第22話 対策「タイサク」



 11月も時は過ぎて下旬になり、寒さが増してきた。



 どんどん冬に近づいて行き、人肌が恋しい季節になってきた。



 そんな唯斗や莉奈たち、高校生にはこの時期は大変である。



 なぜなら、期末テストがある……



 この学校では、期末テストで赤点をとってしまうとクリスマスは学校で勉強になってしまう。そんなにつまらないことはない。そう生徒たちは必死に勉強をする。


 唯斗にとって勉強は不得意な方であり、期末テストへの自信はなかった。反対に莉奈は勉強はできる。唯斗はクリスマスを学校で勉強して過ごすのか、それとも……




 そして期末テスト1週間前になった。


 その日も、唯斗は学校で放課後勉強をしていた。



「唯斗、私先に帰るからね〜 」


「あ、おうー 」



 莉奈は唯斗を待つことなくすぐに帰った。



「唯斗ー、勉強大丈夫そうー? 」


「ちょっとやばいかもな 」


「ちゃんと普段勉強してないからだよー 」


「いろいろ、おれも忙しいんだよー 」


「なにいろいろってー 」


「いや、それは… 」


「ないんじゃーんー 」


「うるせぇーー 」


「あはは、じゃ私が勉強教えてあげるよ 」


「ほんとか桃香! 」


「うん、唯斗よりは勉強できるからね 」


「そうかよー 」


「うんー! 」



 こうして、唯斗と桃香のテスト対策は始まった。



 1週間という短い期間で唯斗の赤点回避は成功するのか……



 なんとしても、成功させる気で2人は頑張っていた。



 そして毎日放課後桃香が唯斗の勉強に付き合い、金曜日の放課後の勉強会も終わりに近づいていた。



「っしゃー、これだけやれば大丈夫かなー 」


「唯斗、まだまだ全然だよー 」


「えーー、まじかよー 」


「土日もやらないと月曜日からのテストやばいよー 」


「えー、そんなにかー 」


「うんー 」


「じゃ、土日うちきてくれ 」


「えっ!? 」


「なんで、そんなに驚くんだよ 」


「前も来ただろー 」


「あ、うん、いいんだけど土曜だけかな 」


「日曜はなんかあるのか? 」


「うん、日曜日は塾があるから 」


「わかった、じぁ明日よろしくな 」


「うん!! 」



 そう言って2人は、学校から家に向かって帰宅した。


 明日の約束もしっかりとして、13時に唯斗の家に桃香は来ることになった。



「ただいまー 」


「おかえりなさい〜 」


「はぁーつかれたー 」


「勉強頑張ってるみたいだね唯斗くん 」


「まぁ一応ですけどねー 」


「赤点とったら大変だもんね〜 」


「そうですよ、クリスマス俺だけ学校で勉強とか、それだけは嫌ですよー 」


「あははは 」


「あ、美奈さん明日13時くらいに桃香来るからー 」


「あらそうなのね、わかったよ〜 」



 そう言い、唯斗は二階に上がっていった。



「莉奈ーー 」


「なにー? 」


「開けるぞー 」


「うんー 」


「勉強中か、えらいな 」


「うん、それで?? 」


「明日桃香来るからー 」


「えっ? うちに? 」


「うん、来るけどまずいか? 」


「いや、別に 」


「うん、ならいいけど 」


「最近毎日一緒に勉強してるもんね 」


「うん、おかげでなんとかいけそうだよ 」


「そっか、良かったね 」


「うん 」



 唯斗は莉奈の部屋から出ていった。


 莉奈は少し落ち込んでいるような様子を見せた。






 快斗も帰宅して、夕飯の時間になって、美奈の料理をいつものように食べていた。



「唯斗、勉強大丈夫か? 」


「まあー、なんとかなー 」


「快斗くんに教えてもらえばいいんじゃない〜? 」


「いやー美奈、俺も高校の時の勉強なんてもうそんなに覚えてない 」


「兄さんに教えてもらわなくても、俺は大丈夫だ 」


「どっからその自信出てくるんだよ 」


「あはははは 」



 莉奈は何か不満そうに見ていた。唯斗の自信がある様子は桃香がいるから、なのだと思っていた。



「莉奈は大丈夫なの〜? 」


「うん、私は大丈夫 」


「勉強はできるもんね〜 」


「うん 」


「なら唯斗、莉奈に教えてもらえばいいじゃないか 」


「まぁそれもありだな 」


「え…… 」


「だめか? 」


「ううん、だめじゃないけど 」


「じゃ、ご飯終わったら俺の部屋来てくれ 」


「うん 」



 そう言って、ご飯が終わって2人は2階へと上がっていった。



「美奈クリスマスイブの日、予定空けておいてくれ 」


「えっ、うんわかった 」


「うんたのんだ 」


「楽しみにしてるね〜 」


「うん 」



 美奈の顔には笑みが溢れた。



「ん………… 」


「どうしたの? 」


「大丈夫だ、なんか少し詰まったみたいだ 」


「本当? ならいいけど〜 」


「うん、大丈夫だ 」



 快斗は胸の下あたりを押さえていた。そんな快斗の額には少し汗をかいているように見えた……

 




 その頃……



「唯斗入るわよー 」


「おーう 」



 莉奈が唯斗の部屋に入ってきた。



「で、どこがわからないの? 」


「こことか、ここかなー 」


「めっちゃわからないじゃん! 」


「うーん、俺も問題を分かりたい気持ちはあるんだけどな、問題が俺と分かり合ってくれない、というか 」


「何を訳の分からないこと言ってるの、ほらさっさとやるよー 」


「はいはいー 」



 2人は勉強を進めた。


 進める度に莉奈は疑問と少し、苛立ちを隠せなかった。



「なんでここも分からないのよー 」


「うるせー、分からないんだよー 」


「本当に勉強してるのー? 」


「してるわ! 」


「毎日桃香と本当に勉強してるのやらー 」


「してるわ! ちゃんとやってるわ 」


「やってて、これー? 」


「おまえなー 」


「本当は勉強してないんじゃないー? 」


「してるって言ってんだろ!! 」


「何よ! こっちだって親切に教えてあげてるのに! 」


「もういい、自分でやる 」


「そんな言い方ないでしょ! 」


「そうかすまんな 」


「なにそれ 」


「出てってくれ 」


「あっそ、勝手にすれば 」


「おう 」



 莉奈は唯斗の部屋から出ていった。



 莉奈の気持ちは表情に出ていた。完全に嫉妬であるだろう。桃香が毎日唯斗と一緒に勉強している。それに、明日も家に来る。そんな2人のことが羨ましかったのだろう。




 唯斗への、気持ちを自分でも理解しているが、行動には移せず、悪い方向にいってしまう莉奈。そして、それに気づかない唯斗。2人はどうなっていくのか。そして桃香の想いが……





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