第13話 関係「カンケイ」


「唯斗くん、起きて〜 」


「……んあー 」


「今日から学校でしょ? 」


「え、あぁっっっ!!!! 」



 唯斗は美奈に起こされて飛び起きた。


 そう今日から、2学期が始まるのだ。


 

 急いで唯斗は一階に降りてきた。



「まったく、なにしてるのよー 」


「完全に忘れてたわー 」


「本当に困るわね 」


「莉奈が昨日言ってくれれば良かったのに 」


「なんで、私のせい? 普通覚えてるでしょ 」


「はいはい、俺が悪いよ 」


「そうだよ唯斗が悪いよ 」


「じゃ、お姉ちゃん、私いってくるね 」


「は〜い、いってらっしゃい〜 」


「待てってー! 」


「いってきまーす 」


「いっちゃったね〜 」


「本当にあいつは早いなー 」


「唯斗くんが遅いんだよ〜 」


「あ、それもそうか 」


「あはは 」



 莉奈に遅れて、唯斗も学校に着いた。


 夏休み明けの学校はどこか気怠さを感じる。


 それは唯斗たちだけではない。学校の生徒みんながそうだ。学校がそういった雰囲気になる。



「おはよう〜 」


「おはよう桃香 」



 唯斗と桃香はあの時以来の再会だ。


 どこか気まずさを感じる。



「ねぇ唯斗、あれから何かあった? 」


「うん? 何にもないよ 」


「そっか 」


「おう 」


「みんなに言わないでくれてありがとうな 」


「言えないよ、こんなこと…… 」



 久しぶりの学校は、普段よりも長く感じたが何事もなく終わった。



「高山さん 」


「ん、どうしたの有村さん 」



 莉奈が桃香に話しかけたのだった。



「少し、お話したいことがあるの 」


「全然いいよ! 」



 2人は学校の人の場所のいないところに行った。



「高山さんは、唯斗とは幼馴染みってことなんだよねー? 」


「うん、あと桃香でいいよ! 」


「わかった、私は莉奈って呼んで 」


「うん!! 」


「じゃ、桃香はずっと昔から唯斗のこと知ってるんだよね? 」


「うん、そうだねー 」


「そうだよね 」


「うん!! 」


「唯斗から話は聞いてるかな? 」


「うん、聞いたよ 」


「本当にびっくりしたよー 」


「そうだよね、いきなりだもんね 」



 ………………。



 2人はいろいろな話で盛り上がり、それなりに仲良くなることができた。



「じゃ、また明日ね莉奈 」


「うん! ばいばい〜 」



 莉奈にとって、学校で初めてしっかりと話せる友達ができて、嬉しさに溢れていた。


 


 それが莉奈にとってはだが……




 桃香は好きな人の一緒に暮らしてる美少女との関係は辛いものがあった。




 莉奈は家にまっすぐ帰った。



「ただいまーー 」


「おかえりなさい、遅かったね〜 」


「うん、ちょっとね 」


「唯斗くんもう帰ってきてるよ 」


「あらそうなの 」



 そう言って、莉奈は二階にすぐ上がっていった。



「唯斗ーーーー 」


「なんだよ 」


「入るよー 」


「おい、いきなりどうしたんだよ 」


「桃香、めっちゃいい子!!! 」


「あ、なんか話って言ってたな 」


「うん、可愛いし、優しいし 」


「いいなー、あんな子と幼馴染みかぁ 」


「まあな 」


「唯斗、桃香のこと好きでしょー? 」


「いきなりなんだよ 」


「ほらーやっぱりー 」


「好きじゃないわ 」


「えー、絶対嘘ー 」


「幼馴染みだから、そんな感情にはならないかなー 」


「えー、そうなの 」


「じゃ、誰が好き? 」


「誰が好きって言われても、いないかな 」


「あっそー、つまんないの 」


「なんだよそれ 」



 そう言って、莉奈は部屋から出ていった。



 俺の好きな人か、俺は誰が好きなんだろう

 莉奈のことか。

 美奈さんなのか。

 俺にとって、2人は……

 


 まだこの時の唯斗は自分のことをあまりにも理解していなかった。




「ただいま 」


「快斗くん、おかえり〜 」


「おう、ただいま 」


「おつかれさま〜、もう少しでご飯だから少し待っててねー 」


「うん 」



 快斗が3日ぶりに帰宅した。



 3日ぶりに4人での食事だった。


 みんな現状に満足いく生活をしていることが間違いなくわかる様子だった。



 

 その日の夜だった。



「美奈、ちょっと聞きたいことがある 」


「うん? どうしたの〜? 」



 リビングには快斗と美奈2人きりだった。



「美奈は、俺たち、兄弟のことをどう思ってる? 」


「うーん、家族って感じはあんまりしないけど、大事な存在だよ 」


「そうだよな 」


「うん、どうしたの? 」


「いや、なんでもない 」


「最近何か、隠してるっていうか変だよ〜 」


「隠してはないけど、隠してるのは美奈のほうだろ 」


「え、私が? 」


「うん、俺は美奈と唯斗が何かあるのかと思ってる 」


「えっ!? 」


 

 普段、見せない快斗の表情。そして、慣れない発言に美奈は驚いていた。



「私、別に唯斗くんとは何もないよ 」


「本当にか? 」


「うん 」



 快斗はあの海での夜の出来事や、普段の2人の様子が気になっていた。



「何もないなら別にいいけど 」


「うん、快斗くん今日なんか変だよ〜 」


「俺もよくわからない自分が 」


「私で良ければ聞くけど〜? 」


「いやなんでもない 」


「そっか〜 」


「じゃ風呂入ってくる 」


「うん 」



  私には話さないから、私も君が分かんないよ……



 俺は、お前がよくわからない。自分の気持ちも……




 2人の想いはすれ違うことばかりだった。







 2人を困らせる夏の思い出。そして2人の世界はこれからもうまくいかない事ばかりだった……







 

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