03.悪魔
ミナさんの周りに第2部隊の人達が徐々に集まり始めているので、カルディアとアディさんに出発することを伝えて俺達も向かう。
歩きながらマークとエリサになんとなく話しかけた。
「そういえば、この状態っていつ終わるんだ?」
「あんた、それも知らずに参加したの?」
エリサが呆れた顔している。い、勢いってものも大切なんだよ、人生には!
「そうか、タケシは迷い人だったな。スタンピードは--」
マーク曰く、ダンジョンが一定の魔素を消費すればスタンピードが終わると一般的に言われているそうだ。
中層レベルの魔物で終わる場合がほとんどだが、上層の初期レベル(40階層のオーガ)や強い個体がでてくることがある。
ちなみに強さ的な話だと、中層と言われているのは俺たちが挑んだ旧都ダンジョンの39階層ぐらいまでらしい。40階層から上層と言われるそうだ。
そうか、無尽蔵にでてこないだな。今更だが安心した。
「強い固体か・・・」
俺たちが話していると、ミナさんが会話に入って来た。
「大丈夫です。まだ出来て日が浅いダンジョンですので、魔素もそこまで多くなく強い個体はでてこないと思います。上層の初期レベルの魔物は、Sランクパーティが3組とAランクパーティが4組参加しているので、問題なく処理できますよ。それにガイも元Sランク冒険者でしたし、私も元Aランクですので一緒に戦いますから安心してください!」
ミナさんはAランクで、ガイさんはSか・・・すごいなぁ。
「では皆さん。そろそろ出発しましょう」
こうして、俺たちはダンジョンに向けて出発した。
しばらく行くと、第1陣の分隊が野営地を作っていた。
第1部隊の本陣は、ドーソンの冒険者達と交代で最前線に行ったようだ。
引き上げて来たドーソンの冒険者たちは疲れきっていたが大丈夫そうだ。
兄貴達、豪炎のコップのメンバーが見当たらない。近くにいた冒険者に聞くと、まだ戦っているとのこと。
ミナさんの指揮のもと、俺たちも野営地の準備を手伝う。
仮説のテントを張り、休憩所と簡易治療院を立て、ドーソンの冒険者達を運び入れた。
ギルドから治療専門のスタッフが来ており治療院が順調に稼働し始めた。
その後も設営を手伝い、ある程度出来上がったところで、第1陣の交代待ちの待機となった。
しばらくすると食事の準備が始まり、野営地の中央に大きな鍋が設置されて、どんどん食材が豪快に投入されて料理が始まる。
徐々にあたりに良い匂いが広がる。
あぁ、すごい良い匂いだ。
匂いとともに、ドーソンの冒険者たちに安堵感も広がった。泣き出すものがいた。
屈強な大男が泣いている。あぁ、昔一緒に飲んだことのある荒くれ者も泣いている。
この人たちはすごいよ。ほとんどがDランクの冒険者達だ。
Dランクの冒険者にはギルドからの強制力は発生しない。だから別にこの緊急指令に参加する必要なかった。
でも、逃げ出すさずに自分たちの街を守ろうと果敢に魔物に挑んだ。
本当にすごい人達だ。それをみんな知っているから、誰も笑ったりバカにしたりなんかしない。
しばらく待機していると、第1部隊の連絡役の冒険者が状況を伝えた。
まだ中層レベルの魔物しか出て来ていないが、とくにかく量が異常に多いようだ。
その所為で消耗が激しく、早めの交代が必要とのことだった。
すぐに第2部隊の本陣が最前線に出発することになった。
俺たちも最前線に向かう。
目的地に近づいていくと魔物の亡骸がいくつも落ちていた。
奥に行けば行くほど量が多くなる。
第1部隊に合流する。討伐する隊と亡骸を片付ける隊に別れて行動していた。
ダンジョンの入り口だったと思われる穴から、どんどん魔物が出てくる。
そして、冒険者が交代にどんどん狩っていく。
兄貴達も戦っているのが見えた。よかった無事だ。そろそろ休憩した方がいいんじゃ。
ふと疑問が浮かんで口にする。
「あれ、ダンジョンの魔物は消えるんじゃなかったっけ?」
マークもエリサも違和感を感じていたようだ。
「そうね、消えてないわね」
「消えてないな。ダンジョンの外にでたとしても、魔物は消えるはずなんだが」
俺たちが話していると後ろから声がかかる。
「お前達もこっちに来たか」
ガイさんがいた。
「今回のスタンピードは色々おかしいんだ--」
ガイさん曰く
もともとドーソンのダンジョンは、数ヶ月かけて調査を行ない最終階層まで到達したが、全ての階で魔物がほとんどいない状態だった、いても弱い魔物ばかり。
最終階層にいたダンジョンボスでさえ弱く、発見されたダンジョンコアも小さかった。本当に出来たてのダンジョンだったそうだ。
街の盛り上がりとは反して、ろくな魔石もドロップ品もなく、ダンジョンの恩恵がほとんど得られないことが解り調査隊は落胆した。
最近になって調査結果を公表したそうだが、案の定、商人達はすぐに撤退して行った。
最終的にこのダンジョンは、ギルドが管理して訓練用ダンジョンとして使う方針となり、そのための準備が進められていた。
しかし、魔物が溢れるはずのないダンジョンから魔物が溢れた。
そして、調査では確認できなかった中層レベルの魔物が大量に溢れ出し、その魔物の亡骸は消えることがなかった。
「明らかに普通のスタンピードではない異常だ。とりあえず警戒しておいてくれ。決して無理はするなよ」
ガイさんは、そう行ってミナさんの方に行ってしまった。
その後、俺たちは第1部隊と交代して魔物を狩る。今の所、全く問題なく対応できている。
ただし、問題は1つだけあって、しばらく経つが未だに魔物の排出量が減らないことぐらいだ
。
ちなみに、亡骸の問題はエリサ先輩のご尽力により解決している。全て闇沼に沈めてるのだ。とんでもない光景で、みんな引いていた・・・。
頑張ってるからこの子。ちゃんと頑張ってるから。
コップのヤミ魔女だとか言い始めた。たしかに、すぐ病むからな。上手いこと言いやがる。
ぼーっと、エリサが闇沼に魔物を沈めるのをみていて気が付いたが、直接魔物が出てくる穴から闇沼に沈めちゃえばいんじゃないか?
