第10話 星空「ホシゾラ」
「花火なんていつぶりだろうね〜 」
「たしかに、私たち久しぶりだね! お姉ちゃん! 」
「うんそうだね〜 」
「俺たちも久しぶりどころか、記憶にはないくらいだなー 」
「唯斗たちもそうなんだ! 」
「じゃ、みんな久しぶりだね〜 」
4人は久しぶりの花火を楽しんでいた。
「ねー唯斗みてみて!! これほんとに綺麗だよー! 」
「おーほんとだ綺麗だな 」
唯斗は莉奈が手持ち花火を何本も持ってカラフルに彩る花火を一緒に見ていた。
「快斗くん、ちょっとお話ししない? 」
「うん、おれもしたいところだった 」
2人は海の側まで行き、座り込んだ。
夏の夜の海は風が心地よく、2人の頬を撫でるように良い気分にさせるものだった。
「あの時から、なかなか話せなかったよね 」
「ああ、そうだな 」
「なんであの時、いきなりキスしたの? 」
「ん…それは…… 」
「何か言いづらいようなことなのかな? 」
「ん…… 」
「じゃ無理には聞かないようにするね 」
「そうしてくれ 」
「私、あの時からずっと快斗くんのことばっかり考えちゃってるの…… 」
「うん…… 」
「いけないよねそんなこと…… 」
「なにが? 」
「ううん、なんでもないよ〜 」
「そうか 」
「あの子たち、楽しそうだね 」
「ああ、唯斗は変わったよ 」
「そうなの? 」
「うん、君たち姉妹と会って、変わったよあいつは 」
「そうなんだ〜、快斗くんも最初の時と比べれば変わったよ 」
「俺も変わってしまったんだな…… 」
「うん、でも悪い意味じゃなくて、良い意味でね! 」
「そうか、俺も君に変えられてしまったんだな…… 」
「私はなにもしてないよ〜 」
「俺は、自分がわからないんだよ。今までにない感情で、俺にはどうしたらいいのかわからない…… 」
「なにがそんなに快斗くんを困らせてるんだろうね 」
「俺にもわからない。わかれば苦労はしないんだろうけど 」
「う〜ん…… 」
「でも、君には笑顔でいて欲しい。ここ数日の君の顔は見てられなかった。俺のせいではあると思うけどな。君には笑っていて欲しい。俺の考えや、想いを変えた君の笑顔は俺にとって大事なんだ…… 」
「快斗くん……? 」
「ううん… なんでもない 」
「なんでもないことはないよ、私も快斗くんにもっと自分のこと話して欲しい。私も快斗くんの笑ってる顔が見てたいの 」
「ありがとう美奈 」
「うん 」
快斗と美奈にとってこの時間、この時、この一瞬は、2人にとっての……
「ねーお姉ちゃんー、線香花火を最後にみんなでやろうよー 」
「うんー! じゃ戻ろっか快斗くん 」
「うんそうだな 」
快斗と、美奈が戻ってきて4人での最後の線香花火をして、花火は終わった。
片付けを済まして、1人ずつシャワーを浴びて、みんながくつろいで時間を過ごしていた。
時間が経って一日遊んだ4人には疲れがだんだんと襲ってきた。
「そろそろ、俺寝ようかな 」
「私もそろそろ寝ようかな 」
快斗と美奈が言った。
「たしかに、俺もそろそろ眠くなってきた 」
「えーー、みんな早いよ〜 」
「夜遅いし、もう寝ようよ莉奈 」
「えー、でもしょうがないかー」
「じゃおやすみなさい 」
「おやすみ〜 」
男女別の部屋で4人は就寝した。
スズムシの鳴き声と、月明かりと星だけが夜を照らす。そんな夜だった。
ガチャ……
ガチャ……
「あ…!! 」
「あ…!! 」
「美奈さん、どうしたんですか 」
「なんか寝れなくてね〜 」
「そうなんですか 」
「俺は、ちょっとトイレに 」
「あらそうだったのね 」
2人は一階に降りた。
「私、ちょっと散歩しに行こうかな 」
「暗いし、夜遅いですし、なら俺も一緒について行きますよ 」
「ええいいよ〜、眠いでしょ〜 」
「いやーなんかおれも目が覚めて起きちゃったんで大丈夫ですよ 」
「あら、じゃ行こっか 」
「はい 」
2人は、嫌なこと全てが忘れられそうなほど綺麗な空で、心地よい風がふく中、砂浜を散歩していた。
「私たちが出会って、そういえば、もう少しで半年くらいになるね 」
「もう、そんなに経つのかー 」
「早いよね〜 」
「かなり早いですね 」
「唯斗くんはどうだった?この半年 」
「ほんとに楽しかったですよ! 」
「それなら良かったよ、私もほんとに楽しかった〜 」
「なんか終わりみたいじゃないですか 」
「全然そんなことないよ、これからもよろしくね 」
「はい! 」
「少し、美奈さんに聞いてもいいですか? 」
「うん、どうしたの? 」
「美奈さんって、兄さんのことが恋愛対象として好きですか? 」
「そう見えた?? 」
「いや、なんとなくですけど 」
「私もわかんないよ 」
「そうなんですか 」
「うん 」
「なんかごめんなさい 」
「全然大丈夫だよ〜 」
俺は、知りたかったんだ。この人が兄さんを好きなのか。俺はこの人にとってなんなんだろう……
こんなことを言えるはずもない唯斗は、心に閉まっていた。
反射する月と星が海に綺麗に映る砂浜で2人は足を進めていた。
そんな2人のことを、無表情で唇を噛みながら、快斗は窓から見ていた……
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