第14話 交錯「コウサク」
夏の暑さも和らぎ、季節の変わり目になり始める頃になった。
唯斗と莉奈は学校に普段通り行っていた。姉の美奈は大学は今日は休みだった。
快斗は仕事に朝から出掛けたが、今日は家に帰宅すると言っていた。ここ最近は4人で夕飯を一緒に食べるようになってきていた。快斗も変わり始めていた。
「ただいまー 」
「おかえり〜 」
帰宅した莉奈を美奈が出迎える。
「あれー、唯斗くんは? 」
「知らなーい 」
「あらそうなの〜 」
その頃、唯斗は……
桃香に誘われて、駅前の美味しいフルーツパフェを食べにきていた。
「ねー唯斗これ、やばくない?? 」
「うん、めちゃでかいな 」
「やばいねー! 超美味しいそうー! 」
「お前、食べれるのかよー 」
「余裕余裕〜 」
「食べすぎ注意な 」
「大丈夫だってー 」
唯斗にとって、桃香は幼馴染み。小さい頃からの繋がり。それでしかなかった……
「ふぅ〜、美味しかったー! 」
「うん、美味かったな 」
「じゃ、帰ろっか! 」
「おう 」
2人はいつもと変わりのない会話を弾ませ、家に向かった。
「今の家って、元は莉奈の家族の家なんだよね? 」
「そうだよ、こっちにきたときに新しく建てた家なんだ よ 」
「じゃ、新しいんだね 」
「あそこだよ家 」
「でかっ!!! 豪邸じゃーーん、いいなぁー!! 」
「まぁ最初本当に慣れなかったけどな 」
「そうだよねー 」
「じゃ、気をつけて帰れよ 」
「うん! じゃあね! 」
2人が分かれようとしたその時だった
ガチャ……
「あら〜、唯斗くん遅かったねー 」
「美奈さん、ただいま 」
「こんにちはー 」
「あっ、桃香ちゃん! 良かったらついでにうちでご飯食べてきな〜 」
「えっ、そんなの悪いので大丈夫ですよー 」
「いいって〜、遠慮しないで〜 」
「え、じゃお言葉に甘えて 」
「じゃ唯斗くん、私ちょっと買い物行ってくるから適当に桃香ちゃんと莉奈と何かしてて 」
「はい、気をつけてね 」
「うん、ありがとう〜 」
言われるがままに桃香は家に入った。
「すごいねー、ほんと 」
「莉奈呼んでくるから下にいてくれ 」
「うん、わかった 」
「おーーい、莉奈ー、開けるぞー 」
「なにー、いきなりどうしたの 」
「桃香が家にきて、ご飯食べてくってよ 」
「えっ、桃香いるの!? 」
「うん、下にいるよ 」
「すぐ行くー! 」
「ああ、待ってるよ 」
唯斗が下に降りてすぐに、莉奈も一階に降りてきた。
「桃香ー!! きてたのねー! 」
「うん、お邪魔してるよー 」
「やったー、今日は桃香も一緒かぁー 」
「良かったな 」
「ねぇねぇ桃香、唯斗の面白い話とかないのー? 」
「唯斗の面白い話かー、たくさんありすぎて困っちゃうなぁー 」
「ありすぎてってなんだよ 」
桃香は思い出を語り出した。
「小学4年生の時のことでね……… 」
「ええっーー! そんなことあったんだ〜 」
「おい桃香、恥ずかしいからやめてくれ 」
「ごめんごめんー 」
「唯斗も可愛いとこあるじゃーん 」
そんな会話をしているうちに、美奈も買い物から帰ってきて、すぐにご飯が出来上がった。快斗からは遅くなるから先に食べていて欲しいと連絡があった。
「美味しい〜 」
「うん! 美味しい〜 」
みんな満足の食事だった。桃香はご飯を食べて、帰る時間になった。
「泊まって行けばいいのに〜 」
「いえいえ、それはさすがに 」
「うちはいつでも全然いいから、またおいでね〜 」
「はい! 今日はありがとうございます! 」
「じゃ美奈さん、おれ桃香近くまで送ってくるから 」
「うん、気をつけてね 」
「はい 」
「お邪魔しましたー 」
「待ってー! 私も行くー! 」
「いいよ、莉奈、俺が送ってくるから 」
「うん、莉奈大丈夫だよー! 」
「えー、私も行きたかったー 」
「じゃ、また明日ね! 」
「うん! また明日! 」
そう言って、桃香は唯斗と共に家を出て行った。
「莉奈、唯斗くんと桃香ちゃんのことが気になる? 」
「ううん、別にそんなことは…… 」
「素直になりなよ〜 」
「別に、なんもないし! 」
「ほんとかな〜 」
「お姉ちゃんには、関係ないでしょー! 」
図星なのか、莉奈は美奈にそう言って、すぐに自分の部屋に行った。
唯斗と桃香は、電灯の灯りと空から顔を出した微かな月明かりの元、歩いていた。
「美奈さん、本当に料理上手だねー 」
「うん、毎日本当に美味しいよー 」
「いいなぁ〜 」
「いいだろー 」
「唯斗ありがとうね、ここら辺でもう大丈夫だよー 」
「もうちょっと送ってくよ、夜遅くに女の子1人は危ないしな 」
「え、うん、じゃお願い 」
「おう 」
結局唯斗は、桃香の家まで送って行ったのだった。
「ありがとう唯斗 」
「うん、こちらこそ夜遅くまで 」
「じゃ、また明日ね 」
「うん! 明日な! 」
そう言って、唯斗は家に向かって歩き出した。
なんでそんなに優しくするの。そんなことされたら私は。唯斗には、莉奈がいるのに。私は、私の気持ちはどうすれば……
夏の終わり、月の明かりが桃香の頬の涙を照らした。
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