第6話 生活「セイカツ」

 

 莉奈と美奈の父親と、唯斗と快斗の母親が大阪に行く日になった。


「じゃ、みんな元気でな 」


「うん! パパこそ元気でね! 」



 美奈は少し悲しそうに反応する。



「莉奈、しっかりと勉強頑張りなさいよ 」


「うん、パパも仕事ちゃんと頑張って 」


「ありがとう、何かあればすぐに連絡しなさい。 」


「うん! 」

「うん! 」


 姉妹は少し悲しそうな表情を見せながらも、これから頑張っていくんだという姿勢もしっかりと見れるようだった。



「唯斗、あんたもちゃんと起きて、ちゃんと食べて、ちゃんと…… とにかく、色々頑張りなさいよ! 」


「はいはい、わかったよ母さん 」


「あんた、本当にわかってるの!? 」


「わかったわかった大丈夫だから 」



 唯斗と母のやりとりに、姉妹や姉妹の父親は思わず笑いを溢して、見ていた。



「快斗、みんなのことよろしくね。あと仕事の方もできる限り頑張ってね 」


「あーうん、わかったよ 」


「うん…… 」



 母の目には涙が少し浮かんでいた。



「母さん! 俺たちは大丈夫だから、まあそっちもなんとかやってくれよ! 」


「あんたの大丈夫は、信用ならないけど…… 美奈ちゃん、莉奈ちゃん、こんな兄弟だけど、よろしくお願いしますね 」


「はい! こちらこそです! 私たちこそですので! 」



 美奈の対応に母さんは少し安心したようだ。



「では、行くとするよ。快斗くん君には、まだ会ったばかりで関係も深くないのに、色々頼んでしまって大変だけど、一番上として家族のこと頼んだ…… 」


「はい、わかりました 」


「大丈夫よ! パパ! 一番上は私も同じだから! 」


「そうだったな、美奈も頼んだぞ 」


「うん! 」


「では、行ってくる 」


「頑張って! パパ! 」


 姉妹に送り出されて姉妹の父親は出て行った。


「じゃあね、唯斗、快斗 」


「おう、またいつか! 」


 母も兄弟と別れをし、出て行った。




 この時より、兄弟と姉妹の本当の意味での同居が始まったのだった。



 

 仕事の分担をすることになり、夕食後4人がリビングに集まっていた。


「えーと、家事はとりあえず私がやるね! 」


「私も手伝うよお姉ちゃん 」


「えー、莉奈にできるかな〜 」


「できる! だからやらせて! 」


「うーん、じゃ無理しない程度に色々と手伝ってね 」


「俺たちは何をすればいい? 」


 快斗の質問に美奈は困った表情を見せていた。


「うーん。快斗くんはでも基本帰らないことも多いから、ピンチヒッターって感じかな! 」


「わかった 」


「美奈さん、俺はどうすれば? 」


「唯斗くんは、じゃー、お風呂掃除とかゴミ捨てとかをお願いしようかな! 」


「わかりました 」


「じゃこれでとりあえず決まりね! 」



 4人は思ったよりもスムーズにいろいろなことを決めることができていた。


 話し合いが終わり、部屋に帰ろうとした時だった。



「快斗くん、ちょっといいかな? 」


「あ、うん 」



 美奈が快斗を呼んだのだった。


 唯斗と莉奈は姉と兄に気をつかったのか、自分の部屋へと向かって行った。



「用はなんだ? 」


「用というか、私たちが一応一番上である以上、しっかりとしないといけないから、ちゃんと話しておきたいって思って…… 」


「うん、何を話すんだ? 」


「もっと快斗くんのことを教えてほしいの。私快斗くんのこと何もわからないから 」


「俺のことか、俺は別に話すことも特に何もない 」


「そーいうことじゃなくて、ちゃんと教えてほしい 」


「悪いが、俺はお前らとは違うんだ 」


「わかってるよ! そんなこと!! 」


「ん…… 」


 美奈の慣れない態度の発言に快斗は少し驚きを隠せなかった。


「ごめん…… 強く言いすぎた。 」


「全然いいけど 」


「でも、教えてほしいの。本当にもっと知りたいの 」


「うん、わかったよ、でも俺は自分のことを自分から話したくはない。君がちゃんと気づいてくれるのを待っているよ 」


「そ、そんなの…… 」


「俺は、そういう人間なんだよ… 」


「…… 」


「俺、明日早いから寝るわ 」


「おやすみなさい 」


「おやすみ 」



 美奈は困りきっていた。快斗との関係に……



 快斗に近づこうとすると、離れる。2人の世界はそう簡単にいかないのであった。



 バタン……



「美奈さん、どうしたの? 」


「ううん…… 大丈夫だよ 」



 たまたま、降りてきた唯斗だった。



「大丈夫じゃなさそうだけど…… 兄さんとなんかあったの? 」


「ううん、なんか快斗くんとはうまく話せないんだよね。快斗くんが私のこと嫌いだからなのかな…… 」


「兄さんは美奈さんのこと嫌いなんかじゃないよ。ただ、兄さんは俺にも何を考えてるのかわからない。あまり人に心を開かないんだ 」


「私が何かしたのかな…… 」


「してないですよ! 大丈夫ですよ! 」


「そうかな〜、なら大丈夫だね 」


「大丈夫なら、そんな顔しないでくれよ 」


「やっぱり唯斗くんは優しいのね 」


「俺のことはいいです、でも俺は美奈さんのそんな表情見たくない 」


「ありがとうね〜、お姉さん泣いちゃいそうだよ… 」


「無理しなくていいんですよ、俺にできることあればなんでも言ってくださいね 」


「ありがとうね… あと、その敬語とタメ語の混ざり口調どうにかならないのかしら〜 」


「そ、それはすいません 」


「あはははは…」


「じゃ俺寝ますんで、おやすみなさい 」


「うん! おやすみ唯斗くん 」



 唯斗は美奈を1人リビングに残し、2階に上がって行った。



「君は、本当に優しいのね。私、快斗くんとうまくできるのかしら…… 」




 


 そんな美奈の気持ちを快斗がどう受け止めているのかは、誰にもわからなかった。





 


 この2人の関係はそう簡単にはいかなかった……



 


 

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