第18話 後悔「コウカイ」
3人の気持ちを知らずの快斗は家に帰る日は少なく、彩乃のマンションに泊まることが多くなっていた。
ある日唯斗は快斗に電話をして、家に帰ってくるように言い、約束をつけた。
その日のこと……
「ただいま 」
「おかえり兄さん 」
「うん 」
2人はリビングに行った。無論、美奈と莉奈は唯斗に2人きりにして欲しいと言われて二階にいた。
「兄さん、話したいことがある 」
「うん、わかってるよ 」
「そろそろ、いい加減にしてくれ 」
「なにをだ? 何かお前らに迷惑をかけてるのか? 」
「別にいいよ俺には。だけどな美奈さんと莉奈には違うだろ 」
「美奈と莉奈に俺が何かしたか? 」
「なんだよその言い方は! あの日、美奈さんと言い合いになって、兄さんが夜出てった日から変わり始めたんだよ 」
「俺は、この家にいたらみんなに迷惑をかける。だから外に出てるんだよ 」
「いつ誰が、迷惑って言ったんだよ! 」
「それは…… 」
「俺は兄さんの行動が全くわからない。彼女がいるのかもしれない。別にそれはそれでいいと思う。それに関して俺たちがいろいろ言うつもりはないけど、本当に兄さんその人好きなの? いい加減に、正直になってよ兄さん…… 」
「お前に何がわかるって言うんだよ。彩乃のことも、俺のことも 」
「分かるさ… 兄さんがずっとその人のマンションにいることも。」
「知ってたのか 」
「うん、一緒にいるの見かけたからね 」
「そうなのか 」
「いい加減正直になってくれよ 」
「俺は、お前らに俺のことを理解してもらえない。俺は別にそれでいいんだ 」
「もうずっとそればっかり言ってるけど、それでいいよもう。だから理解してなくてもいい。それでもいいから家に帰ってきてよ 」
「今更、美奈に顔を合わせられない 」
「いつまでそんなこと言ってんだよ。美奈さんはずっと心配して、ずっとずっと。兄さんが帰ってくるか毎日わからないから、ご飯だって4人分作って、兄さんがいない間にも部屋を掃除してくれたり、ずっと気にしてくれてんだよ、いい加減に気づけよ美奈さんの気持ちにも 」
「美奈…… 」
「もういい加減にしてくれよほんとに。俺は美奈さんの彼氏でもなんでもない。美奈さんからすれば、ただの弟みたいな存在だと思う。それでも俺は美奈さんの悲しむ顔や、悩む顔をもう見たくない。ずっと兄さんのせいで悩んでいて、そんな姿もう見てられない。美奈さんの笑顔は兄さんがいてこそなんだよ。気づけよ!!! 」
「ごめん唯斗…… 美奈、莉奈…… 」
快斗の目には涙が流れていた。快斗なりにもいろいろ悩んでいたのだろう。自分のこと、美奈のこと。そして自分の気持ちに嘘をつき、心情を騙して彩乃と一緒にいたときのことを。彩乃に対しても中途半端な気持ちでも関わって、彼女を傷つけることを心のどこかで分かっていた。間違っていると何度も分かっていても自己解釈していた自分を許せなかった。
「唯斗、ありがとう。 美奈はどこにいる? 」
「自分の部屋に居ると思うよ 」
「わかったありがとう 」
唯斗はすぐに立ち上がって二階に向かおうとしてドアを開けた。
ガチャ……
「痛っっ…… 」
ドアの向こう側には、莉奈がいた。
「莉奈…… 」
「快斗くん、お姉ちゃんのことよろしくね 」
「うん、わかってる、ありがとうな 」
そう言って快斗は二階に上がって行った。
「莉奈聞いてたのか 」
「うん…… 」
「上にいろって言ったよな 」
「ごめんね、気になって仕方なくて 」
「そうか 」
「ありがとうね唯斗…… 」
「長くなってごめんな 」
その時の唯斗の顔は、莉奈が今までに見たことない顔だった。唯斗は自分のするべきことをやり切ったのに涙が溢れそうだった。
そんな唯斗の元へ、莉奈は抱きついて言った。
「みんなのために、お姉ちゃんのために、色々ありがとうね唯斗 」
「お、おう…… 」
「私がいるから、泣かないで 」
「ありがとう…… 」
2人は何かを確かめ合うようにお互いを見つめ合った。
唯斗と莉奈は、この時からしっかりと動き始めていた。
「美奈ー 」
快斗が美奈を呼び、部屋に入った。
しかし、部屋には美奈の姿はなかった……
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