 」
「私も予定はないけど…… 」
「だってよ桃香、君はどうするの? 」
「も、もちろん行くよ! 」
「じゃ決まりだね! 」
「うん! 」
「また予定は、連絡して決めよう 」
そう言って、冬休み最後の学校の日に急遽クリスマスにイルミネーションを見に行く予定が決まったのだった。
学校も終わり、桃香たちと分かれて、唯斗と莉奈は家に向かって帰った。
夕方でも、もう空は暗い。そして寒さは増すばかりだ。雪が降ってもおかしくはない気候だった。
「寒いなー 」
「そうだねー 」
「なぁ、そういえば明日って美奈さんの誕生日で、明後日は莉奈の誕生日だよな 」
「そうだよー、よく知ってるじゃんー 」
「うん、そりゃ覚えてるさ 」
「ありがとうね 」
「当たり前のことだよ 」
「そうなのー? 」
「でも、クリスマスとクリスマスイブに誕生日ってすごいよなー 」
「そうだね、毎年誕生日は祝ってもらうのがとても楽しみだったなー 」
「そうなんだな 」
「うんうん 」
「今年は、みんなでイルミネーションでいいのか? 」
「うん! すごい楽しみだよ! 」
「そっか、なら良かったよ 」
「うん!! 」
2人は冬休みを楽しみにする様子が伺える。そんな話をしながら家に帰ってきた。
家に帰ると、そこにはいつもと雰囲気がまた変わった美奈さんがいた。
「え、お姉さん髪の毛切ったの!? 」
「うん、今日ちょっとね〜 」
「本当だ、すごい似合ってます 」
「ほんと〜? 良かった〜 」
「うん、お姉ちゃん可愛い! 」
「ありがとう〜 」
美奈の髪型は、元々セミロングくらいだったが、前よりも短くボブになっていた。その髪型はとても似合っていて可愛さの中に色気も放つ、まさに美人そのものだった。
「でもなんで、いきなり髪型変えたのー? 」
「え、えーっとね、明日ちょっと予定があってね 」
「え、クリスマスイブだよ! それに誕生日だし! 」
「うん〜 」
「兄さんとどこか行くんだ 」
「ああバレちゃってた〜? 」
「すぐにわかりますよー 」
「えーそうなんだー、お姉ちゃんと快斗くんは2人でデートかー 」
「そんな全然、少しご飯を食べに行くくらいだよ〜 」
「へぇ〜、あそうだ私たちも25日はイルミネーションに出かけるね 」
「そうなのね、わかったよ〜 」
唯斗は髪の毛を切って、予定があると言った瞬間にすぐに理解できた。美奈が何か気持ちが入る時は大体快斗のことだと。
時間も経ち、夕飯の支度が終わって快斗がそろそろ帰宅する時間に近づいていた。
「ただいま 」
「あ、おかえり〜 」
「お、髪の毛切ったんだね 」
「うん〜、どう〜? 」
「似合ってるよ、すごい可愛いよ 」
「あ、ありがとう〜
ご、ご飯できてるから、すぐきてね〜 」
「あ、うん 」
美奈は予想以上に快斗に褒められて、照れを全く隠せずにテンパっていた。その場からすぐ離れていく様子を見て、快斗は何かあったのかと不思議そうにしていた。
夕飯を食べて、その日は終わった。
12月24日。クリスマスイブ。そして美奈の誕生日を迎えた。
「おはよう〜 」
「早いねお姉ちゃん 」
「うん、なんか目が覚めちゃった〜 」
「あ、そうだ! お姉ちゃん誕生日おめでとう〜 」
「ありがとう莉奈〜 」
「おはようございます〜 」
「おはよう唯斗くん〜 」
「唯斗おはよう 」
「美奈さん誕生日おめでとうございます 」
「ありがとうね〜 」
こうしてクリスマスイブの日は始まった。快斗は仕事に出かけたが、夕方には予約した店で美奈と合流することになっている。唯斗は何か用事があって、外に出ると言い、出かけていった。
美奈と莉奈は2人きりで家にいた。
誕生日ということもあり、お互いの幼き頃の写真を見たり、思い出を語っていた。
少し照れくさくなってる2人だったが幸せそうだった。
時間は経って、美奈が出かける時間になった。
唯斗もどこかへ行っていたが帰ってきた。
「じゃ、行ってくるね 」
「楽しんでねお姉ちゃん! 」
「美奈さん、行ってらっしゃい! 」
「うん! ありがとう〜 」
美奈は快斗の元へ出かけていった。
美奈の化粧や、服装を見れば本気ってことがわかる。本当に美人そのものだった。
「行っちゃったねー 」
「そうだな 」
「私たちも、2人だけのクリスマスイブを楽しまないとねー 」
「おう! そうだな! 」
「てか、唯斗どこに行ってたの? 」
「あー、ちょっとな 」
「えー、教えてよー 」
「内緒だー 」
「つまんないのー 」
「まぁまぁー 」
その頃、美奈は快斗との待ち合わせの店に近づこうとしていた。
快斗はもう店の前で美奈を待っていた。
「あっ、美奈ー 」
「快斗くん! 」
「来てくれてありがとう 」
「いえいえ、こちらこそです 」
快斗は流石だった。流石モデルと言えるセンスだった。完全に服を着こなし普段の快斗とはまた違う雰囲気で、かっこよさで溢れていた。クリスマスイブということや美奈の誕生日ということもあり、高級レストランを予約していた。やること全てがかっこいい。そう思える。
快斗が予約した店は、都心の中心部であり、30階をも超えるビルの上階層の高級レストランだ。一般の人間ではなかなか行けるような店ではない。
「予約していた、二階堂です 」
「二階堂様、二階堂快斗様ですね 」
「はい 」
「こちらになります 」
店員に連れて行かれて2人は窓際の2人席に座った。
そこからは、東京が見渡せる景色だった。人がアリのように見え、街全体は光り輝く宝石のように光を放っていた。
2人は次々と出てくるコース料理を満足気に食べていた。
美味しそうに食べる美奈に快斗は、本当に嬉しそうに見ていた。
快斗が予約していた、誕生日ケーキがきた。そのケーキには「美奈20歳誕生日おめでとう」と書かれていた。
美奈は涙を流しそうになりながらも、涙腺をキツく閉めて、嬉しそうに喜んでいた。
「快斗くん、本当にありがとうね 」
「喜んでくれてよかったよ 」
「うん、本当に嬉しいよ〜 」
「じゃ、これプレゼント 」
「えっ!? 」
快斗からの美奈へのプレゼントは高級ブランドのピアスとブレスレットだった。
「本当にありがとう 」
美奈は我慢していた涙が溢れ出した 。
「そんなに喜んでくれて嬉しいよ 」
「本当に、うれしい〜 」
2人は幸せな表情しか見せていなかった。
そんな2人は食事を終えて、外に出ると近くのデパートのイルミネーションエリアに来ていた。
そこは青く光り輝く木や、様々な色を彩どる花のイルミネーションなどがカップルで溢れる街を照らしていた。
「綺麗だね〜 」
「うん、すごい綺麗だな 」
2人の手は自然に結ばれ、共に歩いていた。
「美奈 」
「うん? 」
快斗の唇は美奈の唇に触れた。
今までのキスとはまた違う、もうこの時の2人は相思相愛だった。
溢れ出すお互いの気持ちを、隠すことなくさらけ出していた。
この一瞬もこの一秒も2人にとって大切な時間と、間違いなく言える。2人にとってそんな時間だった。
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