第9話 別荘「ベッソウ」

 

 夏のギラついた太陽が人を溶かすように照らす。



 8月に入り、より一層暑さは増すだけだ。



 唯斗たち、兄弟と姉妹は姉妹の父親の所持する別荘に来ていた。



「まじか…… 」


「すごいな…… 」



 快斗と唯斗、2人とも驚愕だった。


 そこは、目の前に海が広がるビーチ。そしてこれでもか、と言えるほどの大きさの別荘。流石有村グループの社長だ。



「久しぶりに来たね〜 」


「うんー! 海入りたいー! 」



 4人は別荘に荷物を置いて、すぐに着替えて海に向かって走り出した。



 夏の海は、澄み渡る綺麗な青空を反射させたかのように青く、綺麗だ。



 唯斗は快斗の鍛え上げられた肉体に驚く上に、自分にないものを持っているようで悔しさが滲み出ていた。



 一方で……



「なによ唯斗! ジロジロ見ないでよね! 」


「いや、その…… 」


「なに!!! 」


 莉奈と唯斗が普段通り言い合っていた。


「なによ〜、どうしたの〜? 」


「み、美奈さん……!? 」


「どうしたの?? 」



 唯斗は美奈さんの水着姿に思わず、興奮を抑えられなかった。莉奈の体とは真逆だった。莉奈のすらっとした胸とは違くて、綺麗な形でとても良く育った胸に今すぐにでも飛び込みたくなる。そんなスタイルの姉。



 そして、それを見た莉奈が察した。


「そういうことね… 唯斗あんた覚えてなさいよ 」


「いや、違うってー! 」



 そんな4人は海で昼過ぎから、夕方までいろいろなことをして遊んだ。


 兄弟や姉妹にとって、久しぶりのこんな機会。4人は時間を忘れて楽しんでいた。


 


 昼の暑さが吸い取られるように、オレンジ色に染まった空が海と砂浜を彩る。



 別荘に戻って着替えた4人は夜ご飯のBBQの支度が始まった。


 買い物には、美奈と唯斗が行くことになった。


 美奈と唯斗は近くのスーパーに行き、具材を選んでいた。



「ねえ唯斗くん、サプライズなんだけど明後日快斗くんの誕生日だよね? 」


「そういえば、そうですね 」


「明日ここからは帰っちゃうわけだから、明後日家でやるよりも今日やった方が盛り上がるよね 」


「たしかにそれはありますね 」


「じゃ、なんかケーキあっちに売ってるみたいだから買って行こうか 」


「はい! 喜ぶと思います! 」


「うん! 」


 美奈と唯斗は肉や野菜、魚介類などの具材を調達し、快斗の誕生日のサプライズケーキも購入することができた。



「ただいま〜 」


「お姉ちゃんおかえりー 」


「ただいまー 」


「おかえり変態 」


「いやなんで俺だけ変態なんだよ 」


「うるさいだまれ! 」


「はぁーこいつまだ昼の水着のこと怒ってんのか 」



「快斗くん、私と莉奈が食べ物の準備するから唯斗くんと道具の準備お願い〜 」


「わかったよ 」


 4人は自分の仕事をしっかりとこなし、準備が整った。



 夏の夜の別荘で、BBQが始まった。


 別荘の庭は芝生でかなり広かった。なにも問題なく始めることができた。



「美味しい〜 」


「美味ぁーー 」


「うん、美味しいね 」



 みんなが満足できるBBQだった。4人はくつろぎながらゆっくりと夕食を楽しんでいた。



 時間も経ち、お腹いっぱいになる頃に美奈と唯斗が部屋に戻ってケーキを取ってきた。



「兄さん、誕生日おめでとう 」


「おめでとう快斗くん 」


「えっ、誕生日だったの!? 」


「ありがとう、うん今日じゃなくて、明後日なんだけどね 」


「そうだったの、知らなかったー おめでとうー 」


「唯斗お前が準備してくれたのか? 」


「いや、俺じゃなくて美奈さんだよ 」


「え、そうなのか…… ありがとうな 」


「うん、おめでとう〜 」


 快斗はまだ美奈に少し気まずそうな表情を見せる。それは美奈も同じだった。



 快斗の誕生日も無事に祝うことができて、BBQも終わりにかかっていた。



「じゃー片付けしよっか 」


「そうだね 」



 4人は準備と同じようにしっかりと仕事をして、すぐに片付けも済んだ。



「見てー! 星空すごい綺麗だよー 」


「ほんとだ、すごい綺麗だね〜 」


「おー、綺麗だな 」


 莉奈に言われみんな外に出て、空を見た。


「ねぇ唯斗、私写真撮りたいからちょっと一緒について来て 」


「おーいいよ 」



 莉奈と唯斗は少し浜辺に出た。



「ねえ本当に綺麗だね 」


「そうだな 」


「興味なさそな返事〜 」


「そんなことはないよ 」


「ねえ唯斗は、今日楽しかった? 」


「うん、めっちゃ楽しかったよ 」


「良かったー、お姉ちゃんと快斗くんもきっとそうだよね? 」


「うん、当たり前だよ! 莉奈が別荘行こうって言ってくれて本当に良かったよ 」


「ほんと!? よかったー 」


「おう 」


「私ね…… 」


「ん? 」


「最初はね、お父さんのしたことが嫌で、それに本当にいきなり知らない人たちと暮らすなんて嫌だったの。でもね、唯斗の優しさとか、快斗くんとお姉ちゃん見てたら、本当に私良かったなって思ったの。唯斗たちで本当に良かった…… 」


 

 莉奈の慣れない言葉に唯斗は驚く以上に、顔が真っ赤になっていた。



「い、いきなりなんだよお前 」


「こんな綺麗な星空見てたら、たまには感謝しなきゃなって 」


「なんか怖いなー、でもこちらこそありがとうな 」


「うん! これからもよろしくね 」


「おう! 」


「写真も撮れたし、戻ろっか 」


「そうだな 」



 2人は浜辺をゆっくりと歩いて別荘に戻った。



 莉奈と美奈の至っての希望により花火をすることになった。





 夏の風物詩といってもよい花火。





 夏の夜。スズムシが鳴くこの場所で、綺麗に彩る花火が始まったのだった……

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