第2話 対面「タイメン」

 



「 なんであんたがここにいるのよっ!! 」




 唯斗の前に現れた美少女は顔を真っ赤にさせて唯斗に向かって叫んだ。



「いやそれは俺のセリフだろ! 」


 

 その彼女の瞳を見て唯斗は言い返した。


 彼女のその瞳は相手を魅了する瞳だった。



「どーゆうことパパ! こんなの私、無理! 」


「すまんね…君たちがそんな知り合いだったとは… 」



「まぁまぁ、莉奈落ち着いてって〜 」

 

 横にいる姉がなだめる。姉もその彼女に、負けず劣らずの美女で、大人の色気を放っている。



 この時唯斗は、莉奈と父親の間に何か確執があるような気がした。



「2人は知り合いだったんだね。私は有村美奈、大学生。年は19歳で今年20歳だね 」


「俺は二階堂快斗。年は君とタメだ。モデルをやっている 」


 

 唯斗の兄、快斗と、莉奈の姉、美奈は、大人だった。対応も雰囲気も。2人は弟妹たちとは違った。



 親同士は籍はまだ入れておらず、同居という形になっているため、まだ4人が兄妹となることはなかったが、同い年の女の子と同居とは。



 いつか今日の日を思い出して唯斗はどう思うのだろうか。良かったと思えるのか、最悪だったと思えるのか。唯斗には全く予想もつかない。



 これから唯斗たちはどうなっていくのだろうか………


 


 その次の週の土日にこの家に引っ越すことが決まった。6人で過ごす新しい家庭。そう思っていたが、莉奈と美奈さんの父親は仕事が忙しく帰ってこないことが多いらしい。



 唯斗の兄は最近は仕事が忙しくてあまり帰ってこない。ということは、実質4人で過ごすことになった。しかも1人は年上の美女。そしてもう1人は同級生の美少女。唯斗は自分がどうなってしまうのか分からなくなっていた……




 


 次の日の月曜日


 

 普段通り学校に行った。


「おはよう〜 」


「おはよーう! 」


 桃香と陸はもう教室にいた。


 唯斗は挨拶を交わし、席についた。


 少し経つと莉奈が教室に入ってきた。みんなにしっかりと挨拶を返して、唯斗の後ろに座った。



「誰にも言ってないよね…?」


「言ってねーよ、ってか言えねーよ 」


「あっそう、ならいいけど 」


「なんだよその言い方は 」


「当たり前でしょ、なんで私があんたと一緒に住まなきゃいけないのよ 」


「俺もそうだわ! お前だけが嫌みたいな言い方するな! 」


「まったく、本当に困ったわ 」


「こっちのセリフだわ! 」




 こいつは性格以外はもう完璧と言っても過言ではない。ツンツンしすぎた性格はどうにかならないのか。そして姉はあの美女。こんな2人と一緒に暮らして行くことになるなんて……



  

「俺はどうなっちまうんだ…… 」





 そんな落ち着かない日々が続き、とうとう引っ越しの日がやってきた。



 荷物を業者の方に運んでもらい、引っ越しが完了した。

 

 流石の金持ちだ。一人一人個別で部屋がある。唯斗の隣の部屋には快斗が入ることになった。美奈さんと莉奈の部屋は対面の部屋だ。

 

 

 美奈さんが、唯斗の部屋に入ってきた。


「よろしくね〜 」


「はい! よろしくお願いします 」


「タメ語でいいよ〜 」


「えっ、はい、わかりました 」


 

 いきなり年上の美女のお姉さんが自分の部屋に入ってきて、2人きり……



「莉奈とは本当にびっくりしたよね〜 」


「はい、びっくりしましたよ本当に 」


「だーかーら、タメ語にしないと、おねーさん怒っちゃうよ〜 」


「あ、はい、わかりました。わかった! 」


 

 こんな、色気を放つお姉さんが同じ部屋に。唯斗はこれ以上理性を保てない……



「誰か助けてくれ…… 」



 そう呟きそうになる。



「ねーー! お姉ちゃんー!! 」


 莉奈が美奈さんを呼んでいた。


「なにー? 」

「ちょっと、私、行ってくるね 」


「あ、はい 」


 部屋から美奈さんが出ようとした時、莉奈がもうこっちに来ていた。


「あんた、ここの部屋なんだ。」


「そうだけど、何か? 」


「どーでもいいけど、絶対私の部屋に入ってこないでよね 」


「はいはい… 」


「いきなりそんな言い方しちゃダメでしょ〜莉奈ー」


「やだよ! こんなやつと一緒に暮らすのなんて! 」


「ごめんね〜唯斗くん 」


「いえ、大丈夫です…… 」


  

 唯斗は莉奈にはなぜか、かなり嫌われてるようだ。


 それでも美奈さんは優しくて、美女で素敵な女性だ。まだ美奈さんがどんな人かは、しっかりわからない。

 

 唯斗は莉奈と仲良くなれる日が来るのだろうか。いや、この姉妹と家族になる日が来るのだろうか。


 



 月が沈み陽は昇る。そんな当たり前のことのように、唯斗たちの生活も当たり前になるのだろうか……


 



 


 そんなことを考えながらも、明日は当たり前のように来る。日は毎日進むのだ。

 






 こうして唯斗たち兄弟と絶世の美女たち姉妹との一つ屋根の下での生活はスタートしたのだった。




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