第16話 最悪「サイアク」


 快斗は彩乃と共に、彩乃のマンションに入っていった。


 

「ただいまー 」


「お邪魔します 」


「お風呂入りたかったら先入って良いよー 」


「いや、悪いから先入れよ 」


「いいのいいの、やることあるから入って 」


「そうか、じゃ先悪いな 」


「どうぞーー 」



 快斗は風呂に入り、ゆっくりと浸かっていた。



 自分のいましていることは間違っていると分かっていても、正当化したくて自己解釈していた。



 酔いながらもそんな悩みを持った快斗を、かなり酔っている彩乃はわかるはずがない。



 快斗がお風呂から出ると、彩乃がすぐに交代で入った。



 快斗は携帯に入った、唯斗からの着信履歴を眺めていた。



 美奈は自分との言い合いになって、快斗が怒って出て行ってしまったことを唯斗に相談していた。唯斗がそれで電話をしてきたのだ。



 快斗は眠気や、自分の気持ちとの葛藤。様々な想いに交錯されながらぼーっとしていた。



「上がったよー 」


「そうか 」


「私もーう眠いー 」


「寝ていいぞ 」


「うーん、まぁ多分そのうちすぐ寝ちゃうかも 」


「そうか 」



 そう言って彩乃は、ベットに潜った。



「なぁ、彩乃はいま彼氏とかいるの? 」


「なーにいきなり、いないけど 」


「そうか 」


「快斗はいるのー? 」


「いない 」


「だよねーーーー 」


「その言い方はないだろ 」


「ごめんごめんー、だってそんな感じ全くないしー 」


「まあそうかもな」


「好きな人とかはいるの? 」


「うーん、いないと思う…… 」


「なにそれー 」


「よくわからないんだ 」


「ねぇ、快斗こっちきて」


「なんで 」


「いいから 」



 言われるがままに快斗はベットに座り込んだ。



「ねぇ快斗…… 」


「ん? 」



 彩乃の唇が快斗の唇に触れた。



 2人は数秒間見つめ合った。



「なんで 」


「なにか悪かった?? 」


「いや、別に 」



 2人は体を重ね、そのまま一夜を共にした。






 カーテンの隙間から太陽の光が少しだけ見える。



 朝というよりも、もうお昼の時間だった。



「おはよう快斗、二日酔い大丈夫? 」


「少し頭が痛いくらい 」


「私はなんか大丈夫っぽいー 」


「良かったな 」


「うん!! いつ帰る? 」


「もうすぐ帰るよ 」


「そっかー、またいつでも来てね 」


「うん 」



 そう言いつつ、彩乃は快斗の唇を奪った。



 快斗は彩乃のマンションから出て、家に向かって歩きだした。



 快斗は、自分との葛藤が昨日よりも強くなっていた。



 自分がしたことが間違っていたことは明らかにわかる。それでも快斗は……





 その頃、家では……


「美奈さん、兄さんからは昨日からまったく連絡こないですね 」


「そっか…… 」


「兄さんの方こそ悪いのでそんなに、落ち込まないでください 」


「まぁ、確かにお姉ちゃんだけが悪いとは言い切れないからね 」


「2人ともありがとう 」


「いえいえ 」


「でも、私は快斗くんのことをもっと分かってあげたくて、知りたいだけなのに。それが快斗にとっては迷惑なのかな…… 」


「兄さんにここまで寄り添ってくれる人がいて俺は嬉しいよ美奈さん、兄さんと美奈さんは絶対いつかは分かり合えると思いますよ 」


「そうかな〜 」






 ガチャ……



「あっ、おれ玄関見てきます 」


「ただいま 」


「兄さん、どこ行ってたの? 」


「ちょっとな 」


「ちょっと待って 」



 快斗はみんなを無視して、自分の部屋に入っていった。



「ごめん美奈さん 」


「部屋行っちゃった 」


「いいの、もうちょっと考えるね、私も 」


「はい 」



 時間は経ち、夜ご飯の時間になった。それでも快斗は降りてこなかった。



 快斗がいない3人での食事だった。


 雰囲気はいつもより、断然良くなかった。


 無言の時間が続いていた。



「おれが兄さんに、話します 」


「唯斗が話すの? 」


「うん、一応兄弟だからね 」


「まぁたしかにねー 」


「だめ。私に行かせて。私が行かなきゃだめなの。 」


「美奈さん…… 」

「お姉ちゃん…… 」


「私との問題なんだから、私と快斗くんが解決するから2人は大丈夫だよ 」


「わかりました 」

「うん、分かったよお姉ちゃん 」



 そう言って、美奈は快斗の部屋の前まで来た。


 美奈は何か強い決心を固めたようだった。



 トントン……



「快斗くん、入るね 」



 快斗からの返事がなかった



 美奈が部屋に入った。



 快斗の部屋は体や口から臭う酒の臭さが部屋中に臭っていた。



 美奈は飲み明けていたことにすぐ理解した。




 そして、美奈は衝撃を知ることになる。




 寝ている快斗の首元には、いくつかのキスマークが付けられていた。




 嘘でしょ……




 美奈はその時、今まで愛想つかされていた理由を勝手に理解した。




 美奈は、受け止めきれない事実と、自分の感情に困惑した波に溺れていくのであった。





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