第4話 相談「ソウダン」

 

 美奈さんから、莉奈のことを聞いたことによって唯斗は少しだけ莉奈のことを理解できたような気がしていた。


 

 慣れない夜を過ごして、朝を迎えた。



「おはよう〜 」


「おはようございます 」


「ちゃんと起きたかな? 」


「はい起きましたよ 」


「君の敬語は直らないみたいだから、諦めたよー 」


「はい、すいません 」


「全然いいのよ、まだ会ったばかりだもんね! じゃ下に行ってるね〜 」


「はい 」



 唯斗は心の底から思った。



 美奈さんのようなお姉さんがいたら、なんでも頑張れるような気がすると……


 これはまだ、家族になっていない証拠とも言える。一般的に兄や弟からして、いくら可愛くても、家族の姉や妹には恋愛感情や、性の感情は一切起きないという。


 現実的に家族ではないから、別に唯斗の感情はおかしくはないとも言えるのだが。



「唯斗、美奈ちゃんに起こしてもらわないで、ちゃんと自分で起きてきなさいよー! 」


「起きてるって、うるさいなー…… 」


「美奈ちゃん、ごめんねー、毎朝起こしてもらって 」


「いえいえ、私が唯斗くんのことを起こしたくて起こしてるので 」



 これは、姉と言えるのか。いや姉とは言いたくない。いやなんだこの感じは……


 唯斗は美奈の優しさや、包容力に常々惹かれていた。



 みんなそれぞれの仕事や、学校に向かった。



 唯斗と莉奈は同じ学校ではあるものの、学校ではほとんど喋らない。家でも喋ることはほとんどないのだが。



 学校が終わって家に帰ると、今日は美奈さんがご飯を作っていた。



「美奈さん、料理するんですね 」


「そうだよ〜、私たち家族はお父さんと莉奈と私になってからは、私が基本家事はしていたからね〜 」


「そうなんですか 」


「うん、お父さん仕事はできるけど、家事全般基本的に出来ないからね〜 」



 美奈さんは本当に、なんでもできるんだ……



 夕食の時間になって、美奈さんの手料理をみんなで美味しく食べていた。


 母さんの料理も、もちろん美味しいけど美奈さんのも負けてない。これはこれでまた美味しい。



「莉奈、勉強の方はどうなんだ? 」


「別に普通 」


「別に別にって、最近その態度はなんだ 」


「なんで? 」


「お父さんに対する態度がおかしいんじゃないのか 」


「おかしいのはパパだよ 」


「なんだって? 」


「もういい!!!! 」



 莉奈は食事途中にも関わらず、2階の自分の部屋に入っていった。



「私、ちょっと行ってくるね 」


「待ってください、美奈さん 」


「ん、どうしたの? 」


「俺が行ってきます 」


「あ、う、うん 」



 美奈は戸惑いながらも、唯斗の行動に嬉しそうな笑みを溢した。



 

 トントン……



「俺だけど、大丈夫か? 」


「入らないで!! それで、あんたが何しにきたのよ 」


「俺はお前が心配になって来たってのに、相変わらずだな 」


「あそう、それで? 」


「お前の気持ちも分かるよおれは。親に対する不信感はもちろん、それだけじゃない。出来の良い姉と兄を持つ俺らにしか分かんない感情もあると思うんだよ。だから、少しずつ俺もお前と分かり合えるような気もするんだよな 」


「あなたもそうだったの? 」


「おれも人には相談できない悩みがあるよ。この家族のこともそうだし、兄さんとの比較されることだってそうだよ 」


「みんなそうやって悩み抱えてるんだよね 」


「そうだよ、でも現実に向き合ってかなきゃいけないんだよな。大人になってくってのはそーいうことなんじゃねーのかな 」


「私には無理だよ。こんな現状…… 」


「今すぐには無理だけどさ、少しずつ変わっていくしかないんだよな…… 」


「うん…… 」


 2人はドア越しに会話をした。


 そんな2人を美奈は階段から嬉しそうに見ていた。




 唯斗は1階に降りて、食事の続きをしていた。莉奈は降りてくることはなかった。


 食事が終わると、美奈に誘われて唯斗は昨日と同じベランダで、話すことになっていた。


「今日も、星が綺麗だね 」


「うん、そうだね 」


「たまーに敬語じゃなくなるのね 」


「意識していません 」


「そうなのね〜 まぁ、そんなことは全然いいんだけど〜 」


「はい 」


「莉奈のこと、嬉しかったよ。唯斗くんが寄り添ってあげるのは本当にあの子にとって変わるきっかけになると思うの。お父さんとのことも大変だけど、莉奈も少しずつ理解していくと思うの 」


「俺には多分、莉奈に対して何かしてやれるとは思いませんけど、あいつの気持ちは痛いほど分かるんです 」


「よかった〜、一緒に暮らす人が本当に君みたいな優しい人で 」


「こちらこそです 」


「とりあえずよろしくね、莉奈のこと 」


「はい 」


「それで、今日の朝みたいに、君はお母さんとはやっぱり、仲が良くないのね 」


「うるさいんですよいちいち 」



 そう…唯斗は反抗期。世の中の16歳にとってこの年頃の母親からの言葉は、異常に鬱陶しく感じる。これは普通のことであり仕方のないことだ。



「反抗期だね〜 」


「自分ではわかりませんけど、そうなんですかね 」


「まぁ、誰にでもあるから仕方ないよ 」


「はい 」


 唯斗がこんなことを相談するのは美奈だけだった。兄の快斗にも言わない。いや言えないのであった。





 次の日




「おはよう〜って、珍しく今日は、自分で起きれたんだねー 」


「はい、起きてますよ 」



 唯斗はいつもより早く目覚めていた。


 目覚めも良く、窓からの差し込む太陽が眩しく目に映った。


 一階にはもうみんないて、食事をとり始めていた。


 いつも通り、莉奈の父さんは仕事に出かけ、莉奈もその後すぐに、学校に向かった。



「唯斗も早く行きなさいよ! 」


「はいはい…わかってるって…… 」


 唯斗は毎朝のようにめんどくさがりながら母の言葉に送り出されて学校に向かう。



「おはようー! 」


「おお、おはよう 」


 幼馴染みの桃香だ。


「最近元気ないのー? なんかあった?? 」


「いーや、何もないよ 」


「そうかなー? まぁ、何かあったらすぐに言ってね!! 」


「おう、ありがとう 」


 

 言えるはずがない。莉奈と一緒に暮らしてるなんて。



 

 

 でも、いつかはバレる日が来るのだろうか。隠し事はバレる日が必ず来る。


 




 唯斗と莉奈の誰にも言えない隠し事。2人の秘密がバレる日は近いのだろうか……

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