第15話 複雑「フクザツ」


 唯斗が桃香を家に送ってから帰ってきた。


「ただいま 」


「おかえり〜 」



 美奈が迎えた。


 少し落ち込んだ様子を見せた美奈に唯斗はすぐ気づいた。



「ん、美奈さんどうしたの? 」


「ううん、莉奈にさっき怒られちゃった〜 」


「何かあったの? 」


「大丈夫だよ 」


「そっか 」


「うん 」


「兄さんはまだ帰ってこないの? 」


「うん、連絡がないかな 」


「まぁそのうち帰ってくるか、おれはお風呂入ってくるね 」


「うん、いってらっしゃい 」


 

 ガチャ……



「きゃっっ!!!! 」


「お、おいなんで!? 」



 すぐに唯斗はお風呂から出て、ドアを閉めた。



「なんで、入ってくるのよ!! 」


「いや、電気ついてなかったから 」


「今日は真っ暗にして入りたかった気分なの!! 」


「なんだよ、その気分は 」


「そんなことより、あんた見てないでしょうね? 」


「ああ暗くてよく見えなかったよ、残念ながらなー 」


「本当に、最悪ね 」


「いや、だからこれは 」


「まぁいいわ、もう私出るから、すぐにここから出てって 」


「はいはい 」



 そう言って、唯斗は自分の部屋に入っていった。


 全くなんだよあいつ。

 あんなの不可抗力だろ。


 唯斗は部屋で1人、呟いていた。



「出たよ 」


「あ、おう 」



 莉奈がお風呂から上がって、唯斗を呼びにきた。


 

「なんで暗くして入ってたんだ? 」


「なんでもない 」


「美奈さんと何かあったのか 」


「何もないって言ってるでしょ 」


「はいはい 」



 唯斗はお風呂に向かって行った。



 莉奈の気持ちに唯斗が気付くはずがない。それぞれの想いは交錯するばかりで、伝わるはずのない想い。




「ただいま 」


「あっ、おかえりなさい〜 」



 快斗が、帰宅した。



「ご飯食べるよねー? 」


「うん 」



「いただきます 」


「はーい 」



 快斗は何か悩んでいる様子だった。



「快斗くん、何かあったの? 」


「うん、ちょっと仕事がうまくいかなくて 」


「そうだったのね、大丈夫?? 」


「ううん、仕事にもなんか気持ちが入らないんだ 」


「何かあったのかな 」


「おれにも自分のことがわからない。何か気持ちが落ち着かないんだ。 」


「私に、できることあるかな? 」


「美奈、おれは多分…… 」


「うん?? 」


「いや、なんでもない…… 」


「私には、いつも濁して言わないんだね 」


「言えないんだよ!! 」


「そうやって、逃げてるだけじゃないの? 」


「なんで、そんな言い方されなきゃいけないんだよ 」


「だって、そうじゃん。いつも大事なことは言わないんだね 」


「言わないんじゃない、言えない。いやおれにもわからないんだって 」


「そうやって誤魔化して逃げるのやめようよ。そろそろ逃げるのはやめようよ 」


「なんで、お前にそんな言い方されなきゃいけないんだよ! 」


「もういいよ、私が悪かった 」


「ああ、そうだよ 」



 バンッッ……



「ごちそうさま…… 」



 そう言って快斗は家から出てった。



 美奈の心は吹き荒らす感情という嵐に荒らされていた。


 その美奈の表情は、様々な気持ちが入り乱れる様子が見れた。





 快斗は、電灯の灯りを頼りに、駅の方に向かって歩いていた。



「あれ? 快斗ー? 」


「ん? 」


「あ、やっぱり快斗じゃーん 」


「なんだよ彩乃かよ 」


「なんだよって何よー、相変わらずだなぁ 」



 仕事終わりに友達とご飯に行っていたという同じ事務所でモデル仲間の桐崎彩乃だ。普段から、それなりに関わることも多く、話すことも多い。年は快斗と美奈と同い年の20歳だ。といっても美奈はまだ19歳だが。


 桐崎彩乃は、雑誌専属のモデルだ。華奢なスタイルに綺麗な目蓋。明るい髪の毛だが、大人の色気も放つ美女だ。



「で、快斗なにしてるのー? 」


「ちょっとな 」


「あらーなんかあったのかな、明日私、休みだし呑みにでも行く? 」


「おれも休みには休みだ 」


「仕方ないなー、決まりだね 」


「こっちのセリフだ 」



 そんなことを言いつつも、2人は駅の近くの居酒屋に入った。



「快斗とお酒呑むの初めてだよねー 」


「うんそうだな 」


「いつも呑むの? 」


「ほとんど呑まないかな 」


「そうなんだー 」



 2人は、ハイボールとレモンサワーを頼んだ。



「それで、なにがあったの? 」


「それがな…… 」



 快斗は姉妹と同居していることを彩乃に話した。



「ええっー! 初めて知ったよ、そんなこと 」


「そりゃ俺は言ってないからな 」


「大変なんだねー、快斗も 」


「ああ、それなりにな 」


「私も、最近仕事上手くいかなくて困ってるのー 」


「それはおれのセリフだ。お前は十分すぎる活躍してるだろ 」


「ううん、私は何かまだ足りない気がするんだよね 」


「すごいなお前は 」


「まあねー 」



 話が弾み、2人は日が回るまで、呑んでいた。



「あらー、私、うぁぁ 」


「おい、お前酔いすぎだろ 」


「全然酔ってない酔ってない 」


「酔ってるな完全に 」



 2人は店を出て歩き出した。快斗も酔ってない訳ではないが、彩乃はかなり呑んでいて酔っていた。



「家まで、送ってくけど、どこなんだ? 」


「うーんとね、ここから10分くらいのところかなー 」


「タクシー呼ぶな 」


「大丈夫だよー歩けるよー 」


「もう捕まったから黙って乗れ 」



 快斗は彩乃をタクシーに乗せた。行き先は自分で伝えるように言った。



「快斗! 」



  快斗は彩乃に掴まれた。引っ張られてタクシーに快斗も乗っていた。



「どーせ、家帰りにくいんでしょー 」


「別に近くのホテルとかに泊まるからいい 」


「うちに泊まってきなよ 」


「いや、それは…… 」


「いいってー、遠慮しないで 」


「いやでも…… 」



 タクシーは彩乃のマンションに着いた。



「いや、おれは帰るよ 」


「だめ。帰っちゃ…… 」


「えっ…… 」



 彩乃の酔った赤い顔は快斗を困らせるのであった。





 この快斗の行動が、どうなるのか……




 美奈とはどうなってしまうのか……






 

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