エリサに聞くと「無理ね」とのこと。元気なままだと抵抗されて、闇沼の魔法が消えてしまうそうだ。
あ、じゃあ、魔物をどっか即死しそうなとこに転移させちゃえばいんじゃね?
そ、それだ!全てが解決した気がする!
なぜ思いつかなかったんだ・・・転移系のテンプレとかでよくあるのに。
ということで、ガイさん達に提案するとすぐに実行することになった。
問題はどこかの火山の火口にだれか転移できるのかというところ。
とりあえず、カルディアとアディさんに相談だ。
俺は、マークとエリサを残して、一旦転移でドーソンに戻る。
そして、カルディアとアディさんに聞いてみた。
それならと、アディさんが魔界にちょうど良い場所があるそうで、一旦王都とドーソン間の行き来をカルディアに任せ、アディさんと一緒にその場所に向かった。
ここは・・・。
思いっきり火口です。おちたらひとたまりもありません。
どうやら、ここは昔魔王が住んでいた魔王城にある噴火口だそうだ。
城自体は数百年前から使われなくなっていたが、火山自体はまだまま活動が継続しており、ものすごい真っ赤なマグマがうごめいている。
「どうかしら?」
「バッチリです」
「じゃぁ、ここに直接落ちるように転移門を開くわね。ダンジョン前に連れてってくれるかしら」
「承知しました」
というわけで、アディさんを連れて、最前線に戻る。
すぐにアディさんが、魔物がでてくる穴を覆うように転移の門を開く。
そして、魔物達がどんどん火口に落ちて行った。
「なんと・・・あっさり・・・」
作戦は大成功。
ものすごいあっさりとした結果になったが、一旦これで様子を見ることになった。
あっさりすぎて、みんなタイミングを逃していたが、すぐに歓声があがった。
治るまでは待機となっているが、戦闘する必要がなくなり、皆、徐々に祝勝ムードになって野営地では宴会が開かれ始めた。
俺たちは転移の門の付近で、待機することにした。
夜遅くにアディさんとカルディアが交代して転移門を維持する。
最初は元気よかったが、しばらく経つと眠そうにしている。
ほっておとくとカルディアが寝落ちしそうなので、相手してやらないと大事故が起きそうだ。とりあえず、なぞなぞでも出すか・・・。
「なんだその答えは、そんなの言葉があってるだけじゃないか!次だ次!」
カルディアが怒りながら次のなぞなぞを要求してきた。
マークもいつの間にか参加している。
「それがなぞなぞなんだって・・・。じゃぁ、次のなぞなぞな。えーっと--」
カルディアとマークが真剣に俺の出すなぞなぞに答えていたが、ふとアディさんとエリサが端っこの方で何かし始めたのが見えて、出題を途中で止めた。
「お、おいタケシ、つぎのなぞなぞを早く出してくれ」
「どうしたタケシ」
うるさい奴らだ。ちょっとまってって。
エリサが闇沼に沈めた魔物を1体だして、それをアディさんが調べているようだ。
気になったので、近づいて聞いてみた。
「どうしたんですが?」
「なんか嫌な予感がしてね・・・ほんとうに微かだけどこの魔物、悪魔の匂いがするわ。悪魔が関わってるかもしれない」
確かに、魔物の亡骸からは意識するとわかるレベルだが、確かにほんの少しだけ禍々しい魔力を感じる。これが悪魔の魔力なのか?
「悪魔って、災いばかり起こすっていうあの悪魔ですか?」
「ええ。そうよ。もしそうなら、このままでは終わらないわね」
ちょうどその話をしていた時だった。転移の門が砕け散った。
あいつ寝落ちしやがったのか!?
